倉吉 アザレアのまち音楽祭
第31回 倉吉 アザレアのまち音楽祭2013
ごあいさつ

平成25年3月

音楽は心の襞に深く刻み込まれ、精神の根幹を司る!

アザレアのまち音楽祭 芸術監督 計羽孝之


 誰もが己の可能性を信じてやまない学生時代、己を臥(が)竜(りょう)鳳(ほう)雛(すう)だと誤解している事に気が付かず、チャンスがないだけだと嘆いていたものです。しかし、ある日突然、流星が落ちるように、ふと我に返る瞬間があるのです。若い時代、クラシック音楽の使徒と自認する者が、必ず通り過ぎるのであろうベートーヴェンの傑作の森に迷い込み、どうにも抜け出せない自分を発見した時、才能の有無を悟ることになります。それは、私が40歳をこえたころのことです。しかし、音楽の世界を完結させる「鑑賞する」という行為に、新しい己の「鳳雛」を見たのです。
 音楽が作り出される空間は、演奏家と聴衆が同じ会場で音楽の渦へと巻き込まれていくことなのですが、我をわすれ、熱に浮かされたような時間の中で、自分自身を問い直し、何かを見出していくのが音楽への忠誠だと確信していったのです。そんな役回りを果たすのがアーツマネジメントだとしたら、己の可能性は、ここにあると思ったのです。ですから、演奏活動からは潔く決別し、演奏家と聴衆を結ぶことで生まれるのであろう音楽への敬愛と信頼で繋がれている人たちを、より多く作り出すことこそを、私自身の指標としたのです。そして、アザレアのまち音楽祭が生まれたのです。
 音楽が社会にとって、何かを作り出すのは、演奏家と聴衆がひとつの場所に居合わせる時のみ可能なのです。ですから、アザレアのまち音楽祭では演奏家と聴衆を、幸福な出会いとなる場として設定しているのです。アザレアのまち音楽祭に人々が集い、そこに音楽が生まれる、これこそが社会を変える通奏低音になると信じているのですから。
 私たちが生きる上で大切なのは、「今」であり、「明日」への夢を育むことです。音楽こそが、今そこにあるあらゆる感性をハーモニーへと誘い、明日へと続く人生の礎となるでしょう。音楽鑑賞は、演奏された音がすぐ消えても、音楽を聴いた人の、主観たる感受を司る心の襞に、深く刻み込まれ、その人の精神の根幹に作用して行くのです。音楽芸術は、人間が社会で生きてゆくための知恵の集積のはずです。その芸術が社会の一部にならなければ、音楽芸術は生き続けてはいけないでしょう。
 音楽という芸術行動は、社会の中でどんな役割があるかを、私たちは考えなくてはなりません。アザレアのまち音楽祭は、基本的に公的助成金はなく、「寄付」と「チケット」の収入で成立しています。そのためには、スポンサーたる企業と篤志家の皆さんに、「なぜ、寄付する必要があるのか」を納得してもらわなければなりません。アザレアのまち音楽祭の活動が、価値があるものと認めてもらう為には、音楽的な価値だけでなく、社会的な価値として認識して頂かなければなりません。私たちの活動は単に30年が経過したに過ぎません。社会的な理解を得るには、未来に亘っての努力と「Play」と「Pray」が必要だと肝に銘じています。





平成25年3月

「アザレアのまち音楽祭」は、活力に満ち、豊かな心と
文化が息づくまちづくりの中心!

倉吉市長 石田 耕太郎


 記念すべき第30回アザレアのまち音楽祭が昨年盛大に開催され、今年はまた新たな気持ちで、第31回「アザレアのまち音楽祭2013」がスタートされますことを心からお喜び申し上げます。
 昨年のファイナルコンサートでは、倉吉市との姉妹都市である大韓民国羅州市より「梨の花サクソフォンアンサンブル」をお招きし、音楽を通じて国際交流を図り、市民の皆様にも身近に感じていただくことができました。
 これもひとえに、この音楽祭の開催をとおして本市の文化芸術の振興にご尽力をいただきました計羽会長をはじめ倉吉文化団体協議会関係者の多大なるご熱意とご努力の賜物であり、深く敬意を表する次第であります。
 倉吉市では、第11次倉吉総合計画に掲げています将来都市像「愛着と誇り 未来いきいき みんなでつくる倉吉」の実現に向けて様々な取り組みを行っていますが、今や「アザレアのまち音楽祭」は、活力に満ち、豊かな心と文化が息づくまちづくりの中心的役割を担っていただいております。
 そして今回は、ピアノの加藤文女氏、重道博世氏、サキソフォンの西谷友里氏、チェロの村岡苑子氏が初めて出演されるなど、次代を担う若手音楽家が日頃の成果を披露される大変意義深い音楽祭でもあり、今後の更なる活躍に期待を寄せるところであります。
 近年、個人のライフスタイルの変化により、人と人との交流が希薄になっていると指摘されていますが、芸術・文化は人間が人間らしく生きるために不可欠なものであり、生きていくための癒しです。
 市民自らが作り上げる音楽祭「アザレアのまち音楽祭」は、私たちの生活にゆとりや安らぎ、人生の豊かさをもたらすだけでなく、感性を豊かにし、交流の輪を広げるとともに地域のまちづくりへとつながります。だからこそ、この音楽祭が毎年開催されることは大変有意義であり、市といたしましても末永く開催されるための支援に努めたいと考えております。
 終わりに、この音楽祭が皆様の手でまた一段と輝きを放つことを祈念し、お祝いのご挨拶といたします。