倉吉 アザレアのまち音楽祭
辺見康孝ヴァイオリン・コンサート

Harp 松村多嘉代
2011年6月18日(土)19:30〜 倉吉博物館玄関ホール 700円


第一部
@ 『展覧会の絵』よりプロムナード(ムソルグスキー)
 モデスト・ムソルグスキー作の組曲『展覧会の絵』の冒頭、および絵をモチーフにした曲同士のつなぎとして、少しずつ違う調子で何回か流れる小曲。亡き友の絵を見て歩く作曲者自身を表したとも言われるが、定かではない。

A 我が母の教え給いし歌(ドヴォルジャーク)
 1880年、ドヴォルザーク39歳のときに作曲された歌曲集「ジプシーの歌」におさめられた一曲です。
 この歌曲集はドヴォルザークの歌曲創作における一つの頂点を示すものだといえます。
 歌詞はボヘミアの叙情詩人アドルフ・ヘイドゥークの原作で、作者自身の手でドイツ語訳にされたものが使われています。
 「昔、年老いた母が私に歌を教えてくれた時、その目に涙を浮かべていた。今、私も親となり、その歌を子供に教えようと しているが、日焼けした頬に、いつのまにか同じように涙を流す」

B 金と銀(レハール)
 『金と銀』(きんとぎん、ドイツ語: Walzer Gold und Silber)作品79はフランツ・レハールが1902年に作曲したワルツで独立した管弦楽用ワルツとして誕生した。1902年の謝肉祭の間に催されたパウリーネ・メッテルニヒ侯爵夫人主催の舞踏会のために作曲された。題名の「金と銀」とは、実はこの舞踏会の課題名で、会場は銀色に照らされ、天井には金色の星が煌き、壁一面に金銀の飾りが付けられ、参加者も金銀に彩られた思い思いの装飾を纏っていたと伝えられる。

C 仮面舞踏会より『ワルツ』(ハチャトゥリアン)
 旧ソビエト連邦時代のグルジア出身のアルメニア人音楽家アラム・ハチャトゥリアンの作曲した仮面舞踏会とはミハイル・レールモントフの戯曲『仮面舞踏会』を題材にした音楽作品である。当初は劇音楽として作曲されたが、後に作者本人によって管弦楽のための組曲に編成された。ワルツは第1曲目で、優雅さの中に力強さや激しさを感じる素敵な曲です。

D DON'T/STOP/TRICKより第一曲(福井とも子)
 福井とも子は、日本の現代のクラシック作曲家・芸術監督。国内外の作曲賞受賞多数。作曲活動に加え、国内外の大学等でのレクチャーや、演奏会の企画・制作等を行う。2001年より現代音楽演奏団体、next mushroom promotionのプロデュースを手掛け、第8回公演は2005年度サントリー音楽財団佐治敬三賞を受賞している。

第二部
@愛の夢(リスト)
 フランツ・リストが作曲した3曲から成るピアノ曲。「3つの夜想曲」(みっつのやそうきょく)という副題を持つ。第3番は特に有名。

Aノクターン作品9−2 (ショパン)
 フレデリック・ショパンの夜想曲第2番変ホ長調作品9-2は1831年に作曲され、翌1832年に出版された。
 この曲はショパンのノクターンとしては最もよく知られた曲である。また、第1番と同様、ジョン・フィールドからの影響を強く受けている。また、ショパンはしばしば次の例のような変奏を行っていたといわれ、弟子の楽譜にも変奏の例が書き込まれている。

B革命のエチュード(ショパン)
 『革命』は、ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンによる『12の練習曲 作品10』の第12曲。ショパンが演奏旅行でポーランドを離れていた際、革命が失敗し、故郷のワルシャワが陥落したとの報を受けて作曲したとされる。『革命』というタイトルはフランツ・リストが命名したもの。

Cカンツォネッタ(チャイコフスキー)
 カンツォネッタはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第2章。ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35は、1878年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲。

Dチャールダーシュ(モンティ)
 ヴィットーリオ・モンティのチャルダッシュは元々マンドリンのために書かれた曲であるが、ヴァイオリンやピアノ向けに編曲したものがよく知られている。チャールダーシュの代表曲として日本では有名。非常に極端で華やかな曲想から、スポーツ競技などで演出に用いられる。また、金管楽器では超絶技巧の曲と知られており、木管楽器においても難易度の高い曲である。演奏形式としては前述したピアノ伴奏付きの独奏だけでなく、オーケストラ伴奏の協奏曲風なものや、クラリネット四重奏などのアンサンブルなど様々である。

プロフィール

ヴァイオリン&ハープデュオ
X [iksa](イクサ)

 2006年10月にデュオとしての初共演以来、これまでに海外公演を含め約150公演行っている。弦と弦が交わり合う様をイメージした「X」。「X」は未知の可能性。そしてその可能性に挑「戦」!
 オリジナル曲やオリジナルアレンジ、新作の委嘱などヴァイオリンとハープによるアンサンブルの可能性を追求する。2008年11年に1stCDアルバム『X[iksa]』、2010年に2ndアルバム『和』をリリース。
 http://green.ap.teacup.com/iksa/

辺見康孝

(へんみ やすたか)Violin
 松江市生まれ。現代の作品を得意とし、独自の奏法を開発し従来の奏法では演奏不可能な作品もレパートリーとしている。2005年、next mushroom promotionとしてサントリー音楽財団より佐治敬三賞を受賞。
 http://sun.ap.teacup.com/yashemmi/

松村多嘉代

まつむら たかよ)Harp
 大阪生まれ。現在フリーランスハーピストとして、ソロ、オーケストラ、妹・松村衣里とのハープデュオ“ファルファーレ”等で活躍。ヨーロッパやオーストラリア、韓国でも演奏活動をしており、テレビやFMラジオにも多数出演している。
 http://gold.ap.teacup.com/farfalle/


ご案内

 辺見さんのヴァイオリンは、ますます先鋭化しています。特に近年の現代音楽への傾倒は強くなり、作品を表現する技術的な完成度が高くなっています。その方法論は、多分自己完結しているのではないかと感じさせるものです。サロンと言う日常的な空間に、現代音楽と呼ばれる純音楽を持ち込むことは、慣れない聴衆にとって異次元を感じるものです。そんな中で歌謡性の高い曲を並べながら、知らず知らず現代音楽に誘なってしまう見事さは、脱帽のほかありません。
 辺見氏は数年前から、ハープとのコンビネーションをX〔iksa〕イクサと呼び、現代社会に挑む「戦」をしかけて来ています。そして無調の現代音楽の語法を携えた新作を発表し続けています。また、既成の名曲を新しい編曲で現代の空気感を表現し、今の時代の反映として音楽を再構成する仕事も見事なものです。そして何よりも聴衆が心奪われるのは、超絶技巧で弾きとばしていくスピード感の爽快さでしょうか。アンコールピースと呼ばれる小品の、ほほを撫でて流れるメロディーの放物線が何とも魅力的なのです。そんな音楽に陶酔する時間の流れの中で、何時始まるともなく終わるとも分からない風になびく草原の波のように新しい音楽を聴かされれば、誰だって「いちころ」です。辺見氏の魔法に心を委ね、重力を失う快感を楽しんでいただきたいと思います。