倉吉 アザレアのまち音楽祭
小倉知子ソプラノ・コンサート

Piano 富士原 広美
2012年6月1日(金)19:30〜 倉吉交流プラザ 700円


 過去の演奏のご紹介
ソプラノ 小倉知子 (第29回アザレアのまち音楽祭2011リサイタルより)
♪ 歌曲集『リーダークライスO.p.39』より(シューマン作曲)異郷にて
 (wmaファイル 773KB 1分37秒)


第一部
@ 夏の思い出(江間章子作詞/中田喜直作曲)
『夏の思い出』は、1949年発表の日本の歌曲。江間章子作詞、中田喜直作曲。日本人の心をとらえる名曲。曲中に現れる尾瀬(おぜ)の人気は飛躍的に高まった。
A たんぽぽ (三好達治作詞/中田喜直)
明るいメロディによる可愛らしいたんぽぽの歌。
B すずしきうなじ(三好達治作詞/中田喜直作曲)
三好達治の詩による一連の歌曲群のひとつ。フォーレの手法を意識的に取り入れようとした作品で、作曲者自身は「これはフォーレ風のピアノ伴奏部が非常にやわらかくなめらかに演奏された上に、歌のメロディが静かに乗って流れる、という感じの曲である」と書いているという。心地よいアルペジオのたゆたいが印象に残る。
C あなたとわたし(堀内幸枝作詞/中田喜直作曲)
少し屈折した恋の気持ちを歌っている。
D 『良寛の二つの歌』より(良寛作詞/千原英喜作曲)
1. 手まり 2. 君や忘る道  良寛(りょうかん、宝暦8年10月2日〔1758年11月2日〕 - 天保2年1月6日〔1831年2月18日〕)は江戸時代後期の曹洞宗の僧侶、歌人、漢詩人、書家。彼が69歳の時に弟子入りしてきた29歳の貞心尼との間における相聞歌に作曲家、千原英喜が附曲した。
 「手まり」 は良寛と貞心尼のたわいのないやり取り。春到来の歓びを手まり遊びに込め、ポップな感覚で表現している。貞心尼が良寛の高名を知り初めて訪ねたのが1827年(文政10年)の夏。しかし、その時良寛は残念ながら留守だったので、貞心尼は「和歌」と「手作りの鞠」を残して帰った。それに対して良寛が返歌を返し、それに喜んだ貞心尼はその秋、再び良寛を訪ねた。その夜、二人は徹夜で話あったという。あくる日の別れる時、良寛が送った歌が【3.君や忘る道】の「またもこよ  しばの いおりを いとわずば・・・」である。その後も「歌」のやり取りがあったが、貞心尼が暫く来ないと、良寛は「きみや わするみちや・・」の歌を積極的に送る。繊細で透明感のある美しいバラードで歌われる。

1. 手まり
2. 君や忘る道
E かなしくなったときは(寺山修司作詞/大中恩作曲)
簡易な歌詞の中に、人生の様々な事を考えさせられる、心に迫る作品。
F トルコ桔梗(内山登美子作詞/大中恩作曲)
花の名前を知り過ぎている男性に、誰が花の名前を教えたの、とやきもちを焼く女性の歌。

第二部
@ カンタータBWV.199『私の心は血の海を漂う』より(J.S.Bach作曲)
Nr. 3 Rezitativ 「しかし神は私を憐れんで下さいます」 Nr. 4 Arie「深くうなだれ、悔いに満ちて」 この表題は罪の重荷に押しひしがれる魂を表しており、全8曲で構成されている。3曲目と4曲目は神の憐れみを信じ罪の許しを請う部分であり、アリアは深い安堵を表すかのように、弦楽器のおおらかな響きが印象的である。 3曲目は静かに重ねられる弦楽の音の連なりの上に、ソプラノが懺悔の歌をのせていく。 4曲目は アンダンテ、変ホ長調、ダ・カーポ形式。通奏低音の楔ののち、弦の調べがとうとうと流れていく。前曲までとは一転して朗らかな音楽であり、懺悔して安らかな心境が見事に現れている。弦楽とソプラノ独唱が融合した、究極の旋律美の世界。
A カンタータBWV.212『我らの新しいご領主に』より(J.S.Bach作曲)
Nr.14 Arie 「クラインチョッハーの村は、優しく甘く」 バッハが作曲した世俗カンタータの一つ。通称は「農民カンタータ」(Bauernkantate)。現存するバッハの世俗カンタータの中では最後の作品。全24曲からなり、当地の方言丸出しの明快なテキスト、民謡や流行歌のリズムやメロディをふんだんに取り込んだ音楽と、親しみやすい作品として人気がある。 第14曲はクラインチョハーの栄えを讃美する。全曲を通して初めてのダ・カーポをともなうアリアである。
B オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』より(W.A.Mozart作曲)
「男たち、まして兵士は」 フィオルディリージとドラベッラの姉妹の女中であるデスピーナは、恋人が戦争へ行ってしまったと嘆く姉妹に「男はほかにもいるでしょう」と「つまみ食い」を勧め、「男や兵士の貞節なんて」と歌う。
C コンサートアリアK.578「偉大な魂、高貴な心を」(W.A.Mozart作曲)
歌劇《ロッカ・アッズーラの二人の男爵》への挿入曲。
D オペラ『魔弾の射手』より(C.M.v.Weber作曲)
「姿凛々しい若者が」
 『魔弾の射手』(まだんのしゃしゅ、Der Freischutz)は、カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲した全3幕のオペラ。台本はヨハン・アウグスト・アーペル、フリードリヒ・ラウンの『怪談集』を元にヨハン・フリードリヒ・キーントが書いた。1821年6月18日にベルリンの王立劇場で初演された。
  【あらすじ】
 狩人のマックスは明日行われる射撃大会の予行演習をしていた。しかし彼の放つ弾は的を射抜くことができない。このままでは明日の結果は目に見えている。しかも恋人のアガーテの父・クーノーは、彼の明日の結果次第ではアガーテとの結婚を認めないといっている。狩人仲間のカスパールは、自信を失っているマックスにつけこみ、「深夜に人々から恐れられている狼谷へ来たら、勝つ方法を教えてやる」と言い、マックスを誘い出す。
 その夜、アガーテの部屋を訪れるマックスは、狼谷へ行くことを彼女に告げた後、狼谷に向かった。 その頃、カスパールは狼谷でマックスの命を引き換えに契約の延長と、7発中6発は自分の意図するところに必ず命中し、残りの1発は悪魔の望む箇所へ命中する魔弾を作るように、悪魔のザミエルに頼んだ。そこへマックスが狼谷へやってきて、カスパールと共にその魔弾を鋳造した。
 マックスの来訪を待っていたアガーテは、壁の絵が落ちて額に軽い怪我をする。アガーテの従姉妹エンヒェンは「姿凛々しい若者が」を歌い、慰めるのだった。
E オペラ『後宮からの誘拐』より(W.A.Mozart作曲)
「なんという喜び」
後宮に囚われたヒロイン・コンスタンツェと侍女のブロンデ。ブロンデはコンスタンツェの恋人ベルモンテが自分たちを救出に来たことを知って歓喜する。その喜びをコンスタンツェに知らせたいと歌う。


プロフィール

小倉 知子

(おぐら ともこ)Soprano
 鳥取市出身。鳥取大学大学院地域学研究科地域創造専攻地域文化分野(声楽研究室)修士課程を修了。西岡千秋氏の元で研鑽を積む。大学院在学中より、様々な演奏会への出演の他、オペラでは、「リゴレット」(抜粋)の小姓役、「ヘンゼルとグレーテル」(抜粋)のグレーテル役、また「フィガロの結婚」(全幕)で2度のバルバリーナ役、新倉健作曲のオペラ「窓?ウインドウズ?」(2011年初演)では、PASO役を好演する。その他に、楽器奏者との共演や、コンテンポラリーダンスとのコラボレーション作品の創作、若手作曲家の初演作品発表に携わるなど、積極的に活動を行っている。2010年、2011年にドイツへ短期留学し、声楽、リート解釈、教会音楽のレッスンを受講。最近は特に、カンタータやオラトリオ、ドイツリートなどの演奏研究にも力を入れている。第16回KOBE国際音楽コンクール本選出場。声楽を生原幸枝、西岡千秋、エドモント・ブラウンレスの各氏に師事。また、教会音楽をマウゼ・クリスティアンに学ぶ。鳥取オペラ協会理事。日本音楽芸術マネジメント学会正会員。

富士原 広美

(ふじはら ひろみ)Piano
 武蔵野音楽大学器楽学科ピアノ専攻卒業。ピアノを故・木村正子、故・青山三郎、重松聡、熊井千恵美、西川妙子の各氏に師事。2010年、マティアス・グレフシェスターク氏のリート・室内楽マスタークラスを受講。現在、各種伴奏ソロ活動するかたわら後進の指導にあたる。鳥取市少年少女合唱団専属ピアニスト。カノンの会、鳥取シンセオーケストラ会員。


ご案内

 小倉知子さんは、鳥取大学地域学部の西岡声楽研究室で学んだ若手歌手です。小倉さんの歌声を初めて聴かせていただいたのは2010年の夏に、リフレ・ミニコンサートでのことです。短いコンサートでしたがシューマンの歌曲やバッハのカンタータなどから数曲、そしてオペラよりスザンナのアリアを歌ったのです。しっかりしたアナリーゼと的確な表現力を持っており、じっくり聴いてみたいと、翌年(2011年)のアザレアのまち音楽祭ミニリサイタルリレーコンサートに出ていただきました。そこで見せたのは、自分の意志を音楽にのせる術を既に心得た、芸術家としての確固たるスタンスだったのです。好き嫌いで音楽を判断することが私たちは多いのです。しかし、音楽を自分の言葉として表現できるひとは稀であり、好みに合おうと合うまいと確実に表現者の意志を伝えようとする姿勢は、大きな説得力を持つものであり、聴く者を納得させてしまう魅力がありました。そこで、アザレアのまち音楽祭の本割でじっくり聴きたいとの要請が多くあり、今回のコンサートが実現したわけです。
 第一部では、中田喜直の歌曲など日本の歌に挑戦してくれます。日本人が日本の歌に挑戦と言うのはおかしな表現ですが、声楽を学んだ者にとっての日本語による歌唱は、とても難しいものです。ラテン語系の言語を持つ歌曲の発声法は、日本語と相いれない性格を持っています。ですから、その兼ね合いが難しいのです。そして二部では、お得意のバロック音楽とオペラアリアをたっぷりと聴かせていただけます。どうぞご期待ください。