倉吉 アザレアのまち音楽祭
村岡苑子チェロ ・コンサート

Piano 矢野雄太
2013年6月16日(日)14:00〜 倉吉交流プラザ 700円


 過去の演奏のご紹介
チェロ 村岡苑子 (第30回アザレアのまち音楽祭2012コンサートより)
♪ 無伴奏チェロ組曲よりプレリュード(カサド) (wmaファイル 1.4MB 3分程度)


第一部

@トッカータ/フレスコバルディ作曲/カサド編曲
イタリアに生まれたフレスコバルディはバロック音楽初期における重要なオルガン音楽の作曲家であり、演奏家である。この曲はオルガン用のトッカータ集に収められた一曲を、カサドがチェロとピアノのために編曲した作品である。格調高い序奏と、それに続くカノンのようなフレーズで始まる舞曲風のトッカータ(技巧的で細かな音形を伴う即興的な曲)が軽快に駆け巡る。

A無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調/レーガー作曲
 1 Praludium
 2 Gavotte
 3 Largo
 4 Gigue
レーガーはドイツ後期ロマン派の作曲家であり、オルガン曲から器楽、声楽曲まで非常に多くの作品を遺した。彼はロマン派に作風をおきながらも、バッハを模倣した対位法やフーガなどの古典主義作品をつくり、高く評価されている。無伴奏チェロ組曲は全部で3曲あり、そのうちの第2番を今回演奏する。バッハの無伴奏チェロ組曲第2番がニ短調であるのと同様、この曲もニ短調のプレリュードから始まる。その後、軽快なガヴォット、ゆったりとしたラルゴと続き、速いテンポのジーグの全4曲で終える。バッハの組曲のような響きを持ちながらも、レーガーのロマンを感じられる一曲である。


第二部

@チェロソナタ第3番 イ長調/ベートーヴェン作曲 
 1. Allegro ma non tato
 2. Scherzo-Allegro molto
 3. Adagio cantabile-Allero vivace
L.v.ベートーヴェンのチェロソナタは、チェロソナタ作曲史上、「チェロの新約聖書」と言われるほど重要なレパートリーになっており、とりわけ彼の遺した5曲のチェロソナタの中でも第3番は最もよく知られ、ベートーヴェン中期の作品の代表作であるといえる。第1楽章では、チェロが雄大な主題を奏し、ピアノもそれを受けて曲が始まる。チェロ本来の低音とカンタービレの能力を活かしながらも高音を積極的に用い、従来のチェロの作品よりも、その可能性を大きく拡げたものになっている。第2楽章では、ピアノが鋭く用いられた勢いのあるスケルツォと明るいトリオからなる。第3楽章はホ長調の優美な序奏から始まり、その後雰囲気を変え、軽やかな第1主題が登場する。ソナタ形式で曲は進み、ピアノとチェロのの華々しい旋律のクライマックスのあと、堂々とした歩みで全曲を締めくくる。


プロフィール

村岡 苑子

(むらおか そのこ)cello
1992年生まれ。東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学器楽科3年在学。
2001年日本クラシック音楽コンクールチェロ部門「好演賞」
2004年泉の森ジュニアチェロコンクール小学生部門「銀賞」
2005年泉の森ジュニアチェロコンクール中学生部門「奨励賞」
2010年泉の森ジュニアチェロコンクール高校生の部門「国際ソロプチミスト大阪りんくう奨励賞」
2010年霧島国際音楽祭にて堤剛氏のマスタークラス、英国王立音楽院JoCole氏の公開レッスンを受講。
2012年紀尾井ホールにて日墺フレッシュコンサートに出演。
2012年ザルツブルグ=モーツァルト国際室内楽コンクール「奨励賞」
2011年夏には倉吉市、米子市にてソロコンサートを行う。
これまでにチェロを門脇大樹、雨田一孝、宮城健、山崎伸子の各氏に、室内楽を大関博明、花崎薫、山崎伸子、松原勝也の各氏に師事。

矢野 雄太

(やの ゆうた)Piano
1992年生まれ、埼玉県出身。6歳よりピアノを始める。
2001年、2007年ポーランド国立クラクフ室内管弦楽団と共演。
2009年ピティナピアノコンペティションG級「金賞」、併せて「東京都都知事賞」、「讀賣新聞社賞」、「洗足学園前田賞」、「王子賞」、「ヒノキ賞」受賞。
2010年度より、(財)ヤマハ音楽振興会音楽支援奨学生
2011年バルセシアモンテローザ 若い音楽家のためのコンクール(イタリア)大賞受賞
2012年チェルカスキー国際コンクール(イタリア)にてチェルカスキー特別賞受賞
2012年ミラノにてルーマニア国立バカウ交響楽団と共演
これまでに永瀬まゆみ、中井恒仁、二宮裕子、角野裕、黒田亜樹の各氏に師事。
東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学器楽科3年在学中。


ご案内

 チェリストの村岡氏は、現役の音大生です。昨年のアザレアのまち音楽祭ミニ・リサイタル・リレーコンサートに登場し、その堂々たる演奏ぶりを見せていました。演奏中に弦が切れ、替え弦の持ち合わせがなく、素早く楽器店に手配して無事演奏を終えたのですが、その立ち居振る舞いの見事さが妙に印象に残っています。彼女のチェロは、常にダイナミックな印象を与えます。その理由はなんだろうと考えあぐねると、その音像たちが、まるで木食上人の荒削りの彫刻のような、未完に見せながら言いたいことを明確に伝える力強さかもしれません。しかし、もしかしたら未完になど見せようとしていないが、ただ細部の詰めが甘いだけかもしれません。そんな感じがするのです。メロディの源泉は言葉だと言われますが、作曲家の身につけている言語を、演奏の中に持ち込まなければ、変な外人の日本語のようにアクセントの崩れや言葉の持つ音の減衰速度が狂ってしまったりするものです。村岡さんのチェロは、かなり専門的な問題を提示してみせながら、音楽だけが持つ肉体的な快感を聴く者に与えてくれます。若さが持つ独特の才能かもしれませんが、時が経つごとに熟成する樽の中を、ちょっと覗いてみる喜びかもしれません。ミューズたる村岡氏の奏でる音楽に身を委ねることで、あなたの大切な時間として心に残ることでしょう。