倉吉 アザレアのまち音楽祭
杉山清香クラリネット・コンサート

Piano 中橋芳恵
2011年6月1日(水)19:30〜 倉吉交流プラザ 700円


第一部
@ソナタ ヘ短調 作品120−1(ブラームス作曲)
  第1楽章 Allegro appassionato
  第2楽章 Andante un poco Adagio
  第3楽章 Allegro grazioso
  第4楽章 Vivace
 この作品は1894年にブラームスによって作曲された。晩年、創作意欲の衰えていたブラームスは、一度は作曲活動を中断するが、1891年に出会った名クラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトとの出会いにより再び創作活動を始めた。クラリネット三重奏曲Op.114(1891年)、クラリネット五重奏曲Op.115(1894年)、そしてこのクラリネットソナタOp.120-1.2.を作曲した。このクラリネットソナタOp.120の2曲はその中でも最後に作曲された作品で、ブラームスによって完成された最後のソナタでもある。初演は1895年1月にウィーンでミュールフェルトとブラームス自身によって行われたが、それに先立って、クララ・シューマンの前で私的な演奏が行われている。ちなみに、この曲にはブラームスの作品1である「ピアノソナタ第1番」第2楽章の主題(C-F-E♭-D♭)が引用されている。(特に第1楽章冒頭)。このことは完成直後にクララ・シューマンに手紙で言及されており、「蛇が尾を噛んで、環は閉じられたのです」とブラームスが語っている。(なお、この主題はロベルト・シューマンからブラームスへと受け継がれたものであることがクラリネット奏者磯部周平の研究によって明らかにされた)

第二部
@アンダンティーノ 作品30−1(シュミット作曲)
 《サロメの悲劇》で有名なこのフランス近代の作曲家は1870年に生まれた。(1958年没)パリ音楽院でフォーレに学ぶ。ローマ大賞受賞。シュミットの名前から察せられるようにドイツ系のフランス人で、そのせいかその作品にはドイツ風の重厚さとフランス風の華麗さが融合した独特のロマンティシズムがうかがえる。この曲もこのような彼の作風をよくあらわした小品である。

A日本の名曲 〜懐かしい歌〜
  ・シャボン玉
  ・夕焼け小焼け
  ・七つの子
 誰もが幼い頃に耳にしたり、歌ったり・・・、したことのある歌をクラリネットで奏でます。

Bワルツ 作品64−2(ショパン作曲)
 ショパン晩年のピアノの作品です。シンプルな曲想ながら、曲の持つ精神的な色合いは深く、さりげない哀愁は、ジョルジュ・サンドとの別れや、病の辛さなどショパンの心境を感じさせます。

Cコンクールのソロ(ラボー作曲)
 アンリ・ラボー(1873-1949)は、フランスの作曲家で音楽教育者。チェロ教師の父と声楽家の母を持ち、自身もパリ音楽院に学ぶ。1894年ローマ大賞受賞。1920年にフォーレ勇退後のパリ音楽院院長に就任。サン=サーンスの流れを汲む保守的な作曲家で、「モダニズムは敵なり」というモットーを掲げていたことで知られる。この作品は1901年のパリ音楽院の試験曲。当時クラリネット科教授をしていたローズ(クラリネットの教則本でも有名)が委嘱した。レシタティーヴ風の序奏モデラート、甘美な旋律ラルゴをへて、軽快なアレグロが始まる。「試験曲」としての顔だけではない味わい深い作品である。


プロフィール

杉山清香

(すぎやま きよか)クラリネット
 米子東高等学校普通科を経て島根大学教育学部特音課程(管弦打楽器専攻)を卒業。クラリネットを手塚実、村瀬二郎、浜中浩一の各氏に師事。
 今までにミンクス室内オーケストラとクラリネット協奏曲、澤カルテットとクラリネット五重奏曲(いずれもモーツァルト作曲)で共演し好評を得る。2009年にはフィルハーモニックウィンズ大阪と共にアメリカ演奏旅行に参加しその後は同楽団定期公演などにたびたび出演しCD収録にも参加している。くらよしアザレアのまち音楽祭でのソロコンサート、「山陰の名手たちコンサート」、浜中浩一門下生による「音楽の愉しみコンサート」(大阪)、自身がライフワークにしている「音楽空間コンサート」は第30回を数えるなど県内外で演奏活動を行っている。
 現在、フィルハーモニックウィンズ大阪特別団員、ヤマハポピュラーミュージックスクール、NHK文化センター講師、杉山清香音楽教室主宰。山陰オカリナ合奏団及び米子クラリネット・シルキィ代表。米子市在住。

中橋芳恵

(なかばし よしえ)Piano
 国立音楽大学ピアノ教育専攻卒業。東京ミュージック&メディアアーツ尚美ディプロマ学科ピアノコース修了。ピアノを酒匂淳氏に、声楽を常松喜恵子氏に師事。
 現在、ピアノや合唱の指導や県内外での演奏活動を広く行っている。鳥取大学大学院地域学研究科地域創造専攻に在籍、新倉健氏のもとで作曲法を学んでいる。


ご案内

 アザレア室内オーケストラのトップ・クラリネット奏者として、私たちの耳にはすっかりお馴染みの方です。サロンコンサートには2007年初めて登場し、そのずば抜けた技量と音楽性の高さを見せ、聴衆をびっくりさせたものです。そして、2009年、2010年と続き、評価が安定し、今年の出演となりました。特にアンサンブル・ピアノとの共同作業となる演奏は、自分の力量と同等か、それ以上の方をパートナーに選ぶことが大切です。ずっとコンビを組んでいる中橋芳恵氏は、国立音大を出た後に、鳥取大学の大学院で作曲を学んでいるという大変な勉強家であり、近年その力量が高く評価され始めています。
 ところで今年の選曲には、クラリネットの定番ともいえるウェーバーが冒頭に用意されています。演奏の良し悪しは、作品の持っている様式感を、違えることなく表現し、なおかつ演奏家の個性をどのように示すかにかかっています。様式感とは、ウェーバーの音楽が持つ時代様式、ウェーバー自身の個人様式、演奏する楽器の材料様式、そしてその音楽を構成する楽曲様式を、明確に分析し、演奏計画を立て、最後に演奏家自身の個性でどう調理して聴衆に聴かせるかを、考えなければならないのです。シューマンの作品にも同じことが言えますが、杉山さんの演奏スタイルにはピッタリかもしれないと、期待しています。後半は、ただ聴いて楽しんでいただける選曲になっており、肩の力を抜いて、存分にお楽しみいただけます。しかし、演奏する側にとっては、このような曲にこそ息の抜けない厳しい音楽の力量が問われるものであり、杉山氏の優れた演奏力がいかんなく発揮されるものと期待しています。