倉吉 アザレアのまち音楽祭
第26回 倉吉 アザレアのまち音楽祭2008
ごあいさつ

平成20年4月

あたらしい出発の年との出会い

アザレアのまち音楽祭企画実行委員会 会長 金澤瑞子

 私は孤独というものを知らないまま、このとしになりました。肉親と遠く離れて独り、誰も知らない街で生きた記憶もありません。  戦争のさなかに生まれ、ひとりの主君のために生きよと教育され、その結果、大切な人を失うという哀しさはみたものの、本当に大切なのは、事は、誰にも言ってはいけないという、無口で無音を見つけました。  しかし、女であり、子を生むという余儀ない行為の中で、私はいつの間にか、お喋りでお節介な年寄りになっていました。流れの中の小石のように。  ひとは集団を求めなくても、その中で生きる定めがあると思いはじめています。複数であることは、この世の掟でもあること、存在する者は誰かに知られているのですから。  「アザレアのまち音楽祭」は4分の1世紀の節目を越えて、26年目です。けれども、私には第1回を新しく迎えるような気持ちです。  この緊張と不安と期待に満ちた日々が、わたしにはまだあったのだと、大いなる驚きと感謝の中で、今年も開幕までの準備を重ねて参りました。  26回のコンサートがいい日々でありますよう。どうぞ、多くの方々のお出ましをお待ち申し上げます。  尚、アザレアのまち音楽祭は、今年も多くのプレゼンター、そして沢山の協賛者の人達に支えられて開催の運びとなりました。この場をお借りして、あらためて心より厚く御礼申し上げます。






平成20年4月

志を持って遊べるか

アザレアのまち音楽祭 芸術監督 計羽孝之

 定年退職すると、何ものにも拘束されない時間や、制約されない思考、行動の自由が得られます。あれほど忠誠心を燃やして働いたことも、今は昔です。仕事と仕事の合間に余った時間が余暇だと思っていたものが、今では全ての時間が余暇であることに愕然とするのです。やがて趣味として何かを「嗜む」ことになります。ある程度こなしてくると「披露」したくなり、発表会に出たりします。しかし、「嗜む」程度では自己満足に終わり、本当の意味での「遊び」にはならないのです。ここで必要なのは、「志(こころざし)」なのです。心の中では、あわよくば、芸術を志したいと思いながらも、「芸術」という大仰な言葉に圧倒されて、「芸術なんて」と卑下してしまいます。しかし、私たちは、生きていく中で、押さえ切れない喜びや、訴えずにいられない悲しみを持っています。それが「表現」の欲求であり、「芸術」の原点なのです。
 人間には三つの本能があると言われます。その本能が満たされれば人生は豊になるのです。満たされなければ、欲求不満でわびしく貧しい人生になるのです。三つの本能とは「食欲、性欲、芸術欲」だと考えれば、生活の中で芸術欲を如何に満たすかが問題なのです。誰でもが簡単に得られる芸術欲を満たす方法は、鑑賞するという受身の創造性です。
 音楽を楽しむには、心の中に美しい音楽的空間を創りだす鑑賞能力が必要です。その能力の有無は、評価の固まった著名な演奏家と同じ空間に同席した事実で、満足感を得ようとします。アザレアのまち音楽祭が提供しているコンサートは、「美しい音楽的空間を創造する鑑賞能力」が高かまるよう仕組んでいます。一般的に考えると、音楽を聴いて「何が面白いのか」「何が凄いのか」が、サーカスを見、大道芸を見るようには、感じられないものです。音楽会を聴いて、どう楽しんでいいのか分からない、と言うのが本当の所でしょう。しかし、本質的に、サーカスもコンサートも、楽しむということは、同じなのです。サーカスを自分でやってみるには危険が予想されますが、芸術は安全です。「やってみる」ことが、その楽しみを知る道かも知れません。そのためには「嗜み」ではなく、芸術を本気で遊ぶ決心が大切なのです。 余暇を人生の中で「余った時間」ではなく、最も大切な「積極的な時間」とし、「芸術を遊ぶ時間」だと設定する事で、芸術は日常に根付くものだと考えます。芸術が日常に根付く事とは、多様な生き方を許容する社会を作ることであり、個人の尊厳を大切にする、新しい価値観を創る社会システムが誕生する事につながります。それこそがアザレアのまち音楽祭の美しいまち創りであり、芸術によるコミュニティの創造だと考えます。
 アザレアのまち音楽祭では、芸術の楽しさを、ワクワクしながら体験することを中心に据えています。音楽の美しさに共感し、楽しみ、結果的に娯楽であり、リラクジェーションになれば、そのミッションは達成されると考えています。





平成20年4月

アザレアのまち音楽祭は倉吉の誇るべき文化的財産!

倉吉市長 長谷川 稔

 今年で第26回を迎える「アザレアのまち音楽祭」が、盛大に開催されますことを心からお喜び申しあげます。 「アザレアのまち音楽祭」は、“音楽祭によるまちづくり”をその使命にかかげられ、市民自らが創りあげる音楽祭として、四半世紀を超える長きにわたり、まさに倉吉を代表する芸術文化の一大イベントとして定着してまいりました。 今日に至るまで、音楽祭の開催をとおして本市の音楽文化の振興に多大な貢献をされてきた関係者の皆様の、献身的なご尽力に対して改めて深く敬意を表する次第です。 私たちの日々の暮らしの中では、長い間、経済的・物質的な豊かさを追求することに汲々としてきたその一方で、心の豊かさや生活の質の向上が次第に問われるようになり、人々の文化に対する関心や期待が近年高まっております。 芸術文化は、私たちの生活にゆとりや安らぎをもたらし、人生を豊かにするだけでなく、それが身近な地域の中に根付くことにより、まちへの愛着心やまちそのものの魅力増大をもたらす重要な役割をも担っています。
 アザレアのまち音楽祭は、市民が主体となりながら、自分たちが生活する地域の中で、市民、事業者及び行政が“協働”していく取り組みとして全国的にも先進的なものであり、倉吉の誇るべき文化的財産であります。 「魅力ある文化資源を活用した文化の振興」を目指している本市にとって、「アザレアのまち音楽祭」が末永く開催されることは極めて有意義であり、今後ともそれを支えるための環境づくりに努めて参りたいと考えております。 「アザレアのまち音楽祭」が地域に密着した質の高い音楽祭として、より多くの市民の方々に愛され、ますます発展していくことを心より祈念して、お祝いのご挨拶といたします。