アザレア弦楽四重奏団演奏会
Vn伊藤明、三島文佳、Va井川晶子、Vc原田友一郎
2012年5月19日(土)19:30〜 倉吉博物館玄関ホール 700円
過去の演奏のご紹介
アザレア弦楽四重奏団 (第29回アザレアのまち音楽祭2011コンサートより)
♪ 愛の喜び(クライスラー作曲) (wmaファイル 1.4MB 3分)
第一部
@ アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618(モーツァルト作曲)
アヴェ・ヴェルム・コルプス(Ave verum corpus)とは、カトリックで用いられる聖体賛美歌のこと。
この曲はモーツァルトが、妻コンスタンツェの療養を世話した合唱指揮者アントン・シュトルのために作曲したものである。簡素な編成でわずか46小節の小品だが、絶妙な転調による静謐な雰囲気から、モーツァルト晩年の傑作とされる。
A 弦楽四重奏曲第1番変ホ長調作品12(メンデルスゾーン作曲)
1829年作曲。全体として明るくおだやかな、物語性に満ちた作品。
第1楽章 Adagio non troppo - Allegro non tardante
甘くゆるやかな序奏で始まり、穏やかで喜びに満ちた主題が登場する。展開部では音楽がやや陰り、テーマが静けさの中で再現される。結尾ではテンポが緩やかになり、消え入るように楽章を締めくくる。
第2楽章 Canzonetta: Allegretto - Piu mosso
このト短調の楽章は特に有名であり、単独でもよく演奏される。もの悲しい旋律が、ピチカートを交えたリズミカルな伴奏に乗せて歌われる。中間部は妖精が舞うかのようで、メルヘンチックな音楽。
第3楽章 Andante espressivo - attacca
夢見るような雰囲気の、甘い魅力に満ちた音楽。無言歌風の緩徐楽章。短く簡素ですが、旋律的な美しさが際立っている。
第4楽章 Molto allegro e vivace
それまでの穏やかな雰囲気が一変し、ハ短調による激しく悲愴なテーマが登場する。結尾部に入ると変ホ長調になり、第1楽章のテーマが再現されて明るさと緩やかさが戻り、穏やかな雰囲気の中で締めくくられる。
第二部
@ 弦楽四重奏曲第1番ハ短調作品51-1(ブラームス作曲)
ドイツの後期ロマン派音楽を代表的な作曲家ヨハネス・ブラームス(1833〜1897)は、荘厳にそびえ立つベートーヴェンの16曲の弦楽四重奏曲を仰ぎ見ながら、若い頃から弦楽四重奏曲の作曲に励んだ。20曲に及ぶ弦楽四重奏曲を書いては破棄するという苦渋が繰り返された末に、40歳(1873年)の秋にようやく自信作が生まれ、この第1番が初演された。後に続く第2・3番と比べると幾分構えた硬さが見受けられ、親しみよりも渋さが先行するが、緻密に計算された4つの楽器の響きが独特の魅力を発散している。
第1楽章 Allegro ハ短調 2分の3拍子
暗い情熱と劇的な緊張感をたたえている。第1・2主題は共にブラームスらしい内向する情念を秘めており、とくに第1主題の動機はいろいろに変形されて全曲の有機的な統一に役立っている。展開部では両主題の対位法的な処理が入念であり、交響曲第1番第1楽章に共通する形式と情趣を持っている。
第2楽章 Romanze. Poco Adagio 変イ長調 4分の3拍子
展開部を持たないソナタ形式。やや感傷的だが崇高さにあふれた美しい緩徐楽章。牧歌的なのどかさを湛える第1主題と、憂いを帯びた第2主題によって、ブラームスらしい開放されないロマンテッィクな歌が綴られていく。
第3楽章 Allegretto molto moderato e comodo - Un poco Piu animato ヘ短調 8分の4拍子
全体は3部形式で、1部と3部がソナタ形式。主部はヴァイオリンの落ち着きのない旋律とヴィオラのすすり泣きのような旋律が対位法的に処理された第1主題と、同じ調の第2主題によって展開・再現される。トリオは明るいヘ長調に変わり、優美なレントラー舞曲風な調べとなる。
第4楽章 Allegro ハ短調 2分の2拍子
ユニゾンで力強く始まる。情熱の奔流を思わせる第1主題、これに対する晴朗な第2主題、これも第1主題の変形である。提示部の最後に穏やかな気分の新しい旋律が現れ、展開部がないままに再現部に移る。力強さを高めながらきっぱりと結ばれる。
プロフィール
アザレア弦楽四重奏団
1988年結成。松江を中心に各地でのコンサート・イベント・ウェディングなど、通算約700ステージの演奏活動を展開する、山陰随一の弦楽四重奏団。1991年からアザレアのまち音楽祭に出演(22回目)。1991年全国育樹祭で、皇太子殿下ご臨席のもとで演奏して称賛を博す。1995年ねんりんピック開会式出演。2002年日英グリーン同盟植樹式で記念演奏。2005年島根県立美術館「名曲で飾るロビーコンサート」出演。クラシックから映画音楽・ポップス全般、歌謡曲や日本のメロディまで幅広いレパートリーを縦横に組み合わせた楽しい選曲、そして4人という自由気軽なアンサンブルのスタイルがリスナーから支持されている。
ご案内
アザレア弦楽四重奏団は、音楽祭の祝祭カルテットとして毎年の公演を約束させていただいています。今年は、通算22回目の公演であり、アザレア室内オーケストラとほぼ同時期に招聘させていただいています。このカルテットを主宰している伊藤明氏は、当時出来たばかりの松江市プラバホールの職員さんであり、また、ミンクス室内オーケストラの黎明期の団員さんでもありました。そんなこともあり、「アクエリアス弦楽四重奏団」として山陰で唯一のカルテットを持つ伊藤さんに、音楽祭の冠を付けた名称で、継続的に出演していただくことになったのです。このカルテットの魅力は、創設以来ずっと「伊藤明氏」がトップ・ヴァイオリンを担当し、音楽的なレベルが一定に担保されていることです。もともと、伊藤氏は関西フィルで活動し、その後郷里の松江に帰り、市役所勤務をしながら、オーケストラ活動に参加していた方です。オーケストラにおけるヴァイオリンはトゥッティ(みんなで同じメロディーを演奏する)であり、己の思いのままに演奏することは出来ません。ですから、必然的に小さなアンサンブルを組んだりして自己表現の発露を確保するのです。そんな意味で、力量さえあれば、自己表現が最も顕著に行えるのがカルテットなのです。
彼らのアンサンブルは、お互いの信頼感が直截に音楽表現に反映されるものですから、メンバーの編成は大切です。これまでの編成には栄枯盛衰がありましたが、現在のメンバーに固定して数年が経ち、かつて体験した高みに到達しようとしています。
今回のプログラムは、魅力的です。「アヴェ・ヴェルム・コルプス」はおまけのようなプログラムですが、それをトッププログラムに持ってくるところが味噌です。へたをすれば、アンサンブルの未熟を露呈しかねない曲をトップに据える大胆なプログラミングは、近年のアンサンブルの充実ぶりをアピールするものかもしれません。そして、メンデルスゾーンとブラームスが続きますが、アザレア弦楽四重奏団のライフワークとなる作品ですので、聴き応え十分の演奏が披露されるでしょう。