倉吉 アザレアのまち音楽祭
アザレア室内オーケストラ演奏会

指揮/松岡 究
演奏/アザレア室内オーケストラ
ソリスト/Sp松田千絵 Alt鶴崎千晴 Ten小谷弘幸 Bas西岡千秋
合唱/鳥取オペラ協会合唱団30人編成

2012年5月13日(日)14:00〜 倉吉未来中心大ホール 700円


 過去の演奏のご紹介
演奏/アザレア室内オーケストラ (第29回アザレアのまち音楽祭2011オープニング・コンサートより)
♪ シューベルト/交響曲第7番ロ短調D759『未完成』 (wmaファイル 1.4MB 3分 指揮/松岡 究)


@ モーツァルト作曲/オペラ「魔笛」序曲
 『魔笛』(まてき、独: Die Zauberflote)K. 620は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1791年に作曲したジングシュピール(歌芝居。現在では一般にオペラの一種として分類される)。モーツァルトが生涯の最後に完成させたオペラである。台本は興業主・俳優・歌手のエマヌエル・シカネーダーが自分の一座のために書いた。現在もモーツァルトのオペラの中で筆頭の人気を誇る。
 この序曲は、全曲を通じて大きな役割を果たす「フリーメイソンの三和音」が登場する。なお、主部の第1主題はクレメンティの『ピアノソナタ 変ロ長調』(作品24-2)の第1楽章主題に酷似しており、モーツァルトがこの曲でクレメンティをからかったという見方がある。序奏・アダージョ→アレグロ・ソナタ形式、変ホ長調。

A ベートーヴェン作曲/交響曲第9番 ニ短調「合唱付」作品125
 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125(ドイツ語: Sinfonie Nr. 9 d-moll op. 125)は、ベートーヴェンの9番目にして最後の交響曲である (第10番もあるが未完成)。副題として「合唱付き」が付されることも多い。また日本では親しみを込めて「第九」(だいく)とも呼ばれる。第4楽章は独唱および合唱を伴って演奏され、歌詞にはシラーの詩『歓喜に寄す』が用いられる。第4楽章の主題は『歓喜の歌』としても親しまれている。古典派の以前のあらゆる音楽の集大成ともいえるような総合性を備えると同時に、来るべきロマン派音楽の時代の道しるべとなった記念碑的な大作である。

第一楽章 Allegro ma non troppo, un poco maestoso
 ニ短調 2/4拍子、ソナタ形式。
 第1楽章において、ベートーヴェンの比類なき天才性が示される。
 ソナタ形式によるが、以下の点で型破りである。神秘的な空虚五度の和音で始まり、習慣的な反復記号を欠いている。また通常平行調または属調で現れる提示部第2主題が下属調の平行調になっている(通常のソナタ形式であれば、短調の第1主題に対し、第2主題は3度上の平行長調であるヘ長調で現れるべきだが、ここでは逆に3度下の変ロ長調が使用されている。この調性は、第3楽章や第4楽章で重要な働きをする)。 再現部の冒頭が、展開部と第1楽章のクライマックスを兼ね添えていて、提示部のそれとかなり異なる雰囲気である。
 冒頭の弦楽器のトレモロにのせて第1主題の断片的な動機が提示され、それが発展して第1主題になるという動機の展開手法は非常に斬新なものである。第1主題は、ニ音とイ音による完全五度を骨格とした力強い主題であり、この完全五度の関係は、この作品全体にわたって音楽に大きな律動感を与えている。
 第2主題部の導入部は、第4楽章で現れる「歓喜」の主題を予め暗示させるような効果を持つ。
 コーダの不気味な半音階オスティナートは、メンデルスゾーンの交響曲第3番や、とりわけブルックナーの交響曲第2番・第3番に強い影響を与えている。

第二楽章 Molto vivace - Presto
 ニ短調 3/4拍子 - ニ長調 2/2拍子、複合三部形式をとるスケルツォ楽章である。スケルツォ部分だけでソナタ形式(提示部反復指定あり)をとる。
 曲調は第1楽章を受け継ぐような形で、第1楽章同様DとAの音が骨格になっている。弦楽器のユニゾンとティンパニで構成される序奏を経て、提示部ではフーガのようにテーマが絡み合い、確保される。
 経過句ののち第2主題に移るが、主調が短調の場合、第2主題は通常平行調(ニ短調に対してはヘ長調)をとるところ、ここではハ長調で現れる。また、1小節を1拍として考えると、提示部では4拍子、展開部では3拍子でテーマが扱われる。展開部ではティンパニが活躍する。このことから、この楽章はしばしば「ティンパニ協奏曲」と呼ばれることがある。ティンパニは通常、主調のニ短調に対してDとAに調律するところを、ここではFのオクターブに調律されているのが独特である(ベートーヴェンは、既に第8番の終楽章(ヘ長調)で、Fのオクターブに調律したティンパニを使っている)。
 中間部の旋律は、歓喜の主題に似ている。速度は更に速められてプレスト。オーボエによる主題提示の後、弦楽器群のフーガ風旋律を経てホルンが同じ主題を提示する。フルートを除く木管楽器群の主題提示の後、今度は全合奏で主題を奏する。

第三楽章 Adagio molto e cantabile - Andante maestoso
 変ロ長調 4/4拍子 - ニ長調 4/4拍子、2つの主題が交互に現れる変奏曲の形式と見るのが一般的であるが、一種のロンド形式、また一種の展開部を欠くソナタ形式と見ることもできる。
 瞑想的な緩徐楽章である。4番ホルンの独奏は、当時のナチュラルホルンでは微妙なゲシュトプフト奏法を駆使しなければ演奏することができなかった(ちょうど作曲当時はバルブ付きの楽器が出回り始めた頃だったので、この独奏はバルブ付きホルンで演奏することを前提にしていたという説もある)。これは当時ホルン奏者のみならず、指揮者なども大変気を遣った難しいパッセージであったことで有名。この楽章の形式は後世のブルックナーのアダージョ楽章に大きな影響力を与えた。そのほかにこの楽章と似ているのはメンデルスゾーンの交響曲第3番の第3楽章やブラームスのセレナード第1番の第3楽章、ドボルザークの交響曲第6番の第2楽章などがある。

第四楽章 歓喜の歌
 管弦楽が前の3つの楽章を回想するのをレチタティーヴォが否定して歓喜の歌が提示し、ついで声楽が導入されて大合唱に至るという構成。変奏曲の一種と見るのが一般的であるが、有節歌曲形式の要素もあり、展開部を欠くソナタ形式という見方も可能である("Freude, schoner Gotterfunken"が第1主題、"Ihr, sturzt nieder"が第2主題、Allegro energico, sempre ben marcatoが再現部)
 この楽章で歌われる「歓喜の歌」は、 フリードリヒ・フォン・シラーの詩作品『自由賛歌』(Hymne a la liberte 1785年)がフランス革命の直後『ラ・マルセイエーズ』のメロディーでドイツの学生に歌われていた。そこで詩を書き直した『歓喜に寄す』(An die Freude 1803年)にしたところ、これをベートーヴェンが歌詞として1822年から1824年に書き直したものである。一説にはフリーメイソンリーの理念を詩にしたものだともいう。
 「歓喜のメロディー」は、交響曲第9番以前の作品である1808年の『合唱幻想曲』作品80と、1810年のゲーテの詩による歌曲『絵の描かれたリボンで Mit einem gemalten Band』作品83-3においてその原型が見られる。
 「歓喜に寄せて」
おお友よ、このような音ではない!
我々はもっと心地よい
もっと歓喜に満ち溢れる歌を歌おうではないか
(ベートーヴェン作詞)

歓喜よ、神々の麗しき霊感よ
天上の楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて
崇高な汝(歓喜)の聖所に入る

汝が魔力は再び結び合わせる
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる
(シラーの原詩:
時流の刀が切り離したものを
貧しき者らは王侯の兄弟となる)
汝の柔らかな翼が留まる所で

ひとりの友の友となるという
大きな成功を勝ち取った者
心優しき妻を得た者は
彼の歓声に声を合わせよ

そうだ、地上にただ一人だけでも
心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ
そしてそれがどうしてもできなかった者は
この輪から泣く泣く立ち去るがよい

すべての被造物は
創造主の乳房から歓喜を飲み、
すべての善人とすべての悪人は
創造主の薔薇の踏み跡をたどる。

口づけと葡萄酒と死の試練を受けた友を
創造主は我々に与えた
快楽は虫けらのような弱い人間にも与えられ
智天使ケルビムは神の御前に立つ

天の星々がきらびやかな天空を
飛びゆくように、楽しげに
兄弟たちよ、自らの道を進め
英雄のように喜ばしく勝利を目指せ

抱擁を受けよ、諸人(もろびと)よ!
この口づけを全世界に!
兄弟よ、この星空の上に
ひとりの父なる神が住んでおられるに違いない

諸人よ、ひざまずいたか
世界よ、創造主を予感するか
星空の彼方に神を求めよ
星々の上に、神は必ず住みたもう


指揮者プロフィール

松岡 究

(まつおか はかる)
 成城大学文芸学部卒業。音楽を戸口幸策氏に、指揮を小林研一郎氏に、声楽を山田茂氏に師事。1987年東京オペラ・プロデュース公演、ドニゼッティ作曲「ビバ・ラ・マンマ」を指揮してデビュー。その後、1991年度文化庁在外派遣研修員として、ハンガリー国立歌劇場および国立交響楽団に留学。1992年スウェーデン・アルコンスト音楽祭に参加、「卓越した才能」と高く評価され、さらにヨルマ・パヌラ教授よりディプロマを与えられた。2004年〜2007年ローム財団による在外派遣研修員としてベルリンにて研修。2009年東京ユニバーサルフィル専任指揮者、日本オペレッタ協会音楽監督にそれぞれ就任した。日本では特に東京オペラ・プロデュースにおいて、数々の日本初演のオペラを指揮。グノー「ロメオとジュリエット」、ワーグナー「恋愛禁制」、ベルリオーズ「ベアトリスとベネディクト」、R.シュトラウス「無口な女」、ヴェルディ「王国の一日」「二人のフォスカリ」、ビゼー「美しいパースの娘」、ロッシーニ「ひどい誤解」、ドニゼッティ「当惑した家庭教師」、ヘルマン・ゲッツ「じゃじゃ馬ならし」。また日本ロッシーニ協会にて「ランスへの旅」の日本人初演。いずれも好評を博し再演・再々演の指揮も担当、「きわめてバランス感覚に富んだ逸材」(読売新聞)、「熟達の指揮ぶり、自らが意図する方向に歌手を自然に導く」(日経)、「オケから耽美な響きを引き出し、抜群」等賛辞が寄せられている。2002年鳥取国民文化祭にて新倉健氏作曲「ポラーノの広場」の初演を指揮。また2001年新国立劇場小劇場オペラシリーズでブリテン「ねじの回転」、2003年にはガッツァニーガ「ドン・ジョヴァンニ」を指揮した。2004年R.シュトラウス「カプリッチョ」の原語初演では「しなやかで優美で音楽が滞らない」(音楽の友)など、高い評価を得ている。日本オペレッタ協会では、カールマン「チャールダーシュの女王」、レハール「ルクセンブルグ伯爵」、ベルタ/シューベルト「シューベルトの青春」をこの2年に40公演ほど指揮している。
 鳥取県では、ミンクス室内オーケストラの結成以来常任指揮者として数々のコンサートを指揮。特に毎年倉吉市で開かれる「アザレアのまち音楽祭」ではアザレア祝祭オーケストラとしてとの公演を指揮。その質の高さには定評がある。更に鳥取オペラ協会設立以来、その公演の指揮を担い、オペラ育成にも尽力している。モーツァルトの四大オペラは勿論、現代作品に至るオペラを指揮し、スタンダードなレベルに育成した。また、米子第九合唱団とは、7回の「第九」公演のほか、3回のモーツァルト「レクイエム」、2回のヘンデル「メサイア」、2回のフォーレ「レクイエム」、J.Sバッハ「ミサ曲ロ短調」、ヴィヴァルディ「グローリア」、J.ラター「レクイエム」、ブラームス「ドイツレクイエム」を指揮し高水準のレベルに到達させている。直近のヴィヴァルディ「グローリア」公演では、鳥取県ではかつて経験したことのない合唱の高みを見せ、驚嘆させた。特筆に値するのは、第九合唱団の信頼が厚く、1995年から定期的に合唱指揮をスタートし2012年の今年で18年間を一人の指揮者が長期にわたって指導することほど素晴らしいものはない。総合芸術たるオペラ、そして合唱、オーケストラと言う鳥取県の音楽文化の中核を担う指揮者としての松岡究氏は、鳥取県にとってかけがえのない宝物といっても過言ではない。今年のアザレアのまち音楽祭オープニング・コンサートでは、日本では例のない小型編成の第九を試みるが、ベートーヴェンの真髄が聴けるものと期待されている。


ソリスト・プロフィール

松田 千絵

(まつだ ちえ)Soprano
 島根大学教育学部特音課程声楽専攻卒業。白石由美子、中澤 桂、平野弘子の各氏に師事。これまでに鳥取オペラ協会公演「フィガロの結婚」「魔笛」「ポラーノの広場」「ドン・ジョヴァンニ」「アマールと夜の訪問者」「コシ・ファン・トゥッテ」に出演。ヘンデル「メサイア」(抜粋)、J.ラター「レクイエム」、ベートーヴェン「第九」のソリストもつとめる。そのほかアザレアのまち音楽祭でのコンサートや、また移動わらべ館童謡唱歌推進員として県内各地で童謡コンサートを行っている。鳥取県声楽オーディション審査員特別奨励賞、第16回日本声楽コンクール入選。現在、オペラ協会会員、移動わらべ館童謡唱歌推進員、西部演奏家クラブ会員。

鶴崎千晴

(つるさき ちはる)Alto
 武蔵野音楽大学声楽科卒業。声楽を森原紀美子,故藤田みどり,佐伯真弥子,平野弘子の各氏に師事。ジョイント・コンサート,ソロリサイタルほか,鳥取オペラ協会公演「フィガロの結婚」(伯爵夫人・マルチェリーナ)、「アマールと夜の訪問者」(母親),ラクゴペラ「ドン・ジョヴァンニ」(ドンナ・エルヴィラ)、イソップオペラ(よいきこり)、新作オペラ「窓」(母親)に出演。山陰の名手たちコンサート出演。アザレアのまち音楽祭参加。県民による第九2010、2012年米子第九合唱団ニューイヤーコンサートにてヴィヴァルディ作曲グローリアでアルトソロ。コールやまびこ指導者。鳥取オペラ協会理事。

小谷弘幸

(こだに ひろゆき)Tenor
 国立音楽大学・声楽科卒業。声楽を常松喜恵子、高橋大海、田口興輔、アレン・ビアール各氏に師事。オペラでは、これまでに「椿姫」のガストン、「リゴレット」のボルサなどの役を務めたほか、声楽ソロ、宗教曲の合唱等、多くの演奏経験を積み、幅広い分野で活躍中。今現在、倉吉東高校に勤務。二期会準会員。シュトラーレンメンバー。(

西岡千秋

(にしおか ちあき)Bass
 武蔵野音楽大学声楽科卒業。同大学院声楽専攻修了。市田キヨ子、疋田生治郎の各氏に師事。数々のオペラ出演の他、リサイタルをはじめとする演奏活動を行っている。また、鳥取県内においては第九公演のソリストを務め、アザレアのまち音楽祭や山陰の名手たちコンサートなど常連演奏家として活躍。鳥取県内公演のオペラでは「電話」「コシ・ファン・トゥッテ」「フィガロの結婚」「魔笛」「ポラーノの広場」「ドン・ジョヴァンニ」「アマールと夜の訪問者」等に出演。鳥取オペラ協会の全ての公演をプロデュースしている。2009年鳥取県教育委員会表彰、2011年鳥取文化賞を受賞。現在、鳥取大学地域学部附属芸術文化センター教授。鳥取オペラ協会副会長。鳥取合唱連盟副理事長。


コーラス
Soprano足森愛梨・井田裕子・小倉知子・小椋美香子・佐々木真由美
・白石由美子・寺内智子・野津美和子・長谷川 愛・松田千絵
Alto尾前加寿子・銭亀睦美・鶴崎千晴・西岡恵子・西本江里
・森田麗子・米澤 幸
Tenor内海康平・大谷匡之・加藤耕一・北村保史・小谷弘幸・松本厚志 ・丸山達夫
Bass魚住保幸・門脇慧・富樫全希・西岡千秋・山田康之・吉田章一


オーケストラ・プロフィール

アザレア室内オーケストラ

 泊村在住の医師「吉田明雄氏」が主宰するプロ・アマ混成の極めてハイレベルな室内オーケストラである。設立当時から指揮を担当するプロの指揮者「松岡究氏」の薫陶を求め、各地のオーケストラから参集したメンバーによって編成されている。よりレベルの高い音楽の追究をしたいと、音楽家としての自立を求めるアマチュア奏者にプロ奏者がゲスト参加して、素晴らしい音楽を紡ぎ出す限りなくプロに近い演奏集団である。


アザレア室内オーケストラ・メンバー
1st,Vn : 吉田明雄、曽田千鶴、野村知則、井上志保、荒井ゆうき、高田明日香/
2nd,Vn : 永江佳代、益尾恵美、藤原才知、小林圭子、水島衣代、宇賀田圭/
Va : 松永佳子、長田直樹、小西恵里、北山三枝子/
Vc : 原田友一郎、須々木竜紀、中野俊也、、井上拓也/
DB : 生田祥子、渡辺琢也、大津敬一/
Fl : 稲田真司、古瀬由美子/
Ob : 古川雅彦、易 日向子/
Cl : 杉山清香、山田祐司/
Fg : 木村恵理、橋本美紀子/
Cfg : 白瀬愛美/
Hr : 小椋智恵子、山根和成、田中智子、老松尚子/
Tp : 山崎啓史、玉崎勝守/
Tb : 隅田 誠、楠見公義、松本弘一/
Timp : 照沼 滋/
Perc : 福井蘭、瀧 禎子、他/




ご案内

 アザレア室内オーケストラは今年で22回目の登場となります。そして、名誉ある第一回のアザレア音楽賞を受賞されます。授賞理由に事欠かない大きな実績を持ち、地域に根差したと言うか、地域の宝物というべき貴重なオーケストラなのです。
 このオーケストラは本来「ミンクス室内オーケストラ」として米子市を中心にして活動していました。当時、米子医大の勤務医だった「吉田明雄氏」が、アマチュアであっても優れた演奏を可能にしたいとオーケストラ仲間に呼びかけ、自身が主宰するオーケストラを作ったのが始まりのようです。「ミンクス」と言う名称は、当時のメンバーが自分の童話に登場する主人公の名前から取り、つけたそうで、特に意味はないとのことでした。設立当時の演奏を聴かせていただいたのですが、意気込みがとても強く感じられるオーケストラでした。その後、松江市のプラバホールでの演奏会を聴いた時には、意気込みが消化され、意欲的な演奏になっていました。しかし、問題点もありました。曲目毎にコンサートマスターが交代するのです。その度にアーティキュレーションの不揃いが露呈し、音楽的なまとまりを欠いたように感じました。しかし、山陰で活動する当時のアマチュア・オーケストラの中では、群を抜いたレベルであり、私はすっかり惚れ込んでしまいました。そこで、オーケストラを主宰している「吉田氏」に、アザレアのまち音楽祭の祝祭オーケストラとしての出演を依頼したわけです。ただし、一つ条件を出しました。「コンサートマスターを固定すること」、「コンマスを吉田氏が務めること」の二点でした。吉田氏は、「ヴァイオリン・パートには自分より優れた方がいるのに…」と謙遜していましたが、強引に了解していただき、アザレアのまち音楽祭での出演が決定したのです。
 実は、アザレアのまち音楽祭設立当初から、オープニングには、メインになるオーケストラがぜひ必要だと、地元のオーケストラにラブコールを送り続けました。しかし、公演時期が合わないと断られ続けました。いつまで待ってもいられないと、プロの「東京アカデミー室内合奏団(倉吉市出身の加納佑春氏主宰)」を招聘したりしていました。そんな時に、泊村出身の医師「吉田氏」のミンクスに出会ったのです。
 アザレアのまち音楽祭に初登場した時は、「ミンクス室内オーケストラ」の名称でしたが、二回目より現在の「アザレア室内オーケストラ」とし、恒久的な祝祭オーケストラとしたわけです。毎年の公演が固定的に決定することとは、時間があれば、ゆとりがあればなどというアマチュアの甘えが通用しないことになります。毎年、五月の第二日曜日がアザレアのまち音楽祭のオープニング・コンサートなのですから。吉田氏によれば、継続が確約されたことで、オーケストラのミッションが明確になり、独自の活動が可能になったとのことです。その言葉通りに、ミンクス室内オーケストラとしての活動は素晴らしいものです。鳥取オペラ協会公演の専属オーケストラとして数々の公演に参加し、モーツァルトのオペラを、ほぼ満足させる仕上げが可能であり、また、新作オペラの「ポラーノの広場」では、福井県での国民文化祭に招聘されるなど、スタンダードなオーケストラだと高く評価されています。特筆に値するのが、米子第九合唱団との共演です。これまで県内では聴けなかったモーツァルトやヴィヴァルディ、バッハのバロックから、フォーレのレクイエムに至るまで、上質でレベルの高い演奏をものにしてきているのです。それらのバックボーンが堅牢であるからこそ、アザレアのまち音楽祭における「アザレア室内オーケストラ」の演奏が優れているのです。
 どうぞ、今後とも聴きつづけていただき、共に成長する人生を共有していただき、豊かな感性を携えた美しい音楽生活をお楽しみください。