【ミニ・リサイタル・リレーコンサート】
2010年5月30日(日)11:00 倉吉交流プラザ 700円
11:00
@岩本理恵ピアノ・リサイタル
第1部
@きらきらぼし変奏曲「ママ、聴いてちょうだい」ハ長調K.
265 (モーツァルト作曲)
この変奏曲(12
Variationen über ein französisches Lied “Ah,
vous dirai-je, maman” )は、モーツァルトが1778年に作曲したピアノ曲。原題を直訳すると、「フランスの歌曲『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』による12の変奏曲」となる。当時フランスで流行していた恋の歌による変奏曲。この旋律は後に恋の歌ではなく童謡『きらきら星』として知られるようになったため、日本では『きらきら星変奏曲』とも呼ばれるようになった。しかし、『きらきら星』の歌詞が書かれたのはモーツァルトの死後のことで、モーツァルトのイメージとしては『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』の恋歌であったようだ。
Aノクターン 第13番 ハ短調Op.48-1(ショパン作曲)
ノクターン全21曲の中の最高傑作と言われる。3部形式(ABA')で書かれているが、その構成は、従来の静‐動‐静という単純な構成とは異なっている。この曲の最大の聴き所は、主部の再現部A'である。ここでは静かな、しかも美しい伴奏に支えられて、より細かな和声の変化が彩りを添え、極上のハーモニーを作り出す。曲は、こみ上げるような情感とともに一気に最高潮に達し、その高々と鳴る痛切な和音の連続に、聴く者全てを惹きつける。ショパンの創作の中でも最高傑作の一つに数えてもよい曲であろう。
Bバラード 第1番 ト短調Op.23
(ショパン作曲)
ソナタ形式の変形で書かれた大曲。この曲は、極めて人気の高い作品ですが、作曲当時、これを聴いたシューマンは「優れた作品ではあるが、彼の作品の中では全く天才的、独創的なものではない」と批評していたりする。その理由が何であったかは分からないが、いきなり4/4拍子の変イ長調のユニゾンで始まる序奏は、6/4拍子・ト短調の第一主題との関連性が薄いなど、劇的な性格を強く印象付けたりしている。続くト短調の第一主題に入る直前で、左手がD,G,Es(レ・ソ・ミ♭)という不協和音を押さえる箇所があるが、このミ♭の音がいろいろ取りざたされている。日本では表記ミス説を採って「レ・ソ・レ」の表記を採用していたりする。この曲が極めて人気の高い作品なのは、その華麗な後半部のためであろう。技術的にも難しく、ショパンの粋なピアニズムがふんだんに盛り込まれている。そして最後の劇的なコーダは、この作品の最大の聴かせどころであり、技術的な難所である。ピアニストにとっては、弾いていて快感に浸れる一瞬であり、聴衆も満足感を味わえる作品なのだ。
第2部
@ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調Op.36(1931年改訂版)(ラフマニノフ作曲)
第1楽章Allegro
agitato - Meno mosso
第2楽章Non
allegro - Lento - Piu mosso
第3楽章Allegro
molto - Poco meno mosso
この作品は3つの楽章からなるが、これらは切れ目なく演奏される。第1楽章の冒頭に提示される主題は、循環主題として第2楽章、第3楽章にも現れ、作品全体の統一感をよりいっそう強めている。この作品は1913年に書かれたが、1931年にはラフマニノフ自身による改訂が行われ、当初26分であった演奏時間は、彼自身の言葉によると、「ショパンのソナタは19分で、それだけですべてを表現しつくしている」ので、大幅なカットにより19分に短縮された。また、同時に多くの声部が動く部分が修正され、よりシンプルなテクスチュアへと変更されている。
プロフィール
岩本理恵(いわもとりえ)Piano
鳥取県出身。後藤ヶ丘中学校、松徳女学院高等学校文Tコース卒業。2001年国立音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。卒業演奏会出演。卒業後、都内でピアノ講師を務める。2004年から2006年までハンガリー国立リスト音楽院にて研鑽を積む。学内のホールにて初リサイタルを開催。留学中2005年にはイタリア・パドヴァ国際音楽コンクールにてピアノF部門第2位受賞。帰国後再び講師を務める傍ら、演奏活動も始める。2006年ビッグシップ小ホール(鳥取県米子市)と大泉学園ゆめりあホール(東京都練馬区)にて、留学記念リサイタルを開催。2007年には韓国にてアジア国際ピアノサマーアカデミーフェスティバルに参加し、ピアノソロ部門に加えコンチェルト部門で金賞受賞。受賞者コンサートにてポーランドの室内合奏団と共演。2008年より米子在住。伴奏や指導者として務める傍ら現在1歳の息子の育児奮闘中。これまでにピアノを星野まり子、加藤一郎、西川秀人、池澤幹男、ジョルジュ・ナードルの各氏に師事。
13:00 A吉田明雄ヴァイオリン・リサイタル
Piano蓼沼恵美子
@クライスラー小品集
クライスラーは,20世紀前半を代表するヴァイオリニスト兼作曲家。彼の作品はヴァイオリン・リサイタルのアンコールとして演奏される機会が非常に多い人気曲ばかりである。クライスラーの曲には、3つのタイプに分類されるといわれます。「ウィーン民謡風の曲
」としては、「愛の悲しみ」を代表とする一連の作品。「『〜の主題による』と編曲を装ったタイトルをつけたオリジナルの作品
」は、前奏曲とアレグロ(プニャーニの形式による)に代表されるものがある。そして「ヴァイオリン用の編曲作品」は、今回のプログラムである。
(1)ルイ13世の歌とパバーヌ
(2)シチリアーノとリゴードン
(3)シンコペーション
(4)ラ・カンパネラ
Aヴァイオリンソナタ イ長調 (フランク作曲)
ベルギー出身の作曲家、フランクが1886年に作曲したヴァイオリンとピアノのためのソナタ。フランス系のヴァイオリン・ソナタの最高傑作といわれている。4楽章からなり、いくつかの動機を基にして全曲を統一する循環形式(フランクが得意とした作曲技法)で作曲されている。また、このソナタはピアノとヴァイオリンの音楽的内容が対等であり、ピアノはヴァイオリンの伴奏ではなく、ヴァイオリンも単なる独奏楽器ではなく、ピアノとヴァイオリンの二重奏曲と呼ぶべき大曲である。
プロフィール
吉田明雄(よしだあきお)Vn
鳥取大学医学部卒業。鳥取大学医学部第一内科助教授退職後、湯梨浜町泊にて吉田医院開業。その後の業績を認められ、鳥取大学大学院再生医療分野特任教授、自治医科大学非常勤講師就任。開業医として地域医療を行い同時に特任教授として研究教育活動を行う。
音楽分野においてはミンクス室内オーケストラ代表、鳥取県オペラ協会副会長としての活動に対し県教育長賞を受賞。倉吉ストリングオーケストラ、鳥取大学フィルハーモニー管弦楽団、米子管弦楽団、県民による第九オーケストラなどのコンサートマスターを歴任。ミンクス、アザレア室内オーケストラ、コンサートマスター。鳥取県の音楽家たち出演。西日本医科オーケストラとブルッフの、ミンクス室内オーケストラとメンデルスゾーンの、鳥取大学室内管弦楽団とチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を共演。これまでにバイオリンを山本喜三、山本弓子、山田衛生、七澤清貴、平井誠、釈伸司、澤和樹、各氏に師事。
蓼沼恵美子(たでぬまえみこ)Piano
堀江孝子、林美奈子、田村宏各氏に師事。東京芸術大学附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学卒業。「安宅賞」受賞。同大学院修了後、ロンドンに留学し、マリア・クルチョ女史に師事。
1983年、ミュンヘン国際コンクール、ヴィオリン・ピアノ二重奏部門で第3位入賞。'84年、東京にてソロデビューリサイタルを開催。'96年には、ヴァイオリンの澤和樹とのデュオ結成20周年を記念する連続リサイタルを国内主要都市およびロンドン、ミュンヘンでも開催し、好評を得る。2003年3月、東京、熊本にてソロ・リサイタルを開催。9月、ドイツのヘンシェル弦楽四重奏団とハンブルクを始め、北ドイツ各地で共演し高く評価された。これまでに、ジョージ・パウク、ペーター・ダム、ダンカン・マクティア、アマデウス弦楽四重奏団メンバー等、著名アーティストと多数共演、高い信頼を得ている。フィンランドのクフモ音楽祭、イギリスの湖水地方音楽祭、アメリカのボウドイン音楽祭、アイルランドのウェスト・コーク音楽祭など、国内外の音楽祭に招聘されるほか、NHK-FM、BBC等にも出演。2004年には、妹、蓼沼明美とピアノデュオによるリサイタルを開催し、好評を得る。’06年にはCD「姉妹デュオによる珠玉の連弾」(アート・ユニオン)がリリースされる。
現在、吉祥女子高等学校芸術コース、桐朋学園芸術短期大学講師。
15:00
B米澤幸アルト・リサイタル
Piano
稲毛麻紀
第1部
@陽はすでにガンジス川から(戸口幸策訳詩/スカルラッティ作曲)
A私を燃え立たせるあの炎(戸口幸策訳詩/マルチェッロ作曲)
B歌の調べのように(ケシウス・アルマース作詞・小林一夫訳詩/ブラームス作曲)
Cむなしいセレナーデ(ライン地方民謡・小林一夫訳詩/ブラームス作曲)
D永遠の愛(J.ヴェンツィヒ作詞・小林一夫訳詩/ブラームス作曲)
第2部
@浜辺の歌(江間章子作詞/中田喜直作曲)
A砂山(北原白秋作詞/中山晋平作曲)
B椰子の実(林古渓作詞/成田為三作曲)
C三月のうた(谷川俊太郎作詞/武満徹作曲)
D島へ(井沢満作詞/武満徹作曲)
E昨日のしみ(谷川俊太郎作詞/武満徹作曲)
Fめぐり逢い(荒木一郎作詞/武満徹作曲)
プロフィール
米澤幸(よねざわさち)Alt
島根県立島根女子短大卒業。声楽を平野弘子氏に師事。「子うさぎましろのお話」「河童譚」「フィガロの結婚」「魔笛」「コシ・ファン・トゥッテ」「イソップオペラ三部作」等に出演。現在、山陰合同銀行倉吉支店勤務。鳥取オペラ協会会員。
稲毛麻紀(いなげまき)Piano
武蔵野音楽大学器楽科ピアノ専攻卒業後、お茶の水女子大大学院ピアノ演奏学講座修了。ピアノを新田恵理子、堺康馬、A・ウェーバージンケ、西川秀人の各氏に、伴奏法を吉田征夫、浅井道子の各氏に師事。これまで、アザレアのまち音楽祭のサロンコンサートやオープニング・コンサートのピアノ・コンチェルト等に出演。現在、わらべ館童謡唱歌推進委員、鳥取短期大学非常勤講師を務める。こーらす萌の会、コール・ウィンドミル、鳥取オペラ協会ピアニスト。
17:00 C合唱団こさじリサイタル
Piano稲毛麻紀
第1部
@いっしょに(くどうなおこ作詞/木下牧子作曲)
Aロマンチストの豚(やなせたかし/木下牧子作曲)
B夢みたものは(立原道造/木下牧子作曲)
CAve Maria Nr.3(ミシュキニス作曲)
Dカンターテ・ドミノ(ミシュキニス作曲)
第2部
@混声合唱とピアノための組曲「ある真夜中に」より(瀬戸内寂聴作詞/千原英喜作曲)
1 愛から悩みが生まれ
2 この星に生まれて
3 寂庵の祈り
4 ある真夜中に
この曲は、女性を「花びら」、男性を「雪」に例えて、それぞれの愛を歌った曲である。「花びら」の1番は女声が主な主旋律、「雪」の2番は男声が主な主旋律となっている。曲の終盤では男声と女声が合わさり、クライマックスに繋がっていく。伴奏の特徴として、男女の切ない気持ちや心臓の鼓動を表すように不協和音が多く使われている。転調の回数が11回とかなり多い。
瀬戸内寂聴は、「究極の愛のかたちとは『プラトニック・ラブ(無償の愛)』」と発言しており、これは過去に恋愛において様々な経験をした瀬戸内だからこそ見つけた答えといえる。詩中では「私はここにいます(いる)〜たどりつけなくても」という表現に凝縮されている。
プロフィール
合唱団こさじ
2006年に北栄町で結成し今年で5年目を迎えた混声合唱団です。毎週水曜日の夜、より心地よいハーモニーを求め県内各地から団員が集まり楽しく練習しています。ゆっくりではありますが、常に前に向かって歩み進んでいます。(http://teaspoon.rakurakuhp.net)
〔合唱団メンバー〕 指揮/村岡宏朗
Sp/中嶋絵美・松本三千衣 Alt/小原葉子・隅啓子
Tn/幸本一章・中村哲康 Bs/小原貴志・岩間栄次
ディレクターのコンサート案内
昨年度から始めたミニ・リサイタル・リレーコンサートは、アザレアのまち音楽祭に未だ登場していない演奏家を紹介するミニ・リサイタルなのです。
今回の最初に登場するのは、米子市在住の「岩本理恵さん」です。この方はピアニストの実行委員から推薦があり、招聘を決定しましたが、旧姓を聞いてびっくりしました。旧姓「坂本理恵さん」であり、カウベル・ピアノコンクールで常に入賞していた方です。その後、鳥取県ピアノオーディションで再会し、その成長ぶりに安堵したものです。その後の経歴をみると、順調にキャリアを積み上げ、ピアニストとしての道を歩んでおられるようで、今回のリサイタルが楽しみです。
次に登場する方は、皆さんよくご存知のアザレア室内オーケストラの主宰者でありコンサートマスターの「吉田明雄さん」です。ソロコンサートは、今回が初めてとのことであり、大変な意気込みです。本業は鳥取大学医学部の特任教授であり、湯梨浜町の泊で江戸時代から続く吉田医院の院長さんです。ですから、完全なアマチュアなのですが、心意気にプロもアマも無く、音楽の使徒としての姿勢を貫いておられます。50云歳の現在でも、東京芸大の澤和樹先生のレッスンを受け続けていたりします。今回の伴奏は、澤先生の奥様(著名なピアニスト)が吉田さんのコンサートだということで駆けつけてくださり、演奏してくださいます。何とも贅沢なコンサートですが、吉田氏の音楽する喜びに溢れたホットな催しになるものと期待しています。
三番手は、吉田氏と同じ湯梨浜町の泊に在住のメゾ・ソプラノ「米澤幸さん」です。米澤さんのキャリアは長く、鳥取県の音楽シーンにずっと登場し続け、なくてはならない存在であるのに、アザレアのまち音楽祭には初登場です。米澤さんの存在に初めて気がついたのは、十数年前になると思います。米子市で開催されたモーツァルトのレクイエム公演で、ソリストをオーディションで決めたことがあります。その時、アルトのソリストとして起用され、見事な歌唱を訊かせていただいたのです。その後は、鳥取オペラ協会の会員として多くのオペラに出演し、その演技力の素晴らしさには定評があります。なんといっても十八番は、「フィガロの結婚」のマルチェリーナ役です。この人のオペラには、聴衆を魅了する何かを隠し持っているのかも知れないと、いつも感じています。今回の後半では、日本歌曲ばかりのプログラミングであり、声の特質とあいまって素晴らしいステージが期待されます。どうぞお楽しみください。
最後は、リサイタルと銘打ったコンサートでは珍しい「合唱団こさじ」の登場です。近年、アザレアのまち音楽祭のファイナル・コンサートに登場し、異彩を放った合唱団として注目していました。指揮を担当している村岡宏朗氏の繊細な感性は、他の合唱指揮者と一味違う独特の世界を持っているように思えました。特に無伴奏曲で見せる純正調の完璧な響きは、素晴らしいものです。倍音の中からハーモニーが生まれ、メロディーが紡ぎだされるという音楽誕生の瞬間に出会えるような、何ともいえない感興を覚えさせるのです。コンクール等での、一曲に集中して作り出す、よそ行きの音楽ではなく、メンバーひとり一人が互いの音を包み合うような、あわせあう(あいしあう)ような音楽(フィジカル)が輝くのです。合唱の本当の醍醐味を垣間見せてくれる「合唱団こさじ」に、ご期待ください。