倉吉 アザレアのまち音楽祭
辺見康孝ヴァイオリン・コンサート

Harp 松村多嘉代
2012年6月20日(水)19:30〜 倉吉博物館玄関ホール 700円


 過去の演奏のご紹介
ヴァイオリン 辺見康孝 (第29回アザレアのまち音楽祭2011コンサートより)
♪ 『展覧会の絵』よりプロムナード(ムソルグスキー) (wmaファイル 973KB 2分)


第一部
@ 愛の喜び (クライスラー作曲/X[iksa]編曲)
『愛の悲しみ』と対をなす作品。三部形式。ハ長調。4分の3拍子。全身で喜びをそのまま表したような、晴れやかな作品。
A 愛の悲しみ(クライスラー作曲/X[iksa]編曲)
クライスラーによって作曲された『愛の喜び』と対をなす作品。イ短調。4分の3拍子。簡単な三部形式。その題名の通り、愛することゆえに生じる悲しみや苦悩、辛さが映し出されている。
B 美しきロスマリン(クライスラー作曲/X[iksa]編曲)
クライスラーによるヴァイオリンとピアノのための小品。「ロスマリン」とは花の名前のことであり、可愛らしい女性の愛称としての意味もある。3部形式(全体が3つの部分から成り立っている楽曲の形式)の魅力的な、軽快で親しみやすいワルツ。
C タイスの瞑想曲(マスネ作曲)
タイスの瞑想曲(タイスのめいそうきょく)は、ジュール・マスネが作曲した歌劇「タイス」(1894年初演)の第2幕第1場と第2場の間の間奏曲。その甘く美しいメロディによって広く知られている。本来はオーケストラと独奏楽器(ヴァイオリン)の形であるが、室内楽編曲も多い。
D 美しき夕暮れ(ドビュッシー作曲/X[iksa]編曲)
1880年作曲。 ポール・シェルジェの夕暮れを歌った詩に作曲した歌曲。夕暮れどきの美しい情景や、それに対する心情を描きながらも、 人生の無常や儚さを感じさせる詩を、ドビュッシーらしい音楽で彩っている。 ヴァイオリンやヴィオラなど、器楽曲用に編曲したものも頻繁に演奏される。
E 夢(ドビュッシー作曲/X[iksa]編曲)
1890年に作曲。題名の通り、幻想的な美しいメロディと、フェードアウトするような終わり方がとても印象的な小品。
F 月の光(ドビュッシー/X[iksa]編曲)
「ベルガマスク組曲(全4曲)」の中の一曲です。1890年(28歳頃)の作品。「ベルガマスク」とは北イタリアのベルガモ地方の農民の生活という意味合いを持つが、このタイトル自体と作品が決定的に結びついているわけではない。
「月の光」は初年期のドビュッシーの秀作といわれ、曲の完成度の高さ、美しさに秀で、情感豊かに仕上がっている。

第二部
@ フリーマン・エチュードより(ケージ作曲)
  第6番、第20番
曲名はケージにヴァイオリンのためのエチュードの作曲を依頼したパトロン、ベティ=フリーマンの名に由来する。ベティはこの作品をヴァイオリニストのポール=ズコフスキーに演奏してもらうことを企図し、そのポールがケージに出した作品の条件は「伝統的な記譜法によって一音ずつ記録された音楽」だった。
ケージがとった作曲スタイルは、星図表に五線譜を偶然性に基づいて重ね合わせる手法(Chance Operation)だった。ケージはポールの要望に従って、得られた音列に音の長さや強弱などこまかな指示を書き込み、それを音楽として仕上げたのだが、実際に出来上がったものは極めて演奏することが難しいものとなった。
ケージイヤーの本年1月、東京で辺見が日本人で初めて32曲全曲リサイタルを行い話題となった。
A ノクターン(ケージ作曲)
ジョン・ケージは南カリフォルニア大学でシェーンベルクに師事し作曲を学ぶ他、パリで建築を勉強、またキノコ博士としても知られている。偶然性の音楽、不確定性の音楽といった音楽を創始し、伝統的な西洋音楽の価値観を覆した。1947年に作曲されたこの作品は元々ヴァイオリンとピアノのために書かれている。
B 組曲『くるみ割り人形』(チャイコフスキー作曲/X[iksa]編曲)
バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71aは、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である。「くるみ割り人形」作曲中のチャイコフスキーはこの頃、自作を指揮する演奏会を企画していたが、あいにく手元に新作がなく、また作曲する暇もなかったため、急遽作曲中の「くるみ割り人形」から8曲を抜き出して演奏会用組曲とした。バレエの初演に先立ち、1892年3月19日初演された。


プロフィール

辺見康孝

(へんみ やすたか)Violin
 松江市生まれ。現代の作品を得意とし、独自の奏法を開発し従来の奏法では演奏不可能な作品もレパートリーとしている。また自ら作曲も行い、ダンサー、美術家、サウンド・デザイナー、舞台俳優などとのコラボレーションも行う。これまでにヨーロッパ諸国、オーストラリア、アメリカ合衆国、南アフリカ共和国、韓国、香港でも演奏活動を行っており、様々な国際芸術祭に招待されている。2001年より2年間はベルギーのアンサンブルChamp d'Actionのヴァイオリニスト、帰国後はnext mushroom promotionのヴァイオリニストとして精力的に演奏活動を行う他、ハーピスト松村多嘉代とのデュオX[iksa](イクサ)では新たな境地を開拓している。またアメリカ、スタンフォード大学などでの現代奏法についてのレクチャーは好評で、作曲家の創作活動に刺激を与え続けている。2004年にMegadisc(ベルギー)からリリースされたソロCD、X[iksa]のアルバムの他、多数のCD録音に参加している。2005年、next mushroom promotionとしてサントリー音楽財団より佐治敬三賞を受賞。
http://sun.ap.teacup.com/yashemmi/


松村多嘉代

(まつむら たかよ)Harp
 大阪生まれ。3歳よりピアノを始める。相愛音楽教室、相愛高等学校音楽科を経て相愛大学音楽学部ピアノ専攻卒業。 大学卒業後にハープを始める。 現在フリーランスハーピストとして、ソロ、オーケストラ、室内楽などで演奏活動を行う。妹・松村衣里とのハープデュオ・ファルファーレ(イタリア語で蝶々)でクラシック〜ポピュラーまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、フランス・アルル国際ハープフェスティバル、NHK-FM「名曲リサイタル」、武生国際音楽祭、文化庁の子どものための優れた芸術体験事業をはじめ国内外の数多くのコンサートに出演。平城遷都1300年記念祝典では、天皇、皇后両陛下ご臨席のもと、天平楽府のメンバーとして箜篌(くご)を演奏。音楽ホールでのクラシックコンサートはもとより、音楽鑑賞会、楽器解説やお話つきのステージには定評がある。また、ヴァイオリニスト辺見康孝とのデュオX[iksa]で国内はもとよりオーストラリア、韓国等において、これまでに約200回の公演を行っている。新作の委嘱初演などを積極的に行うほか自ら編曲も手掛け、ハープのための新たなレパートリーの開拓にも努めている。2008年にCD『X[iksa]』、2009年にCD『眠れる森のファルファーレ』をリリース。2010年にCD『Wa〜和』をリリース。
 http://gold.ap.teacup.com/farfalle/


ご案内

 辺見氏は学生時代からお馴染みのヴァイオリニストです。当時からアザレア室内オーケストラやアザレア弦楽四重奏団のメンバーとして出会っていましたが大学卒業と同時に音沙汰がなくなっていました。2005年、県文化振興財団の自主事業でストラヴィンスキーの「兵士の物語」をプロデュースすることになり、各地での上演を見学していました。たまたま静岡県で開催された「兵士の物語」を観に行ったとき、ホールのロビーに飾られたポスターに辺見氏の顔を見つけ、帰国していることを知ったのです。それ以来毎年アザレアのまち音楽祭に出演していただいていますから今年は8年目となります。そしてプロフェッショナルとして洗練されたステージを楽しませていただいています。特に近年のハープ奏者とのアンサンブルは秀逸であり、多くのファンをとりこにしています。
 ところで、第一部はヴァイオリンの名曲ばかりを集めた、まるで宝石箱のようなプログラムになっています。その名曲たちをヴァイオリンとハープのユニットであるiksaがその魅力を引き出すアレンジを施して聴かせてくれます。これはもう悦楽の世界です。そして二部では、全くなじみのない現代音楽の粋を聴かせてくれます。倉吉と言う小さな地方都市で、聴くことができるなどと想定されないジョン・ケージの作品を聴かせてくれます。今を生きる現代人が、今と言う時をどのように感じ、どのように表現してきたかを訴えるプログラムです。甘美な名曲を堪能した後に、思索する時間を持ち込んでくる辺見氏の演奏に、大きく心揺さぶられるものです。まさに、エデュティメントと呼ぶにふさわしいコンサートを、どうぞお楽しみください。