2010年5月15日(土)19:30 倉吉交流プラザ 700円
第1部 武満徹の歌曲
@小さな部屋で(川路明作詞)
A小さな空(武満徹作詞)
Bうたうだけ(谷川俊太郎作詞)
C三月のうた(谷川俊太郎作詞)
D雪(瀬木慎一作詞)
E素晴らしい悪女(永田文夫作詞)
F燃える秋(五木寛之作詞)
Gワルツ(岩淵達治作詞)
武満徹は、日本音楽史上最も重要な作曲家の一人だと言われている。1930年東京に生まれる。音楽関係の学校には行かず、独学。しかし、正確には1948年より清瀬保二に師事し、50年には清瀬保二や松平頼則らの「新作曲派グループ」に入会する。処女作「2つのレント」を発表するが、音楽評論家「山根銀二」に「音楽以前」と酷評されたりする。その後、57年、「弦楽のためのレクイエム」が、ストラヴィンスキーの耳にとまり、「あの男がこんな曲を書くとは」という絶賛を受け、武満の名前は一躍世界中に鳴り響いた。晩年も作風を変えつつも作曲も活発であったが、96年、66歳の若さで亡くなった。
武満の歌曲は、山田耕筰らの歌曲にみられる素朴で美しい感覚を、現代に生き返らせたとも言われている。武満ら現代音楽の作曲家が現れるまで、多々見られた臭い表現はしないが、斜に構えたスタンスの歌詞とあいまって、そのメロディーには素晴らしいものがある。
第2部
@ムーン・リヴァー(Johnny
Mercer作詞/Henry
Mancini作曲)
Aある愛の詩(Carl
Sigman作詞/Francis
Lai作曲)
BBella
Notte(Peggy
Lee作詞/Sonny
Burke作曲)
C河は呼んでいる(Guy
Beart作詞・作曲/水野汀子訳詞)
Dドミノ(Jacques
Plante作詞/Louis
Ferrari作曲)
E私の回転木馬(Jean
Constantin作詞/Norbert
Glanzberg作曲)
F水に流して(Michel
Vaucaire作詞/Charles
Dumont作曲)
Gばら色の人生(Edith
Piaf作詞/Pierre
Louiguy作曲)
プロフィール
光長真理恵(みつなが まりえ)
Soprano
同志社女子大学学芸学部音楽学科卒業。声楽を森山俊雄、今城淳行、内藤千津子の各氏に師事。京都音楽家クラブ新人演奏会、同大学頌啓会コンサート、鳥取県の音楽家たちコンサートに出演。アザレアのまち音楽祭、境港シンフォニーガーデン等では毎年出演し、日本歌曲、フランス歌曲、シャンソン等、幅広いレパートリーで好評を得ている。中浜コーラス、思ひ出を歌う会、福生西ドレミファサークルを指導。女声合唱団・沙羅に所属。西部演奏家クラブ会員。
面谷真理子(おもたに
まりこ)Piano
神戸女学院大学音楽学部(ピアノ専攻)卒業。大阪フィルのメンバーとモーツァルト・ピアノ協奏曲を共演。その他数回のジョイント・リサイタル、高垣純作品発表リサイタル等にて演奏。ザルツブルグ国際アカデミーに参加。境港市に在住し、後進の指導に当たっている。ピアノの会「クレス」代表。
歌と言うものは、歌手自身の生き様や精神年齢・肉体年齢がもろに反映するものです。ですから、人間としてどう生きるのかが問われるものです。20年以上前のことになりますが、私が敬愛してやまない境港市在住の舞台人「角本豊氏」に、素晴らしい歌手を紹介したいと誘われて、光長真理恵さんのコンサートを聴いたのです。そのコンサートは、境港市の「海とくらしの史料館」の中庭で催されていたシャンソン・コンサートだったのです。シャンソンは、イブ・モンタンに熱中した世代ですから、地域在住の歌手だからと物見遊山だったのでしょう。ところが、最初の一曲を聴いて、脳天をガツンとやられてしまうほどの強い衝撃を受けたのです。巧いとか、凄いとか言う次元を超えた本物の音楽の力に溢れていたのです。早速、翌年からアザレアのまち音楽祭に招聘し、シャンソン・コンサートと銘打っていましたが、現在ではクラシックを中心とするプログラムに移行して、ソプラノ・コンサートの名称になっています。
光長真理恵さんの音楽の素晴らしさは、アカデミックな教育で培われた表現テクニックが、たがうことなく使われ、表現あっての技術と言う王道を歩んでおられることです。声と言う肉体に支えられて発生される音楽が、歌手という固体を離れて自然な響きとしてホールの空気を揺するのです。このような歌唱が出来る方は稀です。若くて生き生きした声は沢山ありますが、聴く者の心の襞に語りかけ、その声の美しさ、語られる言葉たちの飛翔する姿に見とれさせる歌手は、そうそう居るものではありません。若き歌い手たちに、歌うとは「訴ったえる」ことだと範を示す歌手だといつも肝に銘じています。こんな凄い歌手が、鳥取県に在住していることに感動しています。
今回は一部で、武満徹の歌曲を聴かせていただけます。まさに武満の清新でアイロニーに溢れた音楽は、光長真理恵さんの真骨頂を聴かせていただけることでしょう。そして二部は、ポピュラーな音楽を、磨き鍛えて、美しい凛々しさを携えたメロディーを聴かせてくれるでしょう。