アザレア・サロン・オペラ
鳥取オペラ協会自主公演〔サロン・オペラとトーク〕
2009年6月24日(水)19:30〜 倉吉交流プラザ 一般1,500円 大学生以下1,000円
〔1〕オペラ・トーク/司会=計羽孝之
〔2〕オペラ『バスティアンとバスティエンヌ』(モーツァルト)
出演/佐々木まゆみ
(バスティエンヌ)・小谷弘幸 (バスティアン)・山田康之(コラス) 指揮・演出/西岡千秋 ピアノ/三好芳子
解説
ご存知ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜91)の4番目の歌劇です。全1幕7場、登場人物は羊飼いの少年バスティアン、そのガールフレンドのバスティエンヌ、2人を見守る大人コラスの3人のみで、物語はいわゆる定石どおり、幼い2人のいたって素朴なラブ・ストーリー(約40分)。しかもこの2人が色々一生懸命に悩んでいても、コラスおじいさんが二言三言いえばわりと安直に納得してしまうあたり、何とも可愛らしいものです。このオペラを作曲していた当時のモーツァルトは、実にまだ12歳…やはりこの手の、異性に対する憧れが芽生えていた年頃だったのです。
初演
1768年10月、フランツ・アントン・メスマー医師邸(ウィーン)
設定
17世紀頃、コルシカ島
登場人物
バスティエンヌ…羊飼いの娘(S)
バスティアン…バスティエンヌの恋人(T)
コラス…魔法を使うと自称する村の老占い師(B)
あらすじ
全1幕 野原の見渡せる村のはずれ
コルシカ島のバスティアの村では、羊飼いの娘バスティエンヌが、恋人のバスティアンの浮気に心を痛めていた。そこに魔法使いのコラスが通りかかり、彼女の悩みを聞いてやり、男は少々冷たくあしらうものだと知恵を授ける。折よくそこに現れたバスティアン。しかし、コラスはバスティエンヌを隠しておいて、彼女が金持ちの男と結婚することになったと嘘を言う。浮気を反省し、バスティエンヌのもとに戻ろうとしていたバスティアンは大慌て。しかもそこに現れた恋人、バスティエンヌは、コラスの入れ知恵のおかげで、いつになく冷たい。これにはバスティアンも腹をたて、二人は意地を張り合う。しかし、いつしか互いの本心に気づき、手を取り合って結婚の約束をする。コラスは二人を祝福し、媒酌を務めることになる。
鑑賞のヒント
一般に、"バスティアンとバスティエンヌ"は、作曲したのが幼いモーツァルトであったという理由で、ともすれば子供の歌う、子供のためのオペラと思われがちです。しかし、ルソー、ファヴァールの原作をヴァイスケルンが翻訳したものをモーツァルトが作曲する過程をみると、その流れの中で18世紀ヨーロッパ社会の様々な出来事と密接に関わっていたことが分かります。
「フィガロの結婚」のテーマとなった辛らつな封建社会制度への批判や「コシ・ファン・トゥッテ」に登場する物知りな賢者の登場など、少し大げさに言えば、後のオペラへの伏線がすでにこの小さなオペラの中にしっかりと引かれている社会派の作品であるともいえるのではないでしょうか。
ソリスト・プロフィール
佐々木真由美(ささき まゆみ)
昭和音楽大学音楽学部声楽学科卒業、同大学音楽専攻科声楽学科首席修了。修了時に学長賞受賞。これまでに生原幸枝、越賀理恵、田野崎加代の各氏に師事。2002年、東成学園オペラ『夢遊病の娘』合唱出演、メサイア合唱出演。2003年鳥取県声楽オーディションにて審査員特別奨励賞受賞。2004年奈良にて「トスティに捧げる歌曲コンサート」出演、「鳥取県出身アーティストによるコンサート」出演、鳥取県総合芸術文化祭オペラ「ポラーノの広場」村人役。2005年鳥取オペラ協会ニューイヤーオペラガラコンサート出演。鳥取オペラ新人公演「バスティアンとバスティアンヌ」にてバスティアンヌ役を好演。2006年第二回声楽オーディションにて優秀賞受賞、アザレアのまち音楽祭ファイナルコンサート、鳥取オペラ公演「コシ・ファン・トゥッテ」合唱出演、山陰の名手たちコンサート出演、こどもの楽園コンサート出演。現在平野弘子氏に師事。鳥取オペラ協会会員。
小谷弘幸(こだに ひろゆき)Tn
国立音楽大学・声楽科卒業。声楽を常松喜恵子、高橋大海、田口興輔、アレン・ビアール各氏に師事。オペラでは、これまでに「椿姫」のガストン、「リゴレット」のボルサなどの役を務めたほか、声楽ソロ、宗教曲の合唱等、多くの演奏経験を積み、幅広い分野で活躍中。今回の「バスティアンとバスティエンヌ」は、2005年の公演に主演している。昨年の鳥取オペラ協会公演「イソップオペラ三部作」では旅人を演じた。現在、倉吉東高校に勤務。二期会準会員。シュトラーレンメンバー。鳥取オペラ協会会員。
山田康之(やまだ やすゆき)Br
鳥取大学教育学部卒業。西岡千秋氏に師事。
1996年、鳥取オペラ研究会公演「河童譚」「子うさぎましろのお話」に出演。1998年、アザレアのまち音楽祭バリトン・ソロコンサートに出演。オペラ出演はこれまで「コシ・ファン・トゥッテ」のグリエルモ役、「フィガロの結婚」では二度のタイトルロールを歌い、「魔笛」ではパパゲーノ役をこなした。国民文化祭とっとり2002オペラ「ポラーノの広場」公演においてテーモ役を歌い高い評価を得てきている。2005年は「アマールと夜の訪問者」でメルキオール役を歌い好評を博した。現在、倉吉市立上北条小学校に勤務。鳥取オペラ協会理事。
三好芳子(みよし よしこ)Piano
西岡千秋(にしおか ちあき)Director
武蔵野音楽大学声楽科卒業。同大学院声楽専攻修了。市田キヨ子、疋田生治郎の各氏に師事。数々のオペラ出演の他、リサイタルをはじめとする演奏活動を行っている。また、鳥取県内においては第九公演のソリストを務め、アザレアのまち音楽祭や山陰の名手たちコンサートなど常連演奏家として活躍。鳥取県内公演のオペラでは「電話」「コシ・ファン・トゥッテ」「フィガロの結婚」「魔笛」「ポラーノの広場」「ドン・ジョヴァンニ」「アマールと夜の訪問者」等に出演。鳥取オペラ協会の全ての公演をプロデュースしている。現在、鳥取大学地域学部附属芸術文化センター准教授。鳥取オペラ協会副会長。鳥取合唱連盟副理事長。
ご案内
アザレア・サロンオペラは、アザレアのまち音楽祭が鳥取オペラ協会とのフランチャイズによる取り組みです。昨年度の「電話」が第1回であり、今年度は第二回となります。本格的なオペラ公演は膨大な経費がかかるため、アザレアのまち音楽祭では、室内オペラを想定して作られた小さな作品を、継続して公演できればと願っています。
今回の『バスティアンとバスティエンヌ』(モーツァルト作曲)は、2005年に、若手育成のために倉吉BYホールで上演したキャストそのままに、その後の成長ぶりを見ていただこうと企画されたものです。主演する佐々木まゆみさん(ソプラノ)と小谷弘幸氏(テナー)とも、昨年の鳥取オペラ協会公演では、見事な歌いっぷりとその演技力に、抜群の成長を見せていました。同じ出し物を、幾度も繰り返す事こそ作品の表現力を高めますが、このオペラの再演は、その成長ぶりを見ていただくに相応しいものと思います。今回もまた、コラス役でベテランの山田康之氏が、ピアノの三好芳子氏と共に、この作品を格調高く仕上げていただけるものと期待しています。