倉吉 アザレアのまち音楽祭
鳥取雅友会雅楽演奏会

2012年5月31日(木)19:30〜 倉吉交流プラザ 700円


雅の調べと舞

第一部
@ 管弦 平調 越殿楽 残楽 (かんげん ひょうじょう えてんらく のこりがく)
 残楽とは、楽器の編成を徐々に減らしていく奏法であると共に、普段の越殿楽の演奏ではリズムを受け持つ「箏」(雅楽の琴)が、メロディーをメインで聴かせる為に、生み出された奏法。
 始めは通常通り全員で演奏し、その後打楽器、管楽器の助管を外し、最後は篳篥の主管と筝のみで演奏する。
A 謡物 神楽 其駒(かぐら そのこま)
 神楽とは、氏神様のお祭りで演じられる里神楽と混同しやすいが、全く神聖なもので、皇居の賢所や皇霊殿の前で、天照大神や歴代天皇をお慰めする宮中で最も重要な儀式に奉される、神楽歌と人長舞とからなる宗教音楽である。
 これは白河天皇の時代から行われる「御神楽」と呼ばれるもので、現在も連綿と続いている宮中儀式とされている。
 詩:其駒ぞや 我に我に 草乞う 草は取り飼わん 水は取り 草は取り飼わん
 (訳:私の可愛い馬が草を求めるので与えましょう。水を取り草を取り与えましょう)
 本日は歌と演奏のみとする。
B 高麗壱越調 納曾利急(こま  いちこつちょう なそりのきゅう)
 高麗楽は古代朝鮮半島にあった高句麗(こうくり)・百済(くだら)・新羅(しらぎ)の国々、または渤海(ぼっかい)より伝えられた音楽。
 その中で、納曽利は、かなりメジャーな曲舞で、納蘇利とも表記する。伝来は不明で、平安時代には競馬や相撲の節会で演奏、舞われた。 左右に分かれて競うこれらの競技では、右方が勝つと納曾利が舞われ、左方が勝つと唐楽の「蘭陵王」が舞われた。 2匹の竜(雌雄の竜と呼ばれる)が、たわむれる様子を表したとされるこの舞は、童舞として舞う場合もある。 高麗壱越調に属しており、破と急の楽章が伝承されている。
 本日は急の演奏のみとする

第二部
@ 舞楽 陵王(ぶがく りょうおう)
 この曲は、林邑の僧である仏哲が、日本にもたらしたと言われている。
 中国の南北朝時代 末期、北斉(ほくせい)と言う国の蘭陵王高長恭(らんりょうおうこうちょうきょう)は勇猛果敢であったが、余りにも顔が美しすぎた為に、戦いの指揮が上がらず、又、敵を威嚇する事が出来ない事を残念に思っていた。
 そこで、彼は、いかめしい仮面を着け戦いに挑み、見事に大勝を博した。
   彼の勇猛な姿を舞にしたのが、舞楽 陵王とされている。
 陵王は、小乱声(こらんじょう) 陵王乱声(りょうおうらんじょう) 沙陀調音取(さだちょうねとり) 当曲・陵王 安摩乱声(あまらんじょう) から成り、それはまるで組曲と言えるのでは。
 管絃にも舞楽にも奏されるこの曲は、管弦の時は、蘭陵王と呼ばれ、舞楽の時は、短く陵王と呼ばれている。


プロフィール

鳥取雅友会


1987年 9月  鳥取県内の雅楽愛好者によって結成「鳥取雅友会」と命名
1995年 4月  JR鳥取駅創設80周年にて記念祝賀公演
1997年 7月  境港シンフォニーガーデンサロンコンサートに出演
      8月  「山陰夢みなと博覧会」にて演奏
      9月  特別養護老人ホーム「あすなろ」にて慰問演奏
1998年10月  境港シンフォニーガーデンサロンコンサートに出演
1999年12月  鹿野町(現鳥取市)立鹿野中学校にて雅楽披露
2000年 9月  さじアストロパークにて月祭りコンサート
           青谷町(現鳥取市)高齢者教室(教育委員会主催)雅楽披
           露。岩美町岩井クラフト館にてコンサート。
     10月  おおち谿神社権現祭にて奉納演奏
2001年11月  日南町総合文化センターにて、中学生対象に雅楽披露
2002年10月  鹿野小学校にて雅楽披露
     10月  境港シンフォニーガーデンサロンコンサートに出演
2003年 9月  鹿野小学校にて雅楽披露
     11月  境港シンフォニーガーデンホール四季の音楽に出演
2004年10月  淀江文化センターにて公演
2006年 5月  中国地区里親会鳥取大会 舞楽演奏(ホテル モナーク鳥取)
2007年10月  日野町文化センターにて公演
2010年 6月  第54回中国税理士会定期総会 舞楽演奏
            (ホテルセントパレス倉吉)
2011年 7月 鳥取アサヒビールほろ苦会45周年記念式典 舞楽演奏
            (ホープスター鳥取)
 その他、毎年2〜3個所の小学校を訪問して雅楽の普及に努めている
●演奏者の大半が約30年前後の経験者で、中には、宮内庁式部職楽部楽師より直接指導を頂いた者や、天理大学雅楽部出身者も含まれている。



ご案内

 境港市のシンフォニーガーデンのサロンコンサートで、鳥取雅友会の演奏を聴いたのは15年近く前だったと記憶しています。鳥取県に雅楽を演奏する集団があるなど全く知らなかった私には驚きでした。三十代半ばのころ、日本音楽の研究をしていて、雅楽に関する書籍とレコードを集めたり、その演奏会に出かけたりしていましたが、地方で演奏されるものは、そのほとんどが祭礼の為であり、音楽的な完成度など問題にされていなかったようです。ですから、地方で行われる雅楽の公演に音楽的な期待をしないのが常でした。
 ところが、鳥取雅友会の演奏を聴いてびっくりしたのです。しっかりしたアンサンブルが作られていたのです。雅楽を音楽として楽しむ水準に達していると思ったのです。ぜひともアザレアのまち音楽祭にお呼びしたいと思いながら、そのチャンスを逸していましたが、やっと今回実現するはこびとなりました。久しく時間がかかりましたが、日本が世界に誇る雅楽の演奏を、アザレアのまち音楽祭で聴けることに喜びを持っています。
 歴史的には、庶民の音楽と言うより貴族社会の音楽として伝えられてきた雅楽ですが、音楽自体は日本人の生活の中にDNAとして存在してきたものです。それは、民謡の中に、寺社の祭礼の中に、そしてあらゆる日本文化の中にその片鱗が潜在しています。しかし、本格的な雅楽はなかなか聴くチャンスがありません。倉吉市では倉吉博物館の前庭で演奏されたことがありますが、コンサートとしては初めてのことでしょう。
 今回は、サロンコンサートと言う小さな会場での演奏であり、じっくりと雅楽の美しさを存分に聴いていただけることと思います。どうぞお楽しみください。