倉吉 アザレアのまち音楽祭
山陰の名手たちコンサート


第13回 山陰の名手たちコンサート
ごあいさつ



 =芸術は個性 できることを磨こう!=




プラバホール芸術監督 長岡 愼

 10月21日の鳥取県中部地震に被災された方には心よりお見舞い申し上げます。
 この地震のため、倉吉公演は中止となりましたのでプラバでの合同公演といたします。
 ご了承を賜りますようお願い申し上げます。

 自分自身の感動を「他人」に伝えることが芸術への出発点。例えば美しい花を見て、ただ綺麗だったよ、というだけではなく、より個性的で本質を衝いた表現が芸術として価値を持つ。だから芸術はごく個人的に始まる。自分の表現、自分のできることを自身の中から探し出し、突き詰める。
 典型的なのはベートーヴェンの「ハイリゲンシュタットの遺書」にある。耳疾からピアニストよりは、作曲こそが自身の「使命」としたと解されている。自分の個性を突き詰めた使命を持つ者だけが、偉大な作曲家足り得るのだ。
 そこから生まれた作品に「命」を吹き込むのが演奏家の仕事。だからどの作曲家の何に感動し、リスペクトしたかが重要なのだ。それが演奏家の個性となる。
 先達の言葉として、とても有名なものがある。「演奏に正しいか間違っているかは無い。あるのは良いか悪いかだ」。
 良い演奏とは、生命力にあふれ、作品へのリスペクトが伴う個性的演奏である。
 しかしながら「○○ができなければ○○の演奏家とはいえない」などという考えに凝り固まって、いつまでも、いい大人が人前で、できないことをできるようにしたいと挑戦するは愚の骨頂。リスペクトも感動もない義務的演奏は、悪い演奏の典型。聴いていて辛(つら)くなる。
 尊重するべきは個性。できることが個性だから、やりたいことには執着しないがいい。
 サッカーをやりたかったのに、コーチに競泳を勧められ、リオ五輪800bリレーでメダルを取った江原騎士選手がいい例だ。
 不思議なことに、自分が簡単にできることには、意外と気が付かないし、出会えない。それは、何故かやりたくないことや、知らないことの方が多いからだ。
 ここが盲点。理由がないのに自身で禁止している。
 だから、やりたくないけどできることを探求するのだ。自由な広い心をもって、人のやらない、自分にできることを探し出し、突き詰めるのだ。「人の行く裏に道あり花の山」というではないか。ノーベル賞受賞が決まった大隅良典氏や、先日プラバでタップを踊りながら、トロンボーンの演奏をした清水真弓がそうであるように。
 でも必ず壁にぶち当たる。どうしたらブレークスルー出来るのだろう。その時は、あなたの個性を尊重してくれる友人の言葉に耳を傾け、そして内なる声に耳を澄ますのだ。モラルハラスメントでもって、あなたの個性を破壊する輩は無視するに限る。








 「音楽家のための自己啓発





アザレアのまち音楽祭 芸術監督 計羽孝之

 去る、10月21日、午後2時7分、鳥取県中部地区を震源とする地震に見舞われました。私たちの音楽活動拠点である「倉吉未来中心」が甚大な被害をこうむり、年内は使用不可となりました。そこで、プラバホールのご厚意で、鳥取県サイドの出演者との合同公演となりました。各地からのお見舞いに対し、深く感謝いたします。

 「自分自身の能力を高め、精神的な強い意思を持つ」ことは、音楽家に限らず誰だって求めているものです。特に音楽家は、専門知識と技能の修練は欠かすことが出来ません。そして、人間力を高めるために、具体的に様々な行動を起こしているのです。それは、読書であり、自分をレッスンに駆り立てることで、潜在意識を刺激し、新しい自分に変身し続けているのです。これは、音楽力のみでなく、「人生の質」を高めるためにも不可欠な要素なのです。そして普段の生活の中に自己啓発をいかに組み込むかが問題なのです。そして芸術家としての自制心をもってやるべきこととは何か?をしっかりと意識することが大切なのです。
 音楽家にとって大切なことは、やるべき事項を、毎日の生活の中に優先的に実行出来るかどうかです。それこそが自己啓発の成果を出すことにつながるわけです。重要だと思う事を意識し、積極的に取り組む姿勢が必要なのです。ハングリー精神は最大のチャンスなのです。心理的に苦しければ苦しいほど大きな可能性を秘めているものです。これが「行動の動機」なのです。何らかの苦境に立つことは素晴らしいチャンスだと思いましょう。
 もっとも有効な自己啓発は、コーチたる師匠を見つけることです。特に音楽家は、若いころより常にレッスンを受ける習慣を持っているはずです。ただ、忘れかけているのではと心配です。自立と過信は紙一重です。技術的な師匠も大事ですが、むしろ芸術的(精神的)な師を持つべきでしょう。その師とは、聴衆であり人生を真摯に生きる市井の人々かも知れません。
 更に自己啓発の時間を持つことが重要です。自己啓発は行動力の有無で決まります。「即行動」こそが、結果に導くのです。そして、しっかり実力をつけてこそ、継続的に素晴らしい音楽を作り出す仕組みを得ることになるのです。日々自分を磨いてください。音楽力と言う刃を研ぐ時間を確保しましょう。そうすることで、自分に足りないもの、自分の長所・短所に気づくのです。しかし、良質な知識を持たず、ただ、がむしゃらに行動してもだめです。知識は宝です。良質な情報こそが脳の肥やしになるのです。
 こうして生きることで、誰だって芸術家になるのです。人生と言う芸術を、素晴らしいものにできるのは、皆さんの自己啓発次第なのです。