倉吉 アザレアのまち音楽祭
吉田明雄ヴァイオリン・コンサート

Piano 蓼沼恵美子
2013年5月26日(日)14:00〜 倉吉未来中心小ホール 700円


 過去の演奏のご紹介
ヴァイオリン 吉田明雄 (第30回アザレアのまち音楽祭2012コンサートより)
♪ 子守唄(フォーレ作曲) (wmaファイル 1.5MB 3分14秒)


第一部

@モーツアルト/ヴァイオリン・ソナタ第25番 ト長調 K.301
 モーツァルトは1778年にヴァイオリン・ソナタの作曲を再開した。約12年の空白を経ていたが、再開したきっかけは、1777年の9月にマンハイムへの旅行の途中に立ち寄ったミュンヘンで、ヨーゼフ・シュースターのヴァイオリン・ソナタを知ったことである。モーツァルトはシュースターの作品から大きな刺激を受け、すぐさまヴァイオリン・ソナタの作曲に取りかかった。第25番は1778年の2月頃にマンハイムで作曲された。第25番から第30番までの6曲は同年11月にパリで作品1として出版されたため、「パリ・ソナタ」と総称される。また、プファルツ選帝侯妃マリア・エリーザベトに献呈されたことから「マンハイム・ソナタ」とも総称される。
 シュースターの影響で生まれた新しい様式のヴァイオリン・ソナタの第1作にあたり、ピアノとヴァイオリンの有機的で協奏的な融合が光る作品であり、明らかに二重奏ソナタの内容を呈している。アルフレート・アインシュタインは「いくらかハイドン風」だと評している。

Aベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ Op24 F dur「スプリングソナタ」
 この曲は、1801年に書かれた。その、幸福感に満ちた明るい曲想から「スプリングソナタ(春)」という愛称で親しまれている、大変有名な曲である。
 第1楽章 Allegro ヘ長調、ソナタ形式。ピアノの伴奏に乗ってヴァイオリンで第1主題が歌われる。主題は10小節からなり、順次進行で下降したあと、跳躍を含む音型が3回繰り返されて盛り上がって終わるという、大変バランスの取れた、非常に美しい旋律である。その旋律がピアノで繰り返されたあと、推移となり第2主題が導かれるが、それは第1主題と対比して、和音連打によるものである。コデッタは連打による動機の模倣と、音階によるものからなる。展開部は第2主題が使用され、再現部は提示部と逆で、第1主題はピアノ→ヴァイオリンの順で奏される。
 第2楽章 Adagio molto espressivo 変ロ長調、三部形式。分散和音の伴奏に乗って、美しい旋律がピアノ、ヴァイオリンの順で歌われる。推移部のあと、主題が再現する際、それは装飾的な変奏や、転調などで彩られる。
 第3楽章 Scherzo,Allegro molto ヘ長調、スケルツォ。音階が上がったり下がったりする主部と急速なトリオからなる、短い楽章。 第4楽章 Rondo,Allegro ma non troppo ヘ長調、ロンド形式。A-B-A-C-A-B-A-コーダの構造を持つ。軽やかなAの主題は、同音が3回連打されることで印象付けられる。2部分からなり、ハ短調に陰るなど様々な要素を持つBと、3連符とシンコペーションのリズムを伴うニ短調のCを経て、Aの主題がニ長調で再現されると、さらに美しく変奏されて、喜びに満ちたまま曲は終わる。


第二部

@マスカーニ/カバレリア・ルスチカーナ 間奏曲
Aビショップ/埴生の宿
Bドボルザーク/母が教えたまいし歌
Cクライスラー/ Alter Refrain
Dシューベルト/アベ・マリア
Eサンサーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ
 この曲は、カミーユ・サン=サーンスが名ヴァイオリニストのパブロ・デ・サラサーテのために作曲した作品。ヴァイオリンと管弦楽のための協奏的作品であるが、ピアノ伴奏版も時おり演奏される。現在でもサン=サーンスの最も人気のある作品の一つ。穏やかな序奏の後に、8分の6拍子による情熱的な舞曲調のロンド主部が続く。


プロフィール

吉田明雄

(よしだ あきお)Violin
 鳥取大学医学部卒業。鳥取大学医学部第一内科助教授退職後、湯梨浜町泊にて吉田医院開業。その後の業績を認められ、鳥取大学大学院再生医療分野特任教授、自治医科大学非常勤講師就任。開業医として地域医療を行い同時に特任教授として研究教育活動を行なう。
 音楽分野においては、ミンクス室内オーケストラ代表、鳥取県オペラ協会副会長としての活動に対し県教育長賞を受賞。倉吉ストリングオーケストラ、鳥取大学フィルハーモニー管弦楽団、米子管弦楽団、県民による第九オーケストラなどのコンサートマスターを歴任。ミンクス、アザレア室内オーケストラ、コンサートマスター。鳥取県の音楽家たち出演。西日本医科オーケストラとブルッフの、ミンクス室内オーケストラとメンデルスゾーンの、鳥取大学室内管弦楽団とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を共演。これまでにヴァイオリンを山本喜三、山本弓子、山田衛生、七澤清貴、平井誠、釈伸司、澤和樹、各氏に師事。

蓼沼恵美子

(たでぬま えみこ)Piano
 堀江孝子、林美奈子、田村宏各氏に師事。東京芸術大学附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学卒業。「安宅賞」受賞。同大学院修了後、ロンドンに留学し、マリア・クルチョ女史に師事。 1983年、ミュンヘン国際コンクール、ヴィオリン・ピアノ二重奏部門で第3位入賞。'96年には、ヴァイオリンの澤和樹とのデュオ結成20周年を記念する連続リサイタルを開催し、好評を得る。現在、吉祥女子高等学校芸術コース、桐朋学園芸術短期大学講師。


ご案内

 「吉田明雄氏はアザレア室内オーケストラの主宰者であり、コンサートマスターとして活躍する音楽家です。」と紹介すれば、再びご母堂さまからお叱りを受けそうです。吉田氏は音楽家である前に、優れた医師として嘱望される鳥取大学医学部特任教授であり、開業医でもあるのです。その優れた実績は、枚挙にいとまがないほどです。ところで、吉田氏がアザレアのまち音楽祭にソリストとしてデビューしたのは、2010年のミニ・リサイタル・リレーコンサートでクライスラーとフランクを携えてのものでした。そして、その演奏の素晴らしさもさるものながら、70席の会場に120人もの聴衆が熱狂したものです。その時のメインはフランクのソナタでしたが出色の出来であり、翌年にはサロンの本割に登場して頂きました。そして翌年、再び70席の会場に197人もの聴衆が詰めかけ、モーツァルトに魅了されたのです。そんな訳で2012年度は、会場を倉吉未来中心小ホールに移したのです。そしてヘンデルのソナタとベートーヴェンのクロイチェルを豊かな響きのホールに響かせ、その音楽の華が全開されたのです。そんな訳で、今回も倉吉未来中心小ホールでのコンサートになりました。ご本人は、今年のコンサートはこれまでの集大成にしたいと意気込んでおいでで、そのメインにベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」を据え、コンサートの締め括りに、サンサーンスの「ロンド・カプリチオーソ」を予定しています。果して、この名曲たちが、名ピアニスト蓼沼恵美子氏のサポートで天上の音楽となるかと、期待しています。