倉吉 アザレアのまち音楽祭
光長真理恵ソプラノ・コンサート

Piano 面谷真理子
2011年5月13日(金)19:30〜 倉吉交流プラザ 700円


第一部
@ さようなら(秋山 邦晴作詞/武満 徹作曲)
混声合唱のための「うた」より。1984年編曲初演。開局間もない新日本放送(現毎日放送)のために作曲。恋の想いと、切なさが歌われている。

A 翼(武満 徹作詞・作曲)
混声合唱のための「うた」より。「翼 WINGS」1982年恩地日出夫作の演劇「ウィング」のために作曲。壮大で力強い歌詞で、自由へのあこがれを歌う。

B 島へ(井沢 満作詞/武満 徹作曲)
まだ見ぬ人とのめぐりあいを信じ、呼びかける歌。

C 三月のうた(谷川 俊太郎作詞/武満 徹作曲)
映画「最後の審判」の挿入歌。さまざまなことに整理決着をつけ、旅立とうとする決意の歌。

D 乙女の願い(ショパン作曲)
「ポーランドの歌(17の歌曲集)」の中の1曲。
もし叶うなら、影になって貴方の胸を訪れたい、小鳥となって貴方の部屋の窓辺で愛を歌いたいと訴える。

E くるみの木(モーゼン作詞/シューマン作曲)
歌曲集「ミルテの花」より。愛らしい花をつけた胡桃の木と、物思いにふける乙女を歌う。

F はすの花(ハイネ作詞/シューマン作曲)
歌曲集「ミルテの花」より。夜に花を咲かせるハスの花をロマンティックに歌い上げる。

G 献呈(リュッケルト作詞/シューマン作曲)
歌曲集「ミルテの花」より。1840年、後に妻となるクララとの結婚を夢見ながら作曲された。

H スタンド アローン (小山 薫堂作詞/ 久石 譲作曲)
NHKドラマ『坂の上の雲』の主題歌。穏やかなメロディの中に、凛として立つ人間の強さが感じられる作品。

第二部
@ パリのお嬢さん(あらかわ・ひろし作詞/ P. デュラン作曲)
フランス映画「水色の夜会服」の主題歌。パリの下町の快活な生活が見えるような歌。

A 桜んぼの実る頃(加藤 登紀子/A.ルナール作曲)
儚い恋を歌った歌で、失恋の悲しみを描いた作品。パリ・コミューンの崩壊後、1875年前後から、失恋の悲しみにパリ・コミューン弾圧の悲しみを寓意して、第三共和政に批判的なパリ市民がしきりに歌ったことから有名になった。

B パリ カナイユ(岩谷 時子作詞/ L.フォール作曲)
映画『パリ野郎』主題歌。軽快な音楽でパリの街を歌う。

C パダン パダン(薩摩 忠作詞/H. コンテ作曲)
「パダン パダン」とは心臓の鼓動のことで、エディット・ピアフ が口ずさんでいたのをコンテが聞き、それに詞をつけたというエピソードがある。

D 水に流して(薩摩 忠作詞/C. デュモン作曲)
過去の思い出を水に流し、あなたと新しく出直すのだという、女性の強い意志の表れを歌う。

E 私の心はヴァイオリン(岩谷 時子作詞/M. ラパルスリ作曲)
女流作曲家、ミアルカ・ラパルスリによって作曲され、45年に『聞かせてよ愛の言葉を』の大ヒットで有名なリシュエンヌ・ボワイエによって初めて歌われた。タイトルの通り、ヴァイオリンをうまく使った大人の雰囲気を持つ甘く切ない名曲。

F ラ・ボエーム(菅 美沙緒作詞/C. アズナブール)
若さにあふれ、未来を夢見ていた20歳のころを切なく歌い上げる。

G 愛の小径(J. アヌイ作詞/F. プーランク作曲)
別れた恋人と、昔一緒に歩いた小径の思い出を歌った歌。幸せだった時間を思い出しながら、嘆き苦しむ心情が歌われている。


プロフィール

光長真理恵

(みつなが まりえ) Soprano
同志社女子大学学芸学部音楽学科卒業。声楽を森山俊雄、今城淳行、内藤千津子の各氏に師事。京都音楽家クラブ新人演奏会、同大学頌啓会コンサート、鳥取県の音楽家たちコンサートに出演。アザレアのまち音楽祭、境港シンフォニーガーデン等には毎年出演し、日本歌曲、フランス歌曲、シャンソン等、幅広いレパートリーで好評を得ている。中浜コーラス、思ひ出を歌う会、福生西ドレミファサークルを指導。女声合唱団・沙羅に所属。西部演奏家クラブ会員。

面谷真理子

(おもたに まりこ)Piano
神戸女学院大学音楽学部(ピアノ専攻)卒業。大阪フィルのメンバーとモーツァルト・ピアノ協奏曲を共演。その他数回のジョイント・リサイタル、高垣純作品発表リサイタル等にて演奏。ザルツブルグ国際アカデミーに参加。境港市に在住し、後進の指導に当たっている。ピアノの会「クレス」代表。


ご案内

 メロディーは言葉のもつアクセントや発音によって生まれるものだと考えられていました。しかし、特に近年のポピュラー音楽の世界では、メロディーを先に作り、そのメロディーにそって歌詞が作られていたりします。ですから、それぞれの民族が持つ言語によって派生する個性的なメロディーは消えつつあり、国籍不明のメロディーのグローバル化が進んでいます。ですから、まるで英語のような日本語を歌う歌手や、言葉のフレーズを全く無視した意味の伝わりにくい歌唱の時代になりつつあるのでしようか。
 そんな時代に光長真理恵氏の選曲は、とても素晴らしいと感じています。確実に歌詞が初めにあり、言語の発声・発音からのみ生まれるメロディーたちを紡ぎ取ったロマン派の作曲家シューマンの歌曲。同じ方法論で日本語の新しい感性を見つけ出した武満徹の作品。それらは、歌い手の声の持つ力、訴えるメロディーをしなやかに駆使できる力量がなければ表現できない世界があります。そんな意味で光長氏の高い歌唱力が生かされ、自在に音楽づくりできる世界を、私たちに見せてくれるのです。特に武満の作品では、日本語がこんなに美しいのか、と思わせてしまう絶妙なニュアンスが聴く者を圧倒する凄さを持っています。また、後半では、シャンソンを歌ってくれますが、フランス語のメロディーの中に、中間音を持たない日本語の明晰な響きを乗せてしまうアーティキュレーションの巧さは秀逸です。シャンソンの持つ物語性を、フランス語のメロディーで語るという歌唱の難しさを、昔「石井良子」がクリアしたようにベルカント唱法を派生させることで表現している。これは、巷で歌うポピュラー歌手には、とうてい真似のできない世界かも知れません。今年もまた、光長真理恵氏の悦楽の時をお楽しみください。