アザレア室内オーケストラ演奏会
指揮/松岡 究
演奏/アザレア室内オーケストラ
ソリスト/Hr 小椋順二
Sp寺内智子 M.Soprano塩崎めぐみ Ten山本耕平 Bas吉田章一
合唱/米子第九合唱団
2014年5月11日(日)13:45〜 倉吉未来中心大ホール 700円
@ モーツァルト作曲/ホルン協奏曲第三番
管弦楽編成は、クラリネット2本、ファゴット2本と弦楽合奏であり、特にクラリネットの使用は、モーツァルトの作品群の中でも目を引く。演奏時間は約15分。
従来の研究では1783年作曲とされているが、近年の研究では、1787年作曲とされる。ただしモーツァルトは1784年以降の作品を全て自作目録に記しているが、この作品は目録に載っていない。第1楽章展開部の複雑な和音進行や、第3楽章ロンドの第3主題で第2楽章第1主題が引用されるなど、手の込んだ作曲技法が使われており、4曲のホルン協奏曲の中では楽曲として最も充実していると言われる。独奏ホルンは高い音をあまり使わず、音域の点では易しく書かれているが、中音域で音程の取りにくい音が度々使われ、高い技術が要求されている。
第一楽章 Allegro、変ホ長調、4分の4拍子
第二楽章 Romance:Larghetto、変イ長調、2分の2拍子
第三楽章 Rondo:Allegro、変ホ長調、8分の6拍子
Aモーツァルト作曲/交響曲 第38番 ニ長調 K.504「プラハ」
1786年12月、プラハでのオペラ『フィガロの結婚』の上演が大成功を収めたことにより、モーツァルトはプラハから招待を受けた。1787年1月22日、モーツァルトはプラハで自ら『フィガロの結婚』を指揮したが、この交響曲はそれに先立って初演されたものである。
この交響曲は3楽章からなり、メヌエット楽章を欠いている。
第一楽章 Allegro、変ホ長調、4分の4拍子
第二楽章 Romance:Larghetto、変イ長調、2分の2拍子
第三楽章 Rondo:Allegro、変ホ長調、8分の6拍子
Bロッシーニ作曲/スターバト・マーテル
スターバト・マーテル(Stabat Mater)は、十字架上の我が子キリストを仰ぐ聖母マリアの哀しみの心を表現した祈祷文である。多くの作曲家がこの曲を作曲しているが、一番有名なのは18世紀前半のイタリアの作曲家ペルゴレージのものであろう。その他に、Dvorak, Gounod、Verdi,Schubertなど主なものでも30曲以上の同名作品がある。しかし、ロッシーニの作品は、ベルディの「レクイエム」に似て、まるでオペラのように華麗でドラマチックであると言われ、演奏回数も多い人気曲である。
1. Introduzione, Coro e Solisti
2. Aria per Tenore
3. Duetto per Soprano e Contralto
4. Aria per Basso
5. Recitativo per Basso e Coro
6. Quartetto, Solisti
7. Cavatina per Mezzosoprano
8. Aria per Soprano e Coro
9. Quartetto, Solisti
10. Finale, Coro
訳詞
1. Introduzione, Coro e Solisti
悲しみの母は立っていた
十字架の傍らに、涙にくれ
御子が架けられているその間
2. Aria per Tenore
呻き、悲しみ
歎くその魂を
剣が貫いた
ああ、なんと悲しく、打ちのめされたことか
あれほどまでに祝福された
神のひとり子の母が
そして歎き、悲しんでいた
慈悲深い御母は、その子が
罰[苦しみ]を受けるのを目にしながら
3. Duetto per Soprano e Contralto
涙をこぼさないものがあるだろうか
キリストの母が、これほどまでの
責め苦の中にあるのを見て
悲しみを抱かないものがあるだろうか
キリストの母が御子とともに
歎いているのを見つめて
4. Aria per Basso
その民の罪のために
イエスが拷問を受け
鞭打たれるのを(御母は)見た
愛しい御子が
打ち捨てられて孤独に死に
魂へ帰っていくのを見た
5. Recitativo per Basso e Coro
さあ、御母よ、愛の泉よ
私にもあなたの強い悲しみを感じさせ
あなたと共に悲しませてください
私の心を燃やしてください
神なるキリストへの愛で、
その御心にかなうように
6. Quartetto, Solisti
聖なる母よ、どうかお願いします
十字架に架けられた(御子の)傷を
私の心に深く刻みつけてください
あなたの子が傷つけられ
ありがたくも私のために苦しんでくださった
その罰[苦しみ]を私に分けてください
あなたと共にまことに涙を流し
十字架の苦しみを感じさせてください、
私の生のある限り
十字架の傍らにあなたと共に立ち
そして打ちのめされる苦しみを
あなたとともにすることを私は願います
いと清き乙女のなかの乙女よ
どうか私を退けずに
あなたとともに歎かせてください
7. Cavatina per Mezzosoprano
どうかキリストの死を私に負わせ、
どうかその受難を共にさせ、
そしてその傷に思いを馳せさせてください
どうかその傷を私に負わせてください
どうか私に十字架を深く味わわせてください
そして御子の血を
8. Aria per Soprano e Coro
怒りの火に燃やされることなきよう
あなたによって、乙女よ、守られますように
裁きの日には
私を十字架によって守護し
キリストの死によって支え
恵みによって満たしてください
9. Quartetto, Solisti
肉体が滅びる時には
どうか魂に、栄光の天国を
与えてください。
10. Finale, Coro
とこしえに、アーメン
指揮者プロフィール
松岡 究
(まつおか はかる)
成城大学文芸学部卒業。音楽を戸口幸策氏に、指揮を小林研一郎氏に、声楽を山田茂氏に師事。1987年東京オペラ・プロデュース公演、ドニゼッティ作曲「ビバ・ラ・マンマ」を指揮してデビュー。その後、1991年度文化庁在外派遣研修員として、ハンガリー国立歌劇場および国立交響楽団に留学。1992年スウェーデン・アルコンスト音楽祭に参加、さらにヨルマ・パヌラ教授よりディプロマを与えられた。2004年〜2007年ローム財団による在外派遣研修員としてベルリンにて研修。2009年東京ユニバーサルフィル専任指揮者、日本オペレッタ協会音楽監督にそれぞれ就任した。
鳥取県では、ミンクス室内オーケストラの結成以来常任指揮者として数々のコンサートを指揮。特に毎年倉吉市で開かれる「アザレアのまち音楽祭」ではアザレア祝祭オーケストラとしての公演を指揮。その質の高さには定評がある。更に鳥取オペラ協会設立以来、その公演の指揮を担い、オペラ育成にも尽力している。特筆に値するのは、総合芸術たるオペラ、そして合唱、オーケストラと言う鳥取県の音楽文化の中核を担う指揮者として、鳥取県にとってかけがえのない宝物といっても過言ではない。今年のアザレアのまち音楽祭オープニング・コンサートでは、本県初演となるロッシーニの「スターバト・マーテル」を、手兵「米子第九合唱団」を率いての演奏を試みるが、「悲しみの聖母」がドラマティックに展開されるものと期待されている。
ソリスト・プロフィール
小椋順二
(おぐら じゅんじ)Horn
鳥取県倉吉市出身。1996年大阪音楽大学卒業。2000年ドイツ国立ケルン音楽大学アーヘン校卒業。在学中、アーヘン室内オーケストラ、ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニーに在籍。大阪シンフォニカー、仙台フィルハーモニー管弦楽団を経て現在、京都市交響楽団ホルン奏者。相愛大学、大阪音楽大学、夕陽丘高校音楽科の非常勤講師。ホルンを三宅知次、D.ブライアント、R.アルメイダ、H.ツィーグラーの各氏に師事。シンフォニア・ホルニステン、京都 ラ ビッシュ アンサンブル、リバスト・ブラスクインテットのメンバー。
寺内智子
(てらうち ともこ)Soprano
大阪音楽大学音楽学部声楽科卒業。同専攻科修了。声楽を天野春美、E・ラッティ、伊藤京子各氏に師事。関西二期会研究生を経て、1998年イタリアへ留学。M・フェラーロ氏によるマスタークラス受講。イタリアにてオペラ「ラ・ボエーム」ミミ役、「カプレーティ家とモンテッキ家」ジュリエッタ役を歌い好評を得る。帰国後も、神戸アーバンオペラ「フィガロの結婚」スザンナ役をはじめ「愛の妙薬」「カルメン」「魔笛」「ポラーノの広場」「沈黙」などのオペラに出演。第29回イタリア声楽コンコルソ金賞、第20回飯塚新人音楽コンクール大賞、第12回ABC新人オーディション最優秀賞を受賞し外山雄三指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団と共演。第16回宝塚ベガ音楽コンクール第2位、神戸灘ライオンズクラブ音楽賞、鳥取県声楽オーディション県知事賞等受賞。2006年、鳥取県知事賞受賞者コンサートで関西フィルハーモニー交響楽団と共演。日本演奏連盟会員、関西二期会、鳥取オペラ協会会員。
塩崎めぐみ
(しおざき めぐみ)M.Soprano
鳥取市鹿野町出身。鳥取大学農学部農林総合科学科卒業。武蔵野音楽大学大学院声楽専攻を首席で修了。新国立劇場オペラ研修所第11期生修了。同研修所在籍中、イギリス、ロイヤル・オペラハウスのジェット・パーカー・ヤング・アーティスツ・プログラムに参加。平成23年度文化庁新進芸術家海外研修制度でベルリンへ留学。2012年 Opera Classica Europa 公演、ヴェルディ作曲オペラ『リゴレット』マッダレーナ役でドイツデビュー。更に同年、ロンドンSoho Theatre 公演オペラ”Finding Butterfly”(プッチーニ作曲 オペラ『蝶々夫人』より)スズキ役で出演。翌年「平成25年度 文化庁大学を活用した文化事業」鳥取大学主催で”Finding Butterfly”を、地元の鹿野町で開催された「鳥の演劇祭6」の中で再演、スズキ役で出演した。声楽を西岡千秋、藤井文子、小畑朱実、エレーナ・オブラスツォア、トーマス・アレン各氏に師事。日本演奏連盟会員。二期会会員。
山本耕平
(やまもと こうへい)Tenor
米子市生まれ。鳥取県立米子東高等学校3年次に第49回全国高等学校総合音楽祭鳥取県大会ソロ部門にて器楽・声楽共に最優秀賞受賞。第50回瀧廉太郎記念全日本高等学校声楽コンクールに出場。東京学芸大学教育学部高等教育教員養成課程音楽科クラリネット専修を経て、東京藝術大学音楽学部声楽科バス専攻に入学。3年次にテノールに転向後、安宅賞受賞。同大学をアカンサス音楽賞、同声会音楽賞、松田トシ賞を得て首席卒業。2008年第39回イタリア声楽コンコルソ・ミラノ大賞部門第1位受賞。2009年日伊声楽コンコルソ第1位及び歌曲賞受賞。2010年公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団より第15回エネルギア音楽賞受賞。同年第1回武藤舞海外研修助成奨学金を得て渡伊、2011年イタリア・ミラノ・ヴェルディ音楽院ビエンニオ・声楽コース修了。2012年東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程声楽(オペラ)専攻を大学院アカンサス音楽賞を得て首席修了。二期会会員。
吉田 章一
(よしだ あきかず)Bass
鳥取大学教育学部卒業。広島大学大学院学校教育研究科修了。声楽を小松英典、西岡千秋、佐藤晨、吉田征夫、平野弘子の各氏に師事。ソロ・コンサート、ジョイント・コンサートのほか、モーツァルトやフォーレのレクイエム、バッハのヨハネ受難曲、ヘンデルのメサイア、ベートーヴェンの第九等のソリストを務める。オペラでは、モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」に出演。特に2002年の国民文化祭オペラ公演「ポラーノの広場」では、主役のキューストを歌い圧倒的な成功をおさめた。2004年の再演では、更にバージョンアップしたキューストを歌い、全国レベルで通用する風格を見せた。又、特筆に価するのはドイツリートに対する造詣の深さと演奏力の高さである。既にCDリリースされているシューベルトの「冬の旅」は、高く評価されている。鳥取オペラ協会理事。
オーケストラ・プロフィール
アザレア室内オーケストラ
泊村在住の医師「吉田明雄氏」が主宰するプロ・アマ混成の極めてハイレベルな室内オーケストラである。設立当時から指揮を担当するプロの指揮者「松岡究氏」の薫陶を求め、各地のオーケストラから参集したメンバーによって編成されている。よりレベルの高い音楽の追究をしたいと、音楽家としての自立を求めるアマチュア奏者にプロ奏者がゲスト参加して、素晴らしい音楽を紡ぎ出す限りなくプロに近い演奏集団である。
アザレア室内オーケストラ・メンバー
1st,Vn: 吉田明雄、曽田千鶴、野村知則、井上志保、桑本ゆうき/
2nd,Vn: 永江佳代、益尾恵美、藤原才知、小林圭子、/
Va: 松永佳子、長田直樹、小西恵里、北山三枝子/
Vc: 原田友一郎、須々木竜紀、中野俊也、、井上拓也/
DB:生田祥子、渡辺琢也、大津敬一/
Fl:稲田真司、古瀬由美子/
Ob:古川雅彦、上代 美樹/
Cl:杉山清香、山田祐司/
Fg:木村恵理、橋本美紀子/
Hr: 小椋智恵子、山根和成、田中智子、老松尚子/
Tp: 森本 菜奈視、玉崎勝守/
Tb:隅田 誠、楠見公義、松本弘一/
Timp:細田真平
合唱団・プロフィール
米子第九合唱団
1985年「県民による第九公演実行委員会」により県内初のベートーヴェン「第九交響曲」公演が行われ、1990年には米子公演をより積極的に行うため「第九米子公演推進委員会」が組織された。その下部組織の合唱部会(米子第九合唱団)は第九公演以外にもオーケストラとの共演曲を選び、モーツァルトとフォーレの「レクイエム」、J.S.バッハ「ミサ曲ロ短調」ヴィヴァルディ「グローリア」公演を行い好評を博した。2005年の鳥取県初のヘンデル「メサイア」全曲公演も大成功をおさめた。1995年から松岡究氏に継続的に指導を受け、音楽性の向上をめざした活動を続けている。今回は、初めてとなるロッシーニ「スタバート・マーテル」に取り組み、劇的な表現を目指している。
スタバト・マーテル合唱団合唱(49名)
米子第九合唱団・メンバー
Soprano 足立幸恵・阿部千歳・井澤 道子・入江真理子・岸本やよい・小板勝子・近藤登喜子・佐藤慎子・鈴木妙子・富永晄子・中野郁子・中本千鶴子・野川貴代子・野嶋如佳・原田和子・福島史子・松田令子・松原優子・宮本美樹・山田尚美・渡辺和子
Alto 石倉幸子・伊藤万有美・上之浜雪枝・内海紀子・大滝万紗子・小田島恵・梶野磨理子・加藤安津子・神谷詠子・高多貴子・乃木栄子・浜田美代子・藤原瑠美子・堀冨美・松本茂子・山根修子・山枡僚子
Tenor 池沢秀夫・伊勢時男・門脇慧・田中信之・藤本昭生
Bass 池淵勝彦・神谷洋司・寺岡利雄・福島陽一・吉田晴之・松崎晴彦
Pianist 本田祐美子・永瀬順子・石井まどか・笠井桃子・各務美香
地元指導者 神谷洋司・足立幸恵・山根修子
ディクション 村河茂樹
ご案内
すっかりアザレアのまち音楽祭の看板となった「アザレア室内オーケストラ」の演奏力の高さには、目を見張るものがあります。昨年以来、各地のアマチュア・オーケストラを聴いてきましたが、その巧さは群を抜いています。一番大きな要因は、奏者たちの音楽に対する意志力の強さの違いだと思いました。気分によって左右される「やる気」だけでなく、真摯に音楽を創り上げるという明確な意思の有無なのでしょう。アザレア室内オーケストラのメンバーには、アンサンブルするというヒューマンネットワークが存在しているようです。いくら演奏能力が高くても奏者同士の信頼関係が希薄では、濃密なアンサンブルは不可能なのです。オーケストラ・メンバーは、お互いの能力を知り、最高の演奏をするために妥協を排し、奏者自身最高のスキルを発揮しているからでしょう。私が最も高く評価するのは、メンバーが己の限界を明確に知っていることです。ですから、スキルの伴わない奏者が混じれば、アンサンブルは壊れます。オーケストラという組織は、それほど過酷なパーソンが求められます。
今回のコンサートには、ソリストとして京都市交響楽団のホルン奏者「小椋順二氏」(倉吉市出身)が登場します。これは、モーツァルトのホルン協奏曲連続演奏シリーズとして取り組み、三回目の登場となります。今後も継続しますのでご期待ください。また、交響曲は得意のモーツァルトの38番を精緻な演奏でお楽しみいただけるものと楽しみにしています。
何と言っても、今年の注目は8年ぶりに米子第九合唱団が登場することです。先回のモーツァルトの「レクイエム」に続いて今回はロッシーニの「スターバト・マーテル」を演奏していただけます。3年に一度の第九公演のない年に、合唱団の精鋭で新しく組織したメンバーで宗教曲に取り組み、名演を物して来ています。これは全国的にもまれな組織であり、アマチュアの範疇を超えた演奏団体として特筆に値するものでしょう。音楽の後進県だと言われて久しい鳥取県にとって、米子第九合唱団は、アザレア室内オーケストラとならんで大きな宝物です。今回のソリストは全て県内の優れた歌手で構成されます。かつて夢見たあこがれが、すでに実現していると喜んでいます。
私たちの住まう地域に在住し、清らかな水と緑を享受し、薫り高い音楽の命を共有できることはこの上ない喜びです。鳥取県は住環境で日本一住みたいまちだと言われますが、音楽文化においても、住みたいまちになりたいものです。