眞家利恵ヴァイオリン・ヴィオラ・コンサート
Piano 井上絵里
2011年6月10日(金)19:30〜 倉吉交流プラザ 700円
第一部
ブラームス作曲ヴァイオリンソナタ第1番ト長調
第1番は1879年夏に、オーストリア南部のヴェルダー湖畔の避暑地ペルチャハで作曲・完成された。全3楽章の構成で、演奏時間は約27分。
第1楽章 ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポはト長調、やや凝った複雑なソナタ形式による楽章。軽やかで抒情的な雰囲気をもつ第1主題と、より活気のある第2主題で展開される。
第2楽章 アダージョは変ホ長調、三部形式で叙情と哀愁が入り交じる緩徐楽章。民謡風の旋律がピアノで奏され、ヴァイオリンが加わって哀愁を歌う。第1部は葬送行進曲風の調べで、この旋律は第3部で再び回帰する。
第3楽章 アレグロ・モルト・モデラートはト短調−ト長調、歌曲「雨の歌」と「余韻」に基づく旋律を主題としたロンド。主題は第1楽章の第1主題と関連があり、また第2エピソードとして第2楽章の主題を用いるなど、全曲を主題の上で統一している。
第二部
ブラームス作曲ヴィオラソナタ第1番ヘ短調
2つのクラリネットソナタ(第1番ヘ短調、第2番変ホ長調)はヨハネス・ブラームスによって1894年に作曲された。のちに作曲者自身によってヴィオラ用に編曲され、今日では、クラリネット版、ヴィオラ版ともによく演奏される。
ヴィオラ版:この曲は、オリジナルのクラリネット版の作曲後(1895年) にヴィオラへの編曲が作曲者自身によって行われている。ヴィオラパートには、クラリネットでは演奏不可能な三重音による装飾音符や、一部(第2番第2楽章 中間部後半)に重音箇所が付加されているほかは、ほぼクラリネットと同じ旋律のままとなっている。ピアノパートはもとのクラリネット版とほぼ同じである。 このヴィオラ版について、自己批判の強いブラームスは作曲者自身が編曲したにもかかわらず、ヨアヒムへの書簡には「不器用で不満足なもの」と書いている。 それでも、このヴィオラ版はヴィオラ奏者にとっては貴重なレパートリーであり、今日ではブラームスの「ヴィオラソナタ」として著名で、演奏機会も多い。
プロフィール
眞家利恵
(しんか りえ) Violin
東京生まれ。東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒、東京芸術大学音楽学部卒、東京芸術大学修士課程修了。ヴァイオリン、ヴィオラを兎束俊之、百武由紀、故白尾偕子、深井碵章、タッソー・アダモプロス、タベア・ツイマーマンに師事。在学中よりNHK交響楽団をはじめ多数のオーケストラ、室内楽、ソロ活動に幅広く参加。オーケストラアンサンブル金沢に在籍。国立音楽大学、フェリス女学院で後進の指導にもあたる。現在は米子市に在住しヴァイオリン、ヴィオラ個人指導。ヤマハパルス米子楽器社ヴァイオリン、ヴィオラ講師。鳥取県立米子東高校弦楽部講師。島根県立松江北高校弦楽同好会講師。いずも音楽コンクール弦楽器部門審査員。米子ジュニア・ストリングオーケストラ、米子ユースオーケストラ指導部員。
井上絵里
(いのうえ えり)Piano
島根大学教育学部生涯学習課程音楽芸術コース卒業。岡山大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。これまでにピアノを新田敦子、別所照子、長岡功の諸氏に師事。現在、島根総合福祉専門学校非常勤講師。ピアノ個人指導。「米子ユースオーケストラ演奏会」ストリングジュニアのピアノ伴奏などを務める。
ご案内
眞家利恵さんのヴァイオリンに初めて出会ったのは2007年の山陰の名手たちコンサートだったと思います。その時の印象は、とても深い音楽を演奏される方だと思いました。その演奏姿勢を見て、プロで生きてこられた壮絶な営みの中でしか生まれえない慄然とした緊張感を醸し出していたのです。その後も、聴衆に媚びないプログラムで私たちを魅了してきました。そして昨年のアザレアのまち音楽祭で、本来専門としておられるビオラでテレマンを演奏され、全く新しい世界を見せていただきました。アンサンブルのヴィオラは、ハーモニーの中間音を担当するもの、と言うぐらいのレベルでしか知識のない聴衆にとって、ソロ楽器として初めて体験するものだったのです。ヴァイオリンに比べて、一回り大きなヴィオラですが、その表情はまるで違います。オペラで言えば、バリトンが演じる性格俳優のような、複雑な心理劇を演じて見せる楽器なのです。眞家さんのヴィオラを聴いて、ヴァイオリンで見せた意志の強さ、多少強引ともいえる音楽作りの迫力が理解できるものでした。そして今年は、ブラームスのヴァイオリンとヴィオラのソナタを一部・二部で聴くことができます。
音楽を本当に深いところで鑑賞したいとお考えの皆さんには、聞き逃せない特別なコンサートになるものと期待しています。