倉吉 アザレアのまち音楽祭
吉田章一バリトン・コンサート

Piano 兼田恵理子
2011年6月4日(土)19:30〜 倉吉交流プラザ 700円


ハイネの詩による歌曲の夕べ

第一部
歌曲集「白鳥の歌」D957より シューベルト作曲  ハイネ作詩
 『白鳥の歌』は、フランツ・シューベルトによる遺作の歌曲集である。3人の詩人による14の歌曲からなる。以下の6曲は、ハイネの「歌の本」の中にある「帰郷」の詩を用いている。これまでのシューベルトの作品にみられなかった大胆な転調、言葉の分解、朗誦性など斬新な作曲技法が目立つ。シューベルト晩年の境地。

1 アトラス
2 彼女の肖像
3 漁師の娘
4 都会
5 海辺にて
6 影法師

メンデルスゾーン作曲      ハイネ作詩
 クリスティアン・ヨハン・ハインリヒ・ハイネ(1797-1856)は、ドイツの詩人、作家、ジャーナリスト。平易な表現によって書かれたハイネの詩は様々な作曲者から曲がつけられており、今日なお多くの人に親しまれている。1831年にフランスに移住。フランス在住時代には多くの著名な芸術家・作曲家と交流を持ち、メンデルスゾーンもその1人であった。

7 夜毎夢の中で
 Op.86-4。夜毎に僕は君を夢見る、という歌。

8 歌の翼に
 原詩はハイネの詩集「歌の本」の「抒情挿曲」に含まれている。メンデルスゾーンによる歌曲は1836年に出版された「6つの歌曲」Op. 34の2曲目で、8分の6拍子、変イ長調。メロディーは言うまでもなくきわめて甘く美しいもので、一度聴けば印象に残るほどである。

9 新しい愛
 リズミカルな曲。複雑さはなく、素直に聴き手の心に入ってくる。

第二部
歌曲集「詩人の恋」op.48  シューマン作曲    ハイネ作詩
1840年作曲。シューマンの、最も有名な歌曲集であるが、典型的ピアノ作曲家の彼らしく、ピアノ伴奏も声楽にも増して表現力豊かである。ハイネの詩集「歌の本」の中の「叙情的間奏曲」による。
 歌曲集は次の各曲からなる。第1曲から第6曲までは愛の喜びを、第7曲から第14曲までは失恋の悲しみを、最後の2曲はその苦しみを振り返って歌っていると考えることができる。

1 麗しい五月に
2 僕の涙から
3 薔薇、百合、鳩、太陽
4 君の瞳を見つめると
5 僕の心をひそめよう
6 ラインの聖なる流れに
7 僕は恨まない
8 小さな花が分かってくれるなら
9 あれはフルートとヴァイオリンの響き
10 あの歌が聞こえてくると
11 ある若者が娘に恋をした
12 まばゆい夏の朝に
13 僕は夢の中で泣いた
14 夜毎夢の中で
15 昔話の中から
16 昔の嫌な歌


プロフィール

吉田章一

(よしだ あきかず)Bariton
 鳥取大学教育学部卒業。広島大学大学院学校教育研究科修了。声楽を小松英典、西岡千秋、佐藤晨、吉田征夫、平野弘子の各氏に師事。
 ソロ・コンサート、ジョイント・コンサートのほか、モーツァルトやフォーレのレクイエム、バッハのヨハネ受難曲、ヘンデルのメサイア、ベートーヴェンの第九等のソリストを務める。
 オペラでは、モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」に出演。特に2002年の国民文化祭オペラ公演「ポラーノの広場」では、主役のキューストを歌い圧倒的な成功をおさめた。昨年の再演では、更にバージョンアップしたキューストを歌い、全国レベルで通用する風格を見せた。
 また、特筆に価するのはドイツリートに対する造詣の深さと演奏力の高さである。既にCDリリースされているシューベルトの「冬の旅」は、高く評価されている。2010年10月韓国にてオペラ「電話」(メノッティ作曲)に出演。現在、淀江小学校勤務。鳥取オペラ協会理事。

兼田恵理子

(かねだ えりこ)Piano
 武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。新田恵理子、コッホ・幸子の各氏に師事。
 アザレアのまち音楽祭においては、アザレア室内オーケストラと共演の他、ソロリサイタル等で参加している。
 現在,後進の指導にあたるとともに、声楽、器楽の伴奏者として各地で演奏活動を行っている。倉吉市在住。鳥取オペラ協会ピアニスト。


ご案内

 吉田氏は、鳥取県を代表するバリトン歌手としてすっかり成長を遂げています。一昨年・昨年と「フィガロの結婚」のタイトルロールを歌い、新しいフィガロ像を作っています。そして、昨年度は韓国江原道の芸術総合連合会の招きで、春川市春川文化芸術館で公演したメノッティ‐の「電話」でベン役を歌い、大絶賛されました。その歌唱力と演技力の充実ぶりは、今後のオペラ公演を大いに盛り上げることと喜んでいます。
 今回のサロンは、吉田氏がもう一つの柱としているドイツリートで楽しんでいただきます。メインはシューマンの「詩人の恋」です。現代人の心の奥深くに潜んでいる恋の葛藤を、秘めやかに表現しているともいえる歌曲です。現代人の持つコントラストのきつい比喩や、パロディーは存在しない、純な心の葛藤が、ふくよかな吉田氏のバリトンで歌われると、心のひだに染み入る霧のような何かの震えが伝わってきます。どうぞ、孤独の悦楽をお楽しみください。