倉吉 アザレアのまち音楽祭
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アザレア室内合奏団演奏会

音楽監督&コンサートマスター/辺見康孝
トランペット独奏/尾崎浩之

2017年5月7日(日)13:45〜 倉吉未来中心大ホール 700円

   

 過去の演奏のご紹介

♪ マルティーニ作曲/トッカータより「尾崎浩之」 (wmaファイル 1.21MB 2分36秒)


第一部
□モーツァルト作曲
《アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク ト長調 K.525》
第1楽章

□テレマン作曲
《トランペットと弦楽のためのソナタTWV44:D1》

□J.S.バッハ作曲
《管弦楽組曲第3番》より
第2楽章『アリア』

□アルビノーニ作曲
《トランペット(オーボエ)協奏曲ニ短調op.9-2》
第1楽章 Allegro e non presto 第2楽章 Adagio 第3楽章 Allegro

 

第二部
□ヴィヴァルディ VIVALDI
《和声と創意への試み》作品8 ヴァイオリン協奏曲集 第1集
○第1番ホ長調,op.8-1,RV.269「春」
第1楽章  第2楽章  第3楽章
○第2番ト短調,op.8-2,RV.315「夏」
第1楽章  第2楽章  第3楽章
○第3番ホ長調,op.8-3,RV.293「秋」
第1楽章  第2楽章  第3楽章
○第4番ヘ短調,op.8-4,RV.297「冬」
第1楽章  第2楽章  第3楽章

 
■ソリスト・プロフィール

【ヴァイオリン・音楽監督】

辺見康孝
(へんみ やすたか)

 松江市生まれ。現代の作品を得意とし、独自の奏法を開発し従来の奏法では演奏不可能な作品もレパートリーとしている。日本はもとよりヨーロッパ諸国、オーストラリア、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、南アフリカ共和国、韓国、香港で演奏活動を行っており、様々な国際音楽祭に招待されている。
 2001年より2年間はベルギーのアンサンブルChamp d'Actionのヴァイオリニスト、帰国後はnext mushroom promotionのヴァイオリニストとして精力的に演奏活動を行う他、ハーピスト松村多嘉代とのデュオX[iksa](イクサ)ではオリジナル曲やオリジナルアレンジで新たな境地を開拓している。2012年には日本人としては初めてジョン・ケージの「フリーマン・エチュード」全32曲リサイタルを日本現代音楽協会主催で行い、話題となった。
 これまでに協働した作曲家としては、細川俊夫、ブライアン・ファーニホウ、ヘルムート・ラッヘンマンなどの現代を代表する作曲家から、若い世代の作曲家まで幅広く、これまでに数多くの初演を行なった。
 近年はダンサーとの活動も多く、鈴木ユキオや白井剛、吉本大輔、ダムタイプのアーティストとも作品を発表している。
 またスタンフォード大学(アメリカ)などでの現代奏法についてのレクチャーは好評で、作曲家の創作活動に刺激を与え続けている。
 2004年にMegadisc(ベルギー)からリリースされたソロCD、数々のX[iksa]アルバムの他、多数のCD録音に参加している。

【トランペット】

尾崎浩之
(おさき ひろゆき)

国立音楽大学卒業。同校より矢田部賞を受賞。読売新人演奏会、ヤマハ金管新人演奏会に出演。卒業後はフリーランス奏者として、オーケストラ、吹奏楽などの客演や、ソロや室内楽、ミュージカルやスタジオワークなどの活動を行なう。
トランペットを田中みつとし、北村源三、熊谷仁士の両氏に師事。TAD ウインドシンフォニー、金管五重奏ブラスファンタジスタのメンバー。
■オーケストラ・プロフィール

アザレア弦楽合奏団

 ヴァイオリンとハープのユニットを組んで活躍しているXiksaのヴァイオリニスト「辺見康孝氏」に、新しく結成して頂いたバロック・オーケストラです。主に西日本でプロとしてソロ活動をしている弦楽器奏者を結集して、よりハイレベルのアンサンブルを実現させる目的で立ち上げたオーケストラです。このオーケストラをアザレアのまち音楽祭の顔として成長させ、徐々に管楽器を導入しながら将来的には二管編成のオーケストラに発展させたいと思います。ソリストとして活動している演奏家の、極めてハイレベルな室内アンサンブルをお聴きいただきます。

■オーケストラメンバー プロフィール

【ヴァイオリン】

辺見康孝
(へんみ やすたか)

日本をはじめヨーロッパ諸国、オーストラリア、アメリカ合衆国、メキシコ、南アフリカ共和国、韓国、香港で演奏活動を行っており、様々な国際音楽祭に招待されている。ベルギーの現代音楽アンサンブルChamp d'Actionの元ヴァイオリニスト。松村多嘉代(ハープ)とのデュオ、X[iksa](イクサ)では新たな境地を開拓している。2012年には日本人初のジョン・ケージ『フリーマン・エチュード』全32曲リサイタルを日本現代音楽協会主催で行い話題となった。Megadisc(ベルギー)からリリースされたソロCD、数々のX[iksa]アルバムの他、多数のCD録音に参加している。

近藤浩子
(こんどう ひろこ)

東京芸術大学卒業後、東京フィルハーモニー交響楽団に所属したのちイギリスに留学。帰国後は五葉(ごよう)アンサンブル(バロックアンサンブル)を結成するとともに、ソロ、オーケストラ、室内楽、教育と幅広い活動を継続。現在はオークムスの代表として、いろいろな演奏会と室内楽コンサートを企画、演奏している。岡山フィルハーモニック管弦楽団のコンサートミストレス。ヴァイオリンを海野義雄、故日高毅、ゲルハルト・ボッセ、イフラ・ニーマン、故田中千香士ら各氏に師事。岡山大学非常勤講師。

高橋美穂
(たかはし みほ)

松江市出身、出雲市在住。島根大学教育学部特音課程卒業、同大学教育専攻科修了。西上史子、永見信久、知念辰朗の各氏に師事。現在、島根大学教育学部嘱託講師、雲南市加茂文化ホール「ラメール」ヴァイオリン教室講師、出雲芸術アカデミー音楽院専任講師として、後進の指導にあたる。ソロ、室内楽、県内外のオーケストラにおいて演奏活動を行う。出雲楽友協会音楽家会員。

三島文佳
(みしま ふみか)

松江市出身。愛媛大学教育学部芸術文化課程(ヴァイオリン専攻)を卒業。今岡康代、三上徹、大野裕司の各氏に師事。これまでに3度のソロリサイタルを開催する。2013年より山陰フィルハーモニー管弦楽団のゲストコンサートミストレスを務める。松江クラシックス2015、2016に出演。山陰フィルジュニアオーケストラ、しまねシンフォネット弦楽キャンプの指導に携わるほか、病院や福祉施設、保育所、学校、イベントでコンサートを行うなど、ソロ、室内楽、県内外のオーケストラにおいて幅広く演奏活動を行う。

湯淺いづみ
(ゆあさ いづみ)

鳥取市出身、鳥取市在住。3歳よりヴァイオリンを始める。岡山県作陽高等学校音楽科に実技特待生として入学。在学中、オーディション選抜による定期演奏会のソリストに3年連続で合格し出演。愛知県立芸術大学音楽学部器楽科卒業。第8回ベーテン音楽コンクール全国大会一般の部第1位受賞。第3回鳥取県クラシック・アーティスト・オーディション優秀賞受賞。2016年、鳥取市交響楽団とW.A.モーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364」を共演。現在、鳥取市内で後進の指導にあたる傍ら、県内外で演奏活動を行っている。

西原麻衣子
(にしはら まいこ)

松江市出身。フリーのヴァイオリン奏者として各アーティストのライブやCD録音、MV撮影等に参加。また、親子ユニット「まい&れいれい」として、山陰各地でコンサートを行う他、「アクエリアス弦楽四重奏団」の一員としても活動し、アザレアのまち音楽祭への参加は今年で5年目となる。2012年秋、2014年冬は、震災支援の為に陸前高田市のがれきで作られたヴァイオリンを使っての「千の音色でつなぐ絆」プロジェクトに参加し、「TSUNAMIヴァイオリン・コンサート」を行った。ヴァイオリンを今岡康代氏に師事。

山口大智
(やまぐち だいち)

3歳からスズキメソッドにてヴァイオリンを始める。大阪音楽大学卒業。これまでに辺見康孝、木田雅子、前橋汀子、久合田緑、森下幸路の各氏に師事。現在フリーランス奏者として関西を中心に活動中。

【ヴィオラ】

生原幸太
(いくはら こうた)

鳥取県北栄町出身。5歳よりヴァイオリンを始める。早稲田大学在学中、ヴィオラの渋くて落ち着いた音色に魅せられ、音楽家として生きることを決意。周囲から惜しまれながらも大学を中退。愛知県立芸術大学音楽学部を卒業。「歌」ベースにした味わい深い音色と、アンサンブルにおける抜群の安定感が各方面から高い評価を得ている、注目のヴィオラ奏者である。11月23日には米子市淀江文化センターにて、3度目のソロリサイタルを開催予定である。1月に3枚目のCDをリリース、現在好評発売中。

山下徳美
(やました のりみ)

島根大学教育学部特別教科(音楽)教員養成課程卒業。ヴィオラを府中高校音学部で始める。府中高校交響楽団と、C.J.バッハのヴィオラ協奏曲を共演。アルカータ弦楽合奏団と、W.A.モーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を共演。ヴィオラを市原利彦、佐々木明子、中竹英昭、廣狩亮の各氏に師事。室内楽を堀江悟、深山尚久の各氏に師事。プロ、アマのオーケストラで演奏する。地域での演奏活動の他、後進の指導もおこなう。スガナミ楽器店講師。福山ヴァイオリン指導者協会会員。

【チェロ】

野津真亮
(のつ しんすけ)

松江市出身。国立音楽大学卒業。卒業後、非常勤講師、嘱託演奏員として勤める傍ら同大学音楽研究所バッハ演奏研究部門において通奏低音を学ぶ。これまでにヴァイオリンを井川晶子、チェロを喜久里誼、藤森亮一、鈴木秀美の各氏に師事。またフィリップ・ミュレール、アンナー・ビルスマの各氏に指導を受ける。現在は主にオーケストラ、室内楽、通奏低音奏者として活動。

石黒信行
(いしぐろ のぶゆき)

石川県金沢市出身。島根大学教育学部特別教科音楽教員養成課程卒業。同大学院修了。チェロを上村 昇、山村サト子の両氏に師事。大学在学中より中国地方を中心にソロ、室内楽、オーケストラなど、数多くの演奏活動を行う。また米子ユースオーケストラ、鳥取県合同オーケストラなどの青少年オーケストラの指揮、指導も行い後進の指導にあたっている。現在、鳥取県立倉吉東高等学校教諭。

【コントラバス】

永瀬未希
(ながせ みき)

島根県雲南市出身。2007年エリザベト音楽大学卒業。2011年東京藝術大学音楽学部別科修了。これまでにコントラバスを齋藤賢一、山本 修、永島義男の各氏に師事。第41回エリザベト音楽大学卒業演奏会に出演。2006年には、山陰フィルハーモニー管弦楽団(指揮:今岡正治氏)とディッタースドルフの協奏曲を協演。2009年から2015年まで若手育成オーケストラ「洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団」に所属。現在、山陰両県を中心に演奏活動を行うほか、後進の指導も行っている。出雲芸術アカデミー音楽院講師。山陰コントラバス協会会員。

【ハープ】

松村多嘉代
(まつむら たかよ)

相愛大学音楽学部ピアノ専攻卒業後にハープを始める。現在フリーランスハーピストとして、ソロ、オーケストラ、妹・松村衣里とのハープデュオ・ファルファーレ、辺見康孝とのデュオX[iksa]などで演奏活動を行う。国内はもとよりイタリア、フランス、ドイツ、チェコ、オランダ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、韓国等において数多くのコンサートに出演。ファルファーレとX[iksa]で6枚のCDをリリースするほか多数の録音に参加している。


曲目解説

トランペット協奏曲の事

協奏曲が非常に栄えたバロック時代にはきらびやかな音色が好まれ、テレマンらによって多く作曲された。現在定番とされているレパートリーも多くはこの時代のものである。しかしそれ以降の古典派や前期ロマン派の時代では、作曲家達がより深みのある作品を作ろうとする傾向へと時代が流れていく中で、当時のナチュラルトランペットには自然倍音しか出せないという決定的な弱点があったため、トランペットは作曲家達の要求に応えることが出来ず、トランペット協奏曲はあまり作られなくなった。ちなみに、その弱点を補う装置をつけた楽器のための協奏曲をハイドンが1曲作曲しているが、この曲は現時点で一般に最も有名なトランペット協奏曲である。
19世紀に発明されたバルブトランペットが普及してくると、状況は一変した。トランペットは作曲家の要求に応えうる高度な演奏能力を備えた楽器となったため、トランペット協奏曲も再び脚光を浴びるようになったのである。
しかしながら、現代のトランペットは、音色、音域、奏法などの観点で金管楽器の中で最も独奏に適した楽器のひとつにはなったが、未だ定番といえるレパートリーはそれほど多くはない。


□テレマン TELEMAN
テレマンは後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家で、40歳以降は北ドイツのハンブルクで活躍した。18世紀前半のヨーロッパにおいては随一と言われる人気と名声を誇り、クラシック音楽史上もっとも多くの曲を作った作曲家として知られる。当時バッハより人気があったテレマンが作ったイタリアバロックの様式の底抜けに明るいソナタです。

《トランペットと弦楽のためのソナタTWV44:D1》

1楽章 Adagio
2楽章 Allegro
3楽章 Grave
4楽章 allegro



□アルビノーニ ALBINONI
1671年6月8日、ヴェネツィアに生まれのアルビノーニは、イタリア(当時はヴェネツィア共和国)のバロック音楽の作曲家として著名であった。生前はオペラ作曲家として知られていたが、今日はもっぱら器楽曲の作曲家として記憶され、そのうちいくつかは頻繁に演奏されている。

《トランペット協奏曲ニ短調op.9-2》

1楽章 Allegro e non presto
2楽章 Adagio
3楽章 Allegro



□ヴィヴァルディ VIVALDI
1678年3月4日〜1741年7月28日)はヴェネツィア出身のバロック後期の作曲家、ヴァイオリニスト。カトリック教会の司祭でもあった。
《和声と創意の試み)作品8。ヴァイオリン協奏曲集 四季》
協奏曲集「四季」(協奏曲集「和声法と創意への試み」op.8(全12曲)から)
数え切れないくらい沢山の協奏曲を作曲したヴィヴァルディの曲を代表するだけではなく,すべてのクラシック音楽の中でも特に有名で人気の高い作品です。この「四季」は,「和声と創意(インヴェンション)への試み」というタイトルのつけられた12曲からなる協奏曲集の中の最初の4曲セットのことです。12曲中の他の曲に比べ,この4曲だけはずば抜けて演奏される機会が多くなっています。4曲それぞれが親しみやすく、個性を持っているのが人気の秘密ですが、楽譜に書かれたソネットに合わせて曲を作っている点も独創的なところです。
日本人は大変「四季」が好きですが、日本人の考える「春夏秋冬」のイメージとイタリア人の考えるそれとが微妙にずれているのも面白いところです。各楽章は、春:ホ長調、夏:ト短調、秋:ヘ長調、冬:ヘ短調という調性で書かれており、各曲それぞれの個性を感じさせてくれます。その一方でも4曲セットとしてのまとまりの良さもあり、それぞれで聞いても、まとめて聞いても楽しめる作品となっています。
バロック時代は、合奏協奏曲という形式が全盛でしたが、この「四季」は、独奏楽器の活躍する近代的な協奏曲にかなり近いものがあります。バロック音楽の中で、例外的なくらいにレコーディング数が多いのも、そのためもあると思われます。
各曲とも、急−緩−急の3楽章で構成されています。また,急速楽章の方はすべて、主要なメロディが何回も繰り返し戻ってくるリトルネッロ形式で書かれています。

●第1番ホ長調,op.8-1,RV.269「春」

第1楽章
洋の東西を問わず「春」といえば、明るいイメージがあります。その雰囲気を大変良く伝えてくれる曲です。第1楽章は、「春が来た。小鳥は楽しそうに歌い...」というソネットに曲が付けられています。冒頭部分の楽しげで歯切れの良いメロディは大変有名です。クラシック音楽中、最も有名なメロディの一つでしょう。この部分がトゥッティのメロディで、その後、「鳥の歌」を表わすソロが続きます。独奏ヴァイオリンとオーケストラの第1、第2ヴァイオリンとが掛け合いをしながら、鳥のさえずりを模倣します。2回目のトゥッティは「泉の流れ」を表わす柔らかな雰囲気で始まります。その後、「雷鳴」を表わす合奏と「稲妻」を現すソロとの掛け合いになります。第3トゥッティの後、再度、「鳥の歌」のソロとなります。その後もソロとトゥッティが交互に続き、楽章が閉じられます。

第2楽章
山羊飼いが犬のそばで眠りこけている情景を描写しています。この楽章では、チェロ以下の楽器は登場しません。繊細に揺れ動くような伴奏の上に、ヴィオラが犬の鳴き声を表わすような音型を「タッター」と演奏します。このパターンは楽章を通じて続きます。独奏ヴァイオリンは,その上で息の長いメロディを伸び伸びと演奏します。

第3楽章
12/8拍子の田園舞曲です。4回のトゥッティの間に3回のソロが入るリトルネッロ形式で書かれています。トゥッティは、持続する低音の上に軽やかな踊りのメロディが出てくる楽しげなものです。バグパイプ風の雰囲気を模倣しています。

●第2番ト短調,op.8-2,RV.315「夏」

第1楽章
「焼けつくような太陽に人も家畜も鬱々としている...」というソネットのとおり、明るい夏のイメージを予想して聞き始めると、ちょっと肩透かしを食らうような暗い気分で始まります。しばらくすると、かっこう、山鳩、ひわといった鳥の鳴き声を描写した部分になります。続いて、突然嵐のような雰囲気になりますが、これは北イタリアの夏で吹くことのある北風を表現しています。「涙を流す羊飼い」を表すしっとりとした部分の後、再度、北風の描写となって荒々しく楽章を閉じます。自然と気象の鮮やかな変化の描写が見事な楽章となっています。

第2楽章
「はげしい雷雨と稲妻、押し寄せる大バエ、小バエの群れ…」ということで、ここでは不安におののく農民たちを描いています。独奏ヴァイオリンを支える伴奏の音型は蝿を描写していると言われています。また、ところどころ雷鳴を表す音型が短く力強く出てきます。それにしても蝿を描写された音楽というのは…この作品ぐらいかもしれません。

第3楽章
「雷鳴がとどろき、稲妻がはしり、あられを降らしながら…」ということで、40小節にも渡る長大なトレモロが続くスピード感溢れる楽章です。ここではソリストよりもトゥッティの方が中心となっています。「嵐」を描写した迫力のある音楽が続きます。

●第3番ホ長調,op.8-3,RV.293「秋」

第1楽章
明るく素朴な村人たちの歌や踊りの音楽です。一度聞けばすぐに覚えられるシンプルなメロディが、大変印象的な楽章です。このメロディがトゥッティ、ソロ、トゥッティと何回も繰り返されていきます。豊かな秋の収穫を喜んでいるうちに、だんだんと酒に酔って、村人たちが眠りこけてしまう様子を見事に描写した音楽です。最後のソロの部分では、音が長く伸ばされた後、静かな気分になり、第2楽章を予感させます。最後、最初のシンプルなメロディが戻ってきて楽章が閉じられます。

第2楽章
酒宴の後で心地良く村人たちが眠っている平和な世界を描いています。ここでは弦楽器はすべて弱音器を付けて演奏しており、絶妙の甘い気分を出しています。また、ここでは、ソロ・ヴァイオリンと第1ヴァイオリンがユニゾンで演奏しています。協奏曲なのにソロが全然出てこないという作曲手法は独特なものです。

第3楽章
「夜が明け、狩人たちが狩に出かける」様子を描いています。狩人たちの胸の高鳴りを表現するような3/8の軽快なメロディで始まります。この楽章のシンプルなメロディも、1楽章同様、一度聞いたら忘れられません。その後は、逃げる獣(3連符)とそれを負う狩人の様子が描写されます。「鉄砲と犬」を描写した音型もあるということですが、一体どの部分でしょうか?

●第4番ヘ短調,op.8-4,RV.297「冬」

第1楽章
冷たい雪の中を凍えながら歩く人たちを描写した楽章です。4回のトゥッティの間に3回のソロが挿入されています。最初にまず、雪の中で凍えている人を現す第1トゥッティが出てきます。8分音符の同音反復がどんどん積み重なって行くような作りになっています。冷たく非情な雰囲気が漂います。続いて出てくる第 1ソロは32分音符の下降するような音型です。これは「恐ろしい風」を描写し、ヴァイオリン独奏によってフォルテで演奏されます。次に出てくる第2トゥッティは、人々が寒さの中で足踏みをしている様子を描写しています。これも細かい音符の連続で、とても格好良い旋律です。その後に出てくる第2ソロは、やはり32分音符からなる動きの速い音型で「恐ろしい」風を現しています。
第3トゥッティは第1トゥッティと同じものに戻ります。その後の第3ソロも細かい音符の連続で、寒さのために歯がかみ合わない様子を描いています。最後に第2トゥッティの「足踏み」が出てきて楽章を締めくくります。

第2楽章
前楽章とは対照的に暖かな屋内の様子を描いています。ここで出てくるメロディは,「四季」の中でもいちばん魅力的なものです。合奏部のピツィカートの伴奏の上に独奏ヴァイオリンが穏やかでしみじみとした味わいをもった美しいメロディを朗々と歌って行きます。これは火のかたわらでの静かで満ち足りた日々を描いています。伴奏のピツィカートはしとしと降る雨を描写しています。この楽章が静かに終わると、そのまま休み無く次の楽章につながっていきます。

第3楽章
再度、第1楽章と似た雰囲気に戻ります。第1楽章も自由な雰囲気でしたが、さらに自由な構成です。この楽章では,氷の上を転ばぬように歩いているけれども、転んでしまう光景を描写しています。まず独奏ヴァイオリンが氷の上を歩いているような音型を繰り返し演奏します。その後の第1トゥッティでは転ばぬように慎重になっている様子を描きます。その後の下降音型は「ツルリ」と滑った様子を描いています。第2ソロでは、起き上がって激しい勢いで走る部分を描いています。続く第2トゥッティでは調性が変ホ長調になり、テンポもレントになり、優しい表情に一転します。ここでは「南風」が吹く様子を描いています。これは「夏」に出てきた音型の変形です。その後、独奏ヴァイオリンに激しい音型が出てきます。これは南風、北風などが激しく戦っている様子を描いています。この激しい音型を引き継いだトゥッティが最後に出てきます。堂々と「これが冬だー」という感じで全曲が締められます。

ご案内

 20年以上に亘って、オープニング・コンサートの祝祭オーケストラとして演奏を担当していただいた「アザレア室内オーケストラ」は、一昨年を持って終息し、代わりに、「アザレア室内合奏団(バロック・オーケストラ)」を発足させることになりました。これまでのオーケストラはアマチュア集団でしたが、今度のオーケストラは、演奏レベルが高く、聴き応えのある、そして山陰で最も秀逸なオーケストラを作ることにしました。そこで、アザレアのまち音楽祭で最も人気の高いヴァイオリニスト「辺見康孝氏」に音楽監督になっていただきました。山陰地区でプロとして活動する弦楽奏者の皆さんでバロック・オーケストラを編成し、倉吉未来中心大ホールの音響を十二分に生かせる演奏会になるものと期待しています。
 今回のメインは、ヴィヴァルディの四季ですが、一部では倉吉出身のプロのトランぺット奏者「尾崎浩之氏」をお迎えし、バロック・トランペットの輝かしい名曲を演奏して頂きます。尾崎氏は2003年のサロンコンサートに登場し、トランペットとクラリネット、そしてパイプオルガンによるマルティーニのトッカータを演奏し、その感動の余韻が今も語り継がれています。そして二部の「四季」では、通奏低音として通常はチェンバロを使いますが、今回はハープで挑戦します。山陰在住の優れた弦楽器奏者を愛しんで戴き、末永くご支援くださいますようお願いします。