リサイタルシリーズ2018 



吉田章一バリトン リサイタル



期 日 2018年12月9日(日) 14:00開演

会 場 倉吉未来中心小ホール

入場料 2,000円 一部指定席

過去の演奏のご紹介
♪ ワルシャワの生き残り/シェーンベルク作曲 (wmaファイル 1.6MB 3分27秒)

プログラム

〜シューベルト作曲「冬の旅」全曲〜

「冬の旅」歌詞の対訳
WINTERREISE 対訳 (pdfファイル 566KB)


コンサートのご案内

吉田氏は山陰を代表するバリトン歌手である。現在小学校の教頭を勤めながら演奏活動を行い、鳥取オペラ協会副会長としてリーダーシップをとっています。これまでオペラ出演は数多くあり、国民文化祭2002とっとりでは、新作オペラ「ポラーノの広場」の主役キューストを歌い、各方面から絶賛されました。又、とりアートオペラ「魔笛」(2016年)ではパパゲーノを歌い、大好評を得ている。ディクションの大家「高折積氏」に完璧なドイツ語であると言わしめた実績を持つなど優れたオペラ歌手である。
しかし、何よりもドイツ・リートへの取り組みが半端でなく、その実績も豊富である。シューベルトの「冬の旅」は、これまで再三のリサイタルで取り上げている。今回の歌曲集「冬の旅」作品89、D911 全曲演奏会に際し、吉田章一氏自身による翻訳テキストを使い、字幕スーパーをステージ後方に映し出します。しかしながら、吉田氏の歌う「冬の旅」は、詩の表現を超えた音楽の意思が強靭な旋律となって聴かせてくれます。若さゆえに傷つきやすく、薄氷の様に壊れやすいボヘミアングラスの佇まいを感じさせるのです。絶望しながらもなお、意識下に未来を幻影し、若者の見果てぬ夢の痕跡を感じさせるのです。ミュラーの詩は、失恋し街を捨ててさすらうという状況を、当時の産業革命による社会の変革の中で、どうにもできない若者の疎外感を歌うものですが、吉田氏の歌う「冬の旅」は独自の世界観を持っています。曲全体に流れる「悲しみの慰め」として表現される「死」は、希望の裏返しとして歌われ、今を生きる私たちに強く訴えるように思えるのです。この歌曲集のあまりの暗さには辟易するものがありますが、暗く絶望的な歌詞を超えたシューベルトのメロディに、吉田氏の絶妙な歌唱のニュアンスによって、アイロニーを覆すものを感じさせるのです。そうかと言って、感傷的に陥ることなく凍り付くような絶望感も感じさせ、今の時代を生きる私たちの表面的な立ち居振る舞い、本音を隠す習性、無知を装い自己防衛する姿に、鋭く問いかけるのです。「生きる」とはどういう事かと、心の襞を抉るのです。聴衆を激しく揺さぶり、聴衆自身の内面に拮抗作用を誘発させ、これまで見てこなかった風景を見せてくれるのです。地方にありながら、これほど深い芸術活動を邁進する歌手は、そうそう居ないものです。吉田氏は、1999年にカウベル選集として、既に『冬の旅』をCDリリースしていますが、その後、シューベルトの 3大歌曲集『美しき水車小屋の娘』『白鳥の歌』『冬の旅』を再三にわたってコンサートに登場させ、優れた歌唱を現在まで紡いでいます。



プロフィール

吉田 章一
(よしだ あきかず)Bariton

 鳥取大学教育学部卒業。広島大学大学院学校教育研究科修了。声楽を小松英典、西岡千秋、佐藤晨、吉田征夫、平野弘子の各氏に師事。ソロ・コンサート、ジョイント・コンサートのほか、モーツァルトやフォーレのレクイエム、バッハのヨハネ受難曲、ヘンデルのメサイア、ベートーヴェンの第九等のソリストを務める。オペラでは、モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」、新倉健「窓」に出演。特に2002年の国民文化祭オペラ公演「ポラーノの広場」では、主役のキューストを歌い圧倒的な成功をおさめた。2004年の再演では、更にバージョンアップしたキューストを歌い、全国レベルで通用する風格を見せた。また、特筆に価するのはドイツ・リートに対する造詣の深さと演奏力の高さである。既にCDリリースされているシューベルトの「冬の旅」は、高く評価されている。2010年10月韓国にてオペラ「電話」(メノッティ作曲)に出演。とりアートオペラ「魔笛」(2016年)でパパゲーノ役を歌い、大好評を得る。鳥取オペラ協会理事。

兼田恵理子
(かねだ えりこ)Piano

 武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。新田恵理子、コッホ・幸子の各氏に師事。アザレアのまち音楽祭においては、アザレア室内オーケストラと共演の他、ソロリサイタル等で参加している。現在,後進の指導にあたるとともに、声楽、器楽の伴奏者として各地で演奏活動を行っている。倉吉市在住。