アンケート集計・ディレクター総括07

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アザレアのまち音楽祭2007総括

■ディレクター総括
 アザレアのまち音楽祭25周年と言う事で、かなり欲張りな企画であったと反省しています。入場者数の総計では、昨年を上回りましたが、音楽祭の経営としては問題点が多々ありました。定量評価と定性評価とも、かなりのばらつきがあり、来年度以降の企画では、再検討が必要になっています。
 音楽祭の最も大切な聴衆との出会いの場である受付業務など、コンサートの運営は大変好評でありました。アンケートには「スタッフの方々のお心に感動しています。」とお褒めの言葉も頂く事が出来ました。これは、昨年度のお客様から指摘され、改善に取り組んだ接客マニュアルの学習効果が現れたものと思われます。しかし、中にはボランティア参加スタッフの、学習意思の欠落が見られたのが残念でした。先月号のコラムに、ボランティアの意義を解説していますので、再度お読み頂き、その趣旨を再確認していただきたいものです。
□入場者数
総入場者数4205人(無料公演及びオペラ公演含)
純総入場者数4147人  〔昨年度 3280人〕
大ホール公演 (3公演) 1586人(平均528人)
〔昨年度869人(435)〕
小ホール公演(5公演) 885人(平均177人)
昨年度 621人(311)〕
サロン・コンサート(18公演) 1376人(平均76人)
昨年度 1790人(90人)〕
パープルタウン公演 300人(推定)

■ディレクターの考察

【T】大ホールの場合
 毎年、大ホールの想定観客動員数を600人に設定していますが、今年はよく健闘しましたが平均して528人と、届きませんでした。昨年度が435人ですから、今年は一見向上しているようにも思えますが、倉吉未来中心大ホールのキャパの事を考えれば、更に多くの観客動員を目指す必要があります。
 今回、特に疑問に感じたのは、本来観客動員の大きな力になっていただけるはずの協力委員さんのスタンスです。とても熱心にご協力いただける方と、全く何もしていただけなかった方の存在です。名前だけの協力委員では無意味ですので、来年度については、お申し出いただける積極的な方のみの人選をしなければならないと考えています。
【U】小ホールの場合
 今年は三朝町総合文化ホールと大栄農村環境改善センターを小ホールの範疇に入れて統計を出しています。(昨年度はサロンの範疇)その為、入場者数の平均がかなり低くなっています。その原因は、倉吉未来中心小ホールの不入りです。
 昨年大好評であった「笑歌村塾」の不振が大きく響いています。当初から予想されてはいたものの、読みの甘さが原因だと思います。クラシカルの音楽祭に、ポピュラーは馴染まないのかもしれません。
 米子マンドリン・オーケストラについては、出演者サイドの強い要請で決定しましたが、観客動員のことを考えると、無理があったようです。つまり、演奏者サイドの要請を中心に考え、聴衆のニーズに合わなかったという事です。
 三朝総合文化ホールで開催した「山城裕子ピアノ・コンサート」については、準備不足が観客動員の不発に終わったようです。ホールの運営が、町から三朝観光協会に管理委託され、事業展開のスタートが遅れたことが、不振の原因になったようです。
 唯一の高い成果を上げた大栄農村環境改善センターでの「新田恵理子ピアノ・コンサート」は、北栄町の取り組みであり、その対応のすばやさ、組織作りの確実さ等ボランティア組織の活用がひかり、素晴らしい結果を生み、今後の可能性が見えてきました。
【V】サロンの場合
 今年のサロン・コンサートは、概ね良好な状況でした。昨年は、ほとんどのコンサートで補助席を出さなければならないほどでしたが、今年度は想定した定員を少しオーバーする程度に収まり、コンサートの雰囲気はこれまでで最高だったと思いました。しかし、想定入場者数(70人)を上回ったコンサートは18回中9回のみであり、半数のサロンでは想定数に僅かに満たないという状況でした。コンサートの内容を中心に考えれば、今年の観客数は、正にサロン的であり、ベストだったのですが、経済尺度が低い位置に固定されがちであり、理想の追求であるミッション尺度に偏った運営であったのかも知れません。
【W】総括
 そこで、ミッション尺度を縦軸とし、経済尺度を横軸とする音楽祭経営マトリクスで、今回の全てのコンサートを企画実行委員会で分析しました。その結果、ミッション軸の「中」以下に入るものは少なかったのですが、経済尺度では「均衡」が取れているものとそれ以下とでは、半々に分類される事が分りました。つまり、ミッションに沿いながら、経済的にもハイレベルな成果を上げたコンサートが少なかったという事です。事業展開の花形と位置されたのは、佐々木まゆみ、平野弘子、光長真理恵、高旗健次、辺見康孝、大西瑞香の各氏のコンサートです。
 しかし、あとの大半のコンサートでは、ミッションの達成度は高いが、経済尺度では均衡が取れていないという結果が出ています。つまり、理想主義的なコンサート経営が先走り過ぎていたという事です。事業の対価の設定に誤りがあったのが大きな原因です。この責任はディレクターのプラン監修に対する判断ミスであります。どのような判断ミスであったかの分析は、実行委員会でじっくりと話し合いたいと思います。
 しかし、特に事業コストの管理という問題では、無料公演での経費の削減と、アマチュアイズムでの放漫経営を許してしまったことと、大ホール公演での集客努力の不足と言う事です。今後は、アザレアのまち音楽祭のみの組織体ではなく、市内各ボランティア集団との連携を模索しなくては、現状の維持と広がりは期待できないのではないかと危機感を持っています。
 しかし、その危惧よりも、今後大いに期待できる可能性を膨らませなければならないと考えています。今回の音楽祭の中で、特に素晴らしかったのは、30席定員とした三朝温泉での御座所コンサートです。ゆったりとした時間の流れを感じるものであり、贅沢なひと時であったとの感想が聞かれました。また、みささ美術館でのコンサートは、大変な評判を得ることが出来ました。館内の広い空間を生かしたコンサート会場設定が巧くいき、素晴らしい音響効果が得られました。
 そして、もっとも成功した企画は、北栄町との協働です。ルーティンワークの担当者でも、努力すれば報われることの証となりました。北栄町とボランティア参加された方々の実績は、近郊の自治体に広報し、その協働の輪を広げたいと考えます。特に素晴らしいホールを持つ湯梨浜町との協働を、来年度の課題にすべきでしょう。湯梨浜町のオリジナル・ミュージカルを成功させた実績をぜひとも継承していただきたいとの願いもあります。
 「アザレアのまち音楽祭」のメイン劇場として、倉吉交流プラザ視聴覚ホールは、素晴らしい佇まいになってきました。それは、サロンとして上質な音楽空間に変貌している事です。ホールの使い方を、開館以来模索し続け、昨年度より階段席を排した平土間とし、美しい響きをもった空間へと、すっかり衣替えさせています。その響きが定着し、最高のサロン・コンサートとして生まれ変わっています。
 今年の倉吉信用金庫ホールは三度しか使用しませんでした。先般の25周年祝賀会の折、前理事長の安部氏から、なぜもっと信金を使ってくれないかとのクレームがありました。しかし、実は、信金の現場では利用回数を3回に制限していましたので、その範囲でコンサート設定を行ないましたが、それ以外にも使いにくい要因があります。それは、借用できる期間が限定される事と、いつ信金の都合で借用許諾をキャンセルされるか分らないという不確実さのためです。ホールとして自立していない信金の集会場であり、信金自体の利用が優先されるためです。これまでも、借用許諾を受け、ポスター等の印刷物が出来ているにもかかわらずキャンセルされ、大騒動した経緯があります。従って、倉吉信用金庫が、集会場をホールとしての常識的な運用をして頂かなければ、利用は限定された回数以上のコンサート設定に無理があります。倉信のメセナとして、地域貢献を本当にお望みであれば、利用しやすくする方策を、採用されることを希望します。
 ところで、サロン・コンサート会場の照明については、根本的な対策が必要だと思いました。倉吉交流プラザ視聴覚ホールでは、何も問題ありません。しかし、信金、博物館等での照明は、毎年何とかやりくりしていますが問題は、照明機材を音楽祭自体が所有していない事です。倉吉博物館では今年2回公演しましたが、最初は博物館の写真撮影用の照明器具を代用していました。ところがどうしても客席に照明がもれて、まぶしいとの苦情があり、次のチャンスに、三朝の人形劇団が所有している照明器具を借用し、魅力的なコンサート会場を作り出すことが出来ました。やはり、音楽祭組織として照明器具を将来的には所持する必要がありそうです。
□アンケートデーターの集約    ( )内は昨年度の数値
〔1〕アンケート回収数  回答者418件(293)
〔2〕回答者の性別  男28% (28%)   女72% (72%)
〔3〕回答者の職業  会社員34%(32%) 自営業15%(15%)  学生12%(17%) その他23%(36%) 主婦16%
〔4〕回答者の年齢  20歳未満10%(10%) 20歳代6%(14%)  30歳代6%(7%)  40歳代17%(15%) 50歳代24%(25%) 60歳代14%(16%) 70歳代以上23%(13%)
〔5〕回答者の居住地  倉吉市48%(51%) 三朝町2%(4%)  湯梨浜町10%(9%)  北栄町15%(9%) 琴浦町6%(5%)  中部外2%(18%)  鳥取市12%  米子市2% 県外3%(4%)  中部地区合計82%
〔6〕コンサート情報の取得 チラシ7%(14%)  ポスター110%(12%)  看板3%(3%) 市報10%(10%) ホームページ8%(8%)  アルテ4%(6%)  メディア9%  友人・知人36%(37%) その他13%(10%)
〔7〕満足度の集計
大変満足63%(70%) 満足33%(28%) 普通3%(2%) やや不満1%(0%) とても不満(0%)
〔8〕来年度希望の演奏家
希望推薦数67名
13%→寺内智子(ソプラノ) 10%→小谷郁美(ピアノ)
4%→新田恵理子(ピアノ)・佐々木まゆみ(ソプラノ)・平野弘子(ソプラノ)・米子マンドリンオーケストラ
3%→佐藤しのぶ(ソプラノ)・フルオーケストラ・辺見康孝(ヴァイオリン)・笑歌村塾石川達之・小椋順二(ホルン)・N響(オーケストラ)・宮永あやみ(ソプラノ)・山城裕子(ピアノ)・高旗健次(ヴァイオリン)
その他の皆さん
諏訪内晶子(ヴァイオリン)・ぺぺ(ポップス)・大阪市音楽団(吹奏楽)・松井沙羅(シャンソン)・須川展也(サックス)・生原幸枝(ソプラノ)・杉山清香(クラリネット)・アザレア弦楽四重奏団・恩田千絵(ソプラノ)・光長真理恵(ソプラノ)・林裕(チェロ)・道谷増夫(サックス)・伊賀奈ゆり(ピアノ)・打吹音楽倶楽部ブレーメン(吹奏楽)・その他具体的な固有名詞の推薦ではなく、県内のオーケストラや合唱団等の招聘を希望される方もありました。

■ディレクターの考察

 アンケートの回収率が、昨年に比べ僅かに上がっています。昨年は8.9%、今年度は10%です。また、回答者の男女比・職業比率は、昨年度とほぼ同率ですが、年齢層に変化が見られました。つまり、20歳代が昨年の半分以下となり、逆に70歳代以上が10ポイントも高くなっていることです。観客の高齢化は、生涯学習の立場から見ればよい傾向であり、ロイヤリティの高い聴衆が固定化しているとも考えられます。
 回答者の居住地は倉吉市とその周辺で82%であり、中部地区の音楽祭として確実に育っていると考えられます。
その他の項目については、例年と大差なく同じ傾向を示しています。
 来年度の推薦者として、最も人気のあったのがソプラノの寺内智子さん及びピアノの小谷郁美さんでしたが、お2人ともオープニングのソリストであり、来年度はぜひソロ・コンサートにご出演いただきたいものと考えています。
ところで、招聘が到底、不可能なものをご希望されている方も多々ありましたので、再度、音楽祭のミッションとその意義を確認させていただきます。
この音楽祭の理念として「地域に芸術家が遍在する幸せを求めること」としています。そのミッションとして次の三点を掲げています。
@「アザレアのまち音楽祭」によるまちづくり
A観客によって音楽祭を成長させる
Bアザレアのまち音楽祭を音楽創造活動の拠点とする

 この理念からすれば、中央で活躍するプロ演奏家をアザレアのまち音楽祭に招聘するのは筋違いとなります。しかし、そうは言っても、演奏家達の研鑽や聴衆の要望もありますので、経済的な問題さえ解決すれば、将来的には可能になるかもしれません。しかし、フルオーケストラのN響など、経済的には全く招聘不可能です。他のプロのフルオーケストラであろうとも、問題は同じです。可能性のあるのは、ソリストのみのコンサートです。この問題については、新年度の企画実行委員会で検討したいと思います。