【鶴崎千晴ソプラノ・コンサート】
Piano
兼田恵理子
2010年6月8日(火)19:30 倉吉交流プラザ 700円
第1部
「5つの歌」より(アルマ・マーラー作曲)
アルマ・マーラーの歌曲は、大胆な不協和音を用いるところが夫に似ていると言われる。メロディは決然とした流れを感じさせる明快さがある。第1曲「静かな町」で強調されるD−Es−C(レ・ミ♭・ド)の音型、また、イ長調の第五音で尻切れトンボに終わってしまう第3曲「生暖かい夏の夜」。第4曲「あなたのそばではくつろげる」が最も親しみやすいメロディで書かれているように感じられる。第5曲「私は花のまわりをさまよう」は、歌もピアノも盛り上がり、最後はC(ド)一音で表現し、孤独に終わるよう感じさせる。
@静かな街(デーメル作詞)
A父さんの庭で(ハルトレーベン作詞)
Bなま温かい夏の夜(ファルケ作詞)
Cあなたのそば居ると(リルケ)
D私は花の下をさまよう(ハイネ作詞)
Eセレナード(アドルフ・フォン・シャック作詞/リヒャルト・シュトラウス作曲)
F万霊節(ヘルマン・フォン・ギルム作詞/リヒャルト・シュトラウス作曲)
G献呈(ヘルマン・フォン・ギルム作詞/リヒャルト・シュトラウス作曲)
R.シュトラウスの歌曲は、華麗で人を酔わせずにはおかない魅惑の歌だと言われる。
第2部
@夏は来ぬ(佐佐木信綱作詞/小山作之助作曲)
A海(文部省唱歌)
B村のかじ屋(文部省唱歌)
C冬の夜(文部省唱歌)
D冬景色(文部省唱歌)
Eおぼろ月夜(高野辰之作詞/岡野貞一作曲)
Fこいのぼり(文部省唱歌)
G恋のかくれんぼ(谷川俊太郎作詞/武満徹作曲)
H○と△の歌(武満徹作詞・作曲)
IMIYOTA(谷川俊太郎作詞/武満徹作曲)
J死んだ男の残したものは(谷川俊太郎作詞/武満徹作曲)
Kめぐり逢い(荒木一郎作詞/武満徹作曲)
プロフィール
鶴崎千晴(つるさき ちはる)Soprano
武蔵野音楽大学声楽科卒業。声楽を森原紀美子,藤田みどり,佐伯真弥子,平野弘子の各氏に師事。ジョイント・コンサート,ソロリサイタルほか,鳥取オペラ協会公演「フィガロの結婚」(伯爵夫人・マルチェリーナ)、「アマールと夜の訪問者」(母親),ラクゴペラ「ドン・ジョヴァンニ」(ドンナ・エルヴィラ)、イソップオペラ(よいきこり)に出演。山陰の名手たちコンサート出演。アザレアのまち音楽祭参加。コールやまびこ指導者。鳥取オペラ協会理事。
兼田恵理子(かねだ えりこ)
Piano
武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。新田恵理子,コッホ・幸子の各氏に師事。アザレアのまち音楽祭においてはアザレア室内オーケストラと共演の他,ソロリサイタル等で参加している。現在,後進の指導にあたるとともに,声楽,器楽の伴奏者として各地で演奏活動を行っている。倉吉市在住。鳥取オペラ協会ピアニスト。
ディレクターのコンサート案内
鶴崎さんの近年の活躍には目を見張るものがあります。アザレアのまち音楽祭の常連演奏家として、毎年新鮮な取り組みで聴衆を沸かせています。ピアニストに、鳥取オペラ協会で活躍する兼田恵理子氏を得て、最高のアンサンブルを作り出しています。選曲の素晴らしさも然ることながら、ピアノの上手さとボリュームにゆとりを持ったベストパートナーとの演奏は、聴くものをトリップさせる力があります。
今年は、マーラーの奥さんで作曲家のアルマの作品が冒頭を飾ります。滅多に聴くことの無い作品であり、楽しみです。アルマはあまりにも有名で偉大な夫の陰に隠れてしまい、注目されませんが、夫に負けず劣らずの新しい作曲の試みをやったりしています。私の個人的な感想では、シューマンがハイネの詩に曲をつけているものより、ハイネの詩を超えた表現として音楽作りしているアルマの方が優れていると感じる時があります。もしかしたら、昔見たケン・ラッセル監督の映画「マーラー」の影響かもしれません。そんな意味で、まずは楽しみにしています。
二部では文部省唱歌と武満徹の歌曲ですが、これは、完全にサロンを意識した選曲であり、「癒やし」の空間を作り出してくれるかもしれません。武満の音楽は、いつも単純で特別変わった仕掛けは無いのに、他の曲と何かが違うという液化した空気のゆれを感じます。そして液体と気体の間を絶え間なく行き来する妙な気分にしてくれます。「死んだ男の残したものは」などは、平凡に歌えばそれだけのものですが、過去と現在を行き来する空気の流れを作り出せば、とんでもなく深いプルシャンブルーの空気を包み込めます。いつも武満の作品に対峙する時、死の前年にお会いした時の「何事も無くまっすぐに立ち尽くされていた姿」を思い出します。ベテランの鶴崎さんが、どんな佇まいの武満を見せてくれるかとても楽しみです。