ヴァイオリンとハープのユニットを組んで活躍しているXiksaのヴァイオリニスト「辺見康孝氏」に、新しく結成して頂いたバロック・オーケストラです。主に西日本でプロとしてソロ活動をしている弦楽器奏者を結集して、よりハイレベルのアンサンブルを実現させる目的で立ち上げたオーケストラです。このオーケストラをアザレアのまち音楽祭の顔として成長させ、徐々に管楽器を導入しながら将来的には二管編成のオーケストラに発展させたいと思います。ソリストとして活動している演奏家の、極めてハイレベルな室内アンサンブルをお聴きいただきます。
曲目解説
トランペット協奏曲の事
協奏曲が非常に栄えたバロック時代にはきらびやかな音色が好まれ、テレマンらによって多く作曲された。現在定番とされているレパートリーも多くはこの時代のものである。しかしそれ以降の古典派や前期ロマン派の時代では、作曲家達がより深みのある作品を作ろうとする傾向へと時代が流れていく中で、当時のナチュラルトランペットには自然倍音しか出せないという決定的な弱点があったため、トランペットは作曲家達の要求に応えることが出来ず、トランペット協奏曲はあまり作られなくなった。ちなみに、その弱点を補う装置をつけた楽器のための協奏曲をハイドンが1曲作曲しているが、この曲は現時点で一般に最も有名なトランペット協奏曲である。
19世紀に発明されたバルブトランペットが普及してくると、状況は一変した。トランペットは作曲家の要求に応えうる高度な演奏能力を備えた楽器となったため、トランペット協奏曲も再び脚光を浴びるようになったのである。
しかしながら、現代のトランペットは、音色、音域、奏法などの観点で金管楽器の中で最も独奏に適した楽器のひとつにはなったが、未だ定番といえるレパートリーはそれほど多くはない。
□テレマン TELEMAN
テレマンは後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家で、40歳以降は北ドイツのハンブルクで活躍した。18世紀前半のヨーロッパにおいては随一と言われる人気と名声を誇り、クラシック音楽史上もっとも多くの曲を作った作曲家として知られる。当時バッハより人気があったテレマンが作ったイタリアバロックの様式の底抜けに明るいソナタです。
《トランペットと弦楽のためのソナタTWV44:D1》
1楽章 Adagio
2楽章 Allegro
3楽章 Grave
4楽章 allegro
□アルビノーニ ALBINONI
1671年6月8日、ヴェネツィアに生まれのアルビノーニは、イタリア(当時はヴェネツィア共和国)のバロック音楽の作曲家として著名であった。生前はオペラ作曲家として知られていたが、今日はもっぱら器楽曲の作曲家として記憶され、そのうちいくつかは頻繁に演奏されている。
《トランペット協奏曲ニ短調op.9-2》
1楽章 Allegro e non presto
2楽章 Adagio
3楽章 Allegro
□ヴィヴァルディ VIVALDI
1678年3月4日〜1741年7月28日)はヴェネツィア出身のバロック後期の作曲家、ヴァイオリニスト。カトリック教会の司祭でもあった。
《和声と創意の試み)作品8。ヴァイオリン協奏曲集 四季》
協奏曲集「四季」(協奏曲集「和声法と創意への試み」op.8(全12曲)から)
数え切れないくらい沢山の協奏曲を作曲したヴィヴァルディの曲を代表するだけではなく,すべてのクラシック音楽の中でも特に有名で人気の高い作品です。この「四季」は,「和声と創意(インヴェンション)への試み」というタイトルのつけられた12曲からなる協奏曲集の中の最初の4曲セットのことです。12曲中の他の曲に比べ,この4曲だけはずば抜けて演奏される機会が多くなっています。4曲それぞれが親しみやすく、個性を持っているのが人気の秘密ですが、楽譜に書かれたソネットに合わせて曲を作っている点も独創的なところです。
日本人は大変「四季」が好きですが、日本人の考える「春夏秋冬」のイメージとイタリア人の考えるそれとが微妙にずれているのも面白いところです。各楽章は、春:ホ長調、夏:ト短調、秋:ヘ長調、冬:ヘ短調という調性で書かれており、各曲それぞれの個性を感じさせてくれます。その一方でも4曲セットとしてのまとまりの良さもあり、それぞれで聞いても、まとめて聞いても楽しめる作品となっています。
バロック時代は、合奏協奏曲という形式が全盛でしたが、この「四季」は、独奏楽器の活躍する近代的な協奏曲にかなり近いものがあります。バロック音楽の中で、例外的なくらいにレコーディング数が多いのも、そのためもあると思われます。
各曲とも、急−緩−急の3楽章で構成されています。また,急速楽章の方はすべて、主要なメロディが何回も繰り返し戻ってくるリトルネッロ形式で書かれています。
●第1番ホ長調,op.8-1,RV.269「春」
第1楽章
洋の東西を問わず「春」といえば、明るいイメージがあります。その雰囲気を大変良く伝えてくれる曲です。第1楽章は、「春が来た。小鳥は楽しそうに歌い...」というソネットに曲が付けられています。冒頭部分の楽しげで歯切れの良いメロディは大変有名です。クラシック音楽中、最も有名なメロディの一つでしょう。この部分がトゥッティのメロディで、その後、「鳥の歌」を表わすソロが続きます。独奏ヴァイオリンとオーケストラの第1、第2ヴァイオリンとが掛け合いをしながら、鳥のさえずりを模倣します。2回目のトゥッティは「泉の流れ」を表わす柔らかな雰囲気で始まります。その後、「雷鳴」を表わす合奏と「稲妻」を現すソロとの掛け合いになります。第3トゥッティの後、再度、「鳥の歌」のソロとなります。その後もソロとトゥッティが交互に続き、楽章が閉じられます。
第2楽章
山羊飼いが犬のそばで眠りこけている情景を描写しています。この楽章では、チェロ以下の楽器は登場しません。繊細に揺れ動くような伴奏の上に、ヴィオラが犬の鳴き声を表わすような音型を「タッター」と演奏します。このパターンは楽章を通じて続きます。独奏ヴァイオリンは,その上で息の長いメロディを伸び伸びと演奏します。
第3楽章
12/8拍子の田園舞曲です。4回のトゥッティの間に3回のソロが入るリトルネッロ形式で書かれています。トゥッティは、持続する低音の上に軽やかな踊りのメロディが出てくる楽しげなものです。バグパイプ風の雰囲気を模倣しています。
●第2番ト短調,op.8-2,RV.315「夏」
第1楽章
「焼けつくような太陽に人も家畜も鬱々としている...」というソネットのとおり、明るい夏のイメージを予想して聞き始めると、ちょっと肩透かしを食らうような暗い気分で始まります。しばらくすると、かっこう、山鳩、ひわといった鳥の鳴き声を描写した部分になります。続いて、突然嵐のような雰囲気になりますが、これは北イタリアの夏で吹くことのある北風を表現しています。「涙を流す羊飼い」を表すしっとりとした部分の後、再度、北風の描写となって荒々しく楽章を閉じます。自然と気象の鮮やかな変化の描写が見事な楽章となっています。
第2楽章
「はげしい雷雨と稲妻、押し寄せる大バエ、小バエの群れ…」ということで、ここでは不安におののく農民たちを描いています。独奏ヴァイオリンを支える伴奏の音型は蝿を描写していると言われています。また、ところどころ雷鳴を表す音型が短く力強く出てきます。それにしても蝿を描写された音楽というのは…この作品ぐらいかもしれません。
第3楽章
「雷鳴がとどろき、稲妻がはしり、あられを降らしながら…」ということで、40小節にも渡る長大なトレモロが続くスピード感溢れる楽章です。ここではソリストよりもトゥッティの方が中心となっています。「嵐」を描写した迫力のある音楽が続きます。
●第3番ホ長調,op.8-3,RV.293「秋」
第1楽章
明るく素朴な村人たちの歌や踊りの音楽です。一度聞けばすぐに覚えられるシンプルなメロディが、大変印象的な楽章です。このメロディがトゥッティ、ソロ、トゥッティと何回も繰り返されていきます。豊かな秋の収穫を喜んでいるうちに、だんだんと酒に酔って、村人たちが眠りこけてしまう様子を見事に描写した音楽です。最後のソロの部分では、音が長く伸ばされた後、静かな気分になり、第2楽章を予感させます。最後、最初のシンプルなメロディが戻ってきて楽章が閉じられます。
第2楽章
酒宴の後で心地良く村人たちが眠っている平和な世界を描いています。ここでは弦楽器はすべて弱音器を付けて演奏しており、絶妙の甘い気分を出しています。また、ここでは、ソロ・ヴァイオリンと第1ヴァイオリンがユニゾンで演奏しています。協奏曲なのにソロが全然出てこないという作曲手法は独特なものです。
第3楽章
「夜が明け、狩人たちが狩に出かける」様子を描いています。狩人たちの胸の高鳴りを表現するような3/8の軽快なメロディで始まります。この楽章のシンプルなメロディも、1楽章同様、一度聞いたら忘れられません。その後は、逃げる獣(3連符)とそれを負う狩人の様子が描写されます。「鉄砲と犬」を描写した音型もあるということですが、一体どの部分でしょうか?
●第4番ヘ短調,op.8-4,RV.297「冬」
第1楽章
冷たい雪の中を凍えながら歩く人たちを描写した楽章です。4回のトゥッティの間に3回のソロが挿入されています。最初にまず、雪の中で凍えている人を現す第1トゥッティが出てきます。8分音符の同音反復がどんどん積み重なって行くような作りになっています。冷たく非情な雰囲気が漂います。続いて出てくる第 1ソロは32分音符の下降するような音型です。これは「恐ろしい風」を描写し、ヴァイオリン独奏によってフォルテで演奏されます。次に出てくる第2トゥッティは、人々が寒さの中で足踏みをしている様子を描写しています。これも細かい音符の連続で、とても格好良い旋律です。その後に出てくる第2ソロは、やはり32分音符からなる動きの速い音型で「恐ろしい」風を現しています。
第3トゥッティは第1トゥッティと同じものに戻ります。その後の第3ソロも細かい音符の連続で、寒さのために歯がかみ合わない様子を描いています。最後に第2トゥッティの「足踏み」が出てきて楽章を締めくくります。
第2楽章
前楽章とは対照的に暖かな屋内の様子を描いています。ここで出てくるメロディは,「四季」の中でもいちばん魅力的なものです。合奏部のピツィカートの伴奏の上に独奏ヴァイオリンが穏やかでしみじみとした味わいをもった美しいメロディを朗々と歌って行きます。これは火のかたわらでの静かで満ち足りた日々を描いています。伴奏のピツィカートはしとしと降る雨を描写しています。この楽章が静かに終わると、そのまま休み無く次の楽章につながっていきます。
第3楽章
再度、第1楽章と似た雰囲気に戻ります。第1楽章も自由な雰囲気でしたが、さらに自由な構成です。この楽章では,氷の上を転ばぬように歩いているけれども、転んでしまう光景を描写しています。まず独奏ヴァイオリンが氷の上を歩いているような音型を繰り返し演奏します。その後の第1トゥッティでは転ばぬように慎重になっている様子を描きます。その後の下降音型は「ツルリ」と滑った様子を描いています。第2ソロでは、起き上がって激しい勢いで走る部分を描いています。続く第2トゥッティでは調性が変ホ長調になり、テンポもレントになり、優しい表情に一転します。ここでは「南風」が吹く様子を描いています。これは「夏」に出てきた音型の変形です。その後、独奏ヴァイオリンに激しい音型が出てきます。これは南風、北風などが激しく戦っている様子を描いています。この激しい音型を引き継いだトゥッティが最後に出てきます。堂々と「これが冬だー」という感じで全曲が締められます。