倉吉 アザレアのまち音楽祭
第30回 倉吉 アザレアのまち音楽祭2012
ごあいさつ

平成24年2月

音楽家を支える聴衆の喜び

アザレアのまち音楽祭 芸術監督 計羽孝之


 アザレアのまち音楽祭は、今年度で30周年を迎えます。思い起こせば、あっという間の期間だったように思います。倉吉文化団体協議会が設立されると同時にスタートさせたアザレアのまち音楽祭は、当初は一日だけの市民音楽祭のスタイルを取りましたが、第5回から現在のように複数回の音楽祭に衣替えしました。アザレアのまち音楽祭も他市の例にもれず、地元出演者と中央からの演奏家も招いて開催するものでした。しかし、私たちは中央依存の一流好みを止め、地域在住の優れた演奏家たちを聴き続け、中央に引けを取らない音楽家に育っていただきたいとの願いを実現させる方向に舵を切りました。その成果がこの30年間の充実した実績であり、地域でなければ作り出せない暖かな雰囲気の音楽祭に成長しました。そして何よりも重要なのは、地域在住の演奏家たちが芸術家として敬愛され、それを聴き続けることで「音楽家を支える聴衆の喜び」が生まれたことです。そして「アザレアのまち音楽祭」の経営基盤である財政を、30年の長きにわたって援助し続けていただいたスポンサーの皆様、更にご協賛いただいた市民の皆様に深く感謝申し上げるものです。この30年間と言う重みは、音楽祭のレベルを、かつて見ない高みにまで到達させているのです。決して「仲良しクラブ」では成し得ない切磋琢磨が、聴衆の慧眼によって更に磨かれ、音楽を楽しむコミュニケーションへと変貌していったのです。その成果は、CDシリーズ「アザレアのまち音楽祭は凄いらしい!」のオーケストラ編T〜W、ソリスト編にまとめ全国に発信しています。その評価は、私たちの思いを越えて高いものであり、支援していただいた皆様や演奏家、そして音楽祭を運営してきたスタッフの誇りとなっています。
 今年度は、30周年を記念して新しい取り組みをしています。一つは、ベートーヴェン交響曲シリーズの完結となる第九の公演です。オープニングコンサートではベートーヴェンの交響曲を幾度も取り上げて来ましたが、第九番のみ唯一演奏していなかったのです。これまで演奏されて来た第九は、数百人の市民が参加するものがほとんどであり、倉吉市でも三年に一度のルーティン公演し、大きな感動をもたらして来ています。アザレアのまち音楽祭が取り組むのであれば、他では体験できない独自の第九をやりたいということになりました。一般的な大編成ではなく、限りなくシンプルに、小型編成での演奏に取り組みます。オーケストラはオリジナルの二管編成、合唱はSp10,Alt8,Tn7,Bs7の32人編成であり、総勢70人弱となります。合唱とソロを、鳥取オペラ協会演奏部のソリストたちにお願いし、音楽的にレベルの高い演奏を目指します。
 二つ目の取り組みは、アザレアのまち音楽祭を30年間にわたって支えていただいた方々の中から、著しく貢献された方、特に優れた演奏活動を継続していただいた皆様を称えようと「アザレア音楽賞」を設立し、ビエンナーレ方式で実施いたします。第一回の受賞者は、アザレアのまち音楽祭創設以来久しく事務局長を務めていただき、音楽祭の基盤を作っていただいた「山本喜三氏」と祝祭オーケストラを設定以降22年間にわたりオープニングコンサートで高い音楽性を培っていただいた「アザレア室内オーケストラ(主宰・吉田明雄氏)」の皆さんです。
 ところで私たちは、これまで「音楽の力」を過小評価して来たのではないかと、悔やまれることが多々ありました。しかし、昨年の東日本大震災の悲劇がもたらした心の痛みを癒し、生きる勇気と人生への希望を奮い立たせたのは音楽だったようです。私たちは決して音楽の力を忘れません。私たちは、今こそ美しい人生の生き方を思索せねばなりません。
「座って音楽に耳を傾けよう。静かな夜の調べに………野牛の群れや奔放な子馬たちは、血気に任せて飛び跳ねるが、ひとたびラッパを聴くと、その快い音楽に動きを止め、柔和な目になる。木石を動かす音楽の力。非情な者も、音楽には心和らぐのだ。心に音楽を持たぬ者は、謀反と策謀の人。精神は鈍く、地獄のように暗い。(シェークスピア「ベニスの商人」より)」





平成24年2月

豊かな生活環境を作り出すアザレアのまち音楽祭は、
市民の皆様とともに誇りにしたい

倉吉市長 石田 耕太郎


 「アザレアのまち音楽祭2012」が、市民自ら作り上げる音楽祭として回を重ねるたびに発展し、今年は記念すべき第30回を迎えられますことを心からお喜び申し上げます。また、これまでこの音楽祭の開催をとおして本市の文化芸術の振興にご尽力をいただきました倉吉文化団体協議会の皆様の多大なるご熱意とご努力に対しまして、改めて深く敬意を表する次第でございます。
 昨年7月に元市長である牧田實夫さんが亡くなられました。牧田さんは「アザレアのまち音楽祭」に深く関わられてこられましたが、牧田さんが掲げられた「水と緑と文化のまちづくり」の精神は本市にしっかりと息づいています。
 文化によるまちづくりは、わたしたちの心を豊かにし、生活の質を高め、文化のかおりに満ちたまちには市民の皆様の愛着と誇りが生まれ、そして、対外的にもまちのイメージアップにつながっています。私たちのまちには「アザレアのまち音楽祭」という音楽祭があり、地元の芸術家を育成し、私たちのまちの音楽家として敬愛し、共に音楽の喜びを分かち合える豊かな生活環境を作り出していると、市民の皆様とともに誇りにしたいと考えています。
 長引く景気低迷による地域経済への影響など本市を取り巻く社会経済情勢は厳しい状況にありますが、文化は人間として生きるために不可欠なものであり、社会・経済発展のための創造性の源泉であります。だからこそ市民が主体となり、地域の力を結集して運営される「アザレアのまち音楽祭」が毎年開催されていることは、地域にとって大変有意義であり、市といたしましても大切にしたいと考えています。
 今回は30周年を記念して公演数を30回に増やして開催されますとともに、新しい取り組みにも挑戦されるとうかがっており、どんな音楽祭になるか楽しみにしています。是非会場でお目にかかりましょう。